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インタビュー

若きパーカッショニスト、會田瑞樹に〈希望が持てそう〉な理由

小沼純一が迫る、古くて新しい音楽家の全貌

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自己表出はソロの中にある

――その後は音大(武蔵野音楽大学)に行き、打楽器をやって。オーケストラとかもやったのかなと。で、卒業すると大学院に進んで、ソリストになった。

「オケやってないんです。履修拒否というか(笑)、選択できたので。みんなから叩かれたんですけど(笑)。僕の中でソロをやりたいという思いは中高の土壌もあり醸造されていて、やるんだったら徹底的にやるしかないと思っていました。なのでオーケストラの履修もしないで、なるべくソロをやる自分の研究の時間にあてようと。

そんなとき、図書館でいろんなCDとかを聴いたり、聴きながら寝たりとかもしていたら、作曲家・八村義夫に出会いました。八村義夫ってまた(字面が)『八つ墓村』みたいな……って軽い気持ちで聴き始めたんですけど(笑)、曲の表出力の強さみたいなものにあこがれて一気に好きになったんです。こういう人がいるんだなー!と。八村義夫の『ラ・フォリア』(85年)って本も図書館で借りました。若い、10代から20代へ向かっていたときの僕にとって、神様のような感じでした。

本のなかで末吉保雄先生の名前が出てきて、この人知ってるわ、“マリンバのためのミラージュ”書いた人だ、とつながりました。その後、僕は末吉先生の曲に惹かれていくのですが、大学2年のとき、師事していた神谷百子先生から、そんなに好きなら会ってみればと言われて、連絡先を教えていただき、手紙を書きました。そうしたら演奏会にいらしてくださって。晩年の数年間、一緒に酒を呑んだり、曲を書いていただいたり、ご一緒できたのは僕にとっての財産だし、とても良い思い出です。

『ラ・フォリア』には水野修孝先生の名前も出てきました。ジャズ・オーケストラの曲がベタ褒めされていましたね。水野先生も、その後出会うことになり、ヴィブラフォンの新作などでご一緒させていただきました。そのような感じで、ある意味、八村さんの本が教えてくれなかったらいまはないだろうというくらい、『ラ・フォリア』には本当に重要なことばかり書かれていました。なんというか、世界は細かいところでつながっているんだなと実感したり、それがある種音楽を形作っているのかな、と考えたりしましたね」

會田が八村義夫作曲の“Ahania for solo marimba”を演奏する2017年の映像
 

――そうしてソリストに。

「自己表出はソロの中にあるというのは中高の頃からある程度固まってきていて、大学に入って(吉原)すみれ先生という、こうなりたいと思う人が身近にいた6年間だったので、その背中を追っていくしかないという気持ちでした。それはいまも変わりませんが」

 

ヴィブラフォンはヴァイオリンやピアノに勝てるんじゃないか?

――大学では、同時に高橋美智子さんにも師事されています。

「美智子先生との出会いも大きかったですね。日本の打楽器演奏家の歴史は有賀誠門・高橋美智子・安倍圭子から始まる。その前ってなると、小森宗太郎とか軍人さんとかで。第一世代が有賀先生、美智子先生。この人たちが活躍したことで吉原先生ら次の第二世代の方がいます。

美智子先生は、初めレッスンは持ってらっしゃらなかった。でも、僕が隣の部屋で練習しているうちに、(會田のことを)覚えてくれるようになりました。試験のときも応援してくれ、大学4年のときに授業でご一緒するようになって、美智子先生のいわゆる音楽活動のことを様々に勉強できたんです。けっこう赤裸々に、どうやって委嘱したかとか委嘱料はいくらかとか(笑)、具体的な額も教えてくださったり。先生の活動ってすごく開かれていて、オランダに行くためにはKLMとうまく提携してねとか(笑)。先生はKLMの雑誌にも文章載せていたりとかしていて、こうやって社会と密接に関係しながら音楽活動するんだなって、教えてくださりました。そうして美智子先生のヴィブラフォンを継承することにもつながっていったんです」

――ヴィブラフォン、出てきました(笑)。會田さんは愛着がありますよね、この楽器に。それは音色的な問題とか、あるいは鍵盤打楽器、金属打楽器というものに対しての関心、とみていたんですけれど、どうですか?

「この楽器、いちばんの魅力って余韻がコントロールできるところじゃないでしょうか。マリンバとかはブンって鳴らしたら後は音が飛んでいったままになりますが、ヴィブラフォンは音を出してからもまだ意識を向けることができる。その点ではすごく可能性があるし、僕自身、シンバルとかゴングとか、金属の余韻というものが好きなんです。さっきの話ともつながるかもしれないんですけど、ヴィブラフォンはヴァイオリンやピアノに勝てるんじゃないか、対抗できるんじゃないかと思ってます。ピアノのようなペダルがあり、音域もヴァイオリンとほとんど同じで。いちばん自分のやりたいことが表出できるんじゃないかなとも思ってます」

今回の公演〈B→C〉に向けて、會田が実際に音を鳴らしながらヴィブラフォンの魅力を紹介する映像
 

――いまひとつ、現代作品では、ヴィブラフォンを効果としては使うけど、単独として取り上げた作品は少ないですよね。

「なので、いろんな方に曲を書いていただこうって、おのずとなっていった気がします。レパートリーが少なくては、いいも悪いもない。玉石混交であっても、とにかく初演してレパートリーとして定着すればいい。そんなこんなで200作品を、いろんな編成のものを含めてですが、演奏しています」

――委嘱って、何が出てくるかわからないですよね。

「そうなんです。でもそこは本当、コミュニケーションだなって。作曲家という人と語り合ったり、楽譜を見て自分の中で浮かんだ疑問点をぶつけ合ったりして、それを加筆修正したり。それらをクリアしていくことは僕にとっても勉強というか、より自分の持つ〈あこがれ〉に近づけるんじゃないかな、という気がします」

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