マイアミ・ソウルの殿堂から世に出たファンキーでメロウでダンサブルな名品たちがまたしても大挙リイシュー! 全部聴かなきゃ桜も咲かないよ!
眩しいばかりの陽光が差し込み、椰子の木が南風に揺れる――そんな書割りのイメージをそのままサウンドにして世界を席巻したのが、フロリダはマイアミを拠点にさまざまなアーティストを送り出したレーベル/プロダクション/ディストリビューターのTKである。とりわけ70年代には世界に向けて〈マイアミ・サウンド〉を発信し、ディスコ・シーンの隆盛にも大きく貢献した一大ブランドであったことは、本連載の第93回と96回でも膨大なリイシュー作品と共にヒストリーを紹介してきた通りだ。
下に掲載のジョージ・マクレー『Diamond Touch』のディスクガイドにもあるように、アル・ケントのディスコ・エディット集に“Givin’ Back The Feeling”が収まっていたり、あるいは別掲のライナー・トゥルービーによるコンピ『Soulgliding』にピーター・ブラウン“Without Love”がチョイスされていたり、もはやTKサウンドに出会わずに日々を送ることすら難しい……というのは大袈裟だが、カヴァーやサンプリング需要の多さも含めてその広がりは現代の音楽シーンにもナチュラルに入り込んでいると言っていいだろう。
とはいえ、彼らの生み出したサウンドはもちろん常夏のグルーヴや海沿いのメロウ・チューンばかりではない。ソウル、ファンク、ディスコ、AOR、フュージョンなどそのカテゴリーや評価軸もさまざまで、〈マイアミ・サウンド〉の一言では括れないほど多岐に渡る作品がTKの豊潤なカタログには数多く残されている。そんな膨大な宝石たちを足掛け5年で日本盤として送り出してきたのが〈The Miami Sound: Original Soul/Funk/Disco Collection〉だが、その定期的なサイクルもこの2月のタイトルで一区切り。そこで今回は最新タイミングでリイシューされた9タイトルとコンピレーションに加え、第96回で取り上げて以降の数年間にリイシューされていた作品も含めて40作ほどを一気に紹介しておこう。
2月のリイシュー分では、イーライズ・セカンド・カミング『Eli's Second Coming』(77年)やファイアの『Fire』(78年)、ファンテイジア・フィーチャリング・ペギー・サンティグリアの『Sweet, Sweet City Rhythm』(78年)、ジョー・テックス『He Who Is Without Funk Cast The First Stone』(78年)という4タイトルが世界初CD化を実現。他にもジェイムズ・ブラウンの『Soul Syndrome』(80年)やチーズの『Cheese』(78年)などの人気作がラインナップされていて、いずれもソウル/ファンク/ディスコ・ファンなら(ずとも)聴き逃せない内容のはず。もちろんそれ以外にはベティ・ライトやリトル・ビーヴァーら主要アクトの定番作も多くあるわけで、その輝きもまた不変だ。既存のレアリティー基準に左右されることなくさまざまな作品に親しんでいただきたい。 *bounce編集部
関連盤を紹介。
左から、アル・ケントの選曲/エディットによるディスコ・コンピ『Disco Demands Part Six』(BBE)、Ryuhei The Man選曲のコンピ『The Message From T.K. ~It's A Miami Modern Soul World~』、定番シリーズのコンピ『FREE SOUL T.K.』(共にSolid、フォクシーの76年作『Foxy』(Dash/Solid)、ピーター・ブラウンの79年作『Stargazer』(Drive/Solid)、サーティーンス・フロアの77年作『Steppin' Out』、スヌーピー・ディーンの77年作『Wiggle That Thing』(共にBlue Candle/Solid)、ビル・パーセル&ザ・ナッシュヴィル・スウェット・バンド&アイデスの76年作『The Sweat Sound』(Alston/Solid)、スパッツの78年作『Spats』(Good Sounds/Solid)

アトコ発の処女作(68年)に続き、マイアミの歌姫が10代後半に出したアルストン第1弾。リトル・ビーヴァーのギター・リフも軽快なファンキー・ソウル“Clean Up Woman”が定番ネタとして持て囃されるアルバムで、ミディアム・バラードの表題曲を筆頭に成熟した歌を聴かせる。クラレンス・リードとウィリー・クラークがマイアミ・ソウルの作法を確立した作品としても重要だ。 *林

10代からセッションに参加していたギタリスト兼シンガー(本名ウィリー・ヘイル)。ロケッティアーズとの活動などを経て放った初アルバムは、ベティ・ライトが参加した表題曲をはじめ、ブルージーなギターとやるせなくディープなヴォーカルで情熱を込めていくブルーズン・ソウルな内容だ。ボビー・ブランド“Two Steps From The Blues”のカヴァーからも狙いは明らか。 *林

クラーク&リードのコンビにスティーヴ・アレイモを加えて制作された3作目。ウーマンリブ運動の賛歌となったヘレン・レディ“I Am Woman”のカヴァーで幕を開けるように女性のプライドを謳ったアルバムで、男女関係に鋭く斬り込んだグルーヴィーなファンク“The Babysitter ”など、マイアミらしい乾いたサウンドでディープに迫る。アル・クーパー作&演奏のバラードも収録。 *林

マイアミ・ソウルの立役者であるクラレンス・リードが覆面姿で別人格を装ったブロウフライとしての2作目。X指定な放送禁止用語を散りばめたファンキーな漫談アルバムで、表題通りにラップを聴かせるメロウな“Rap Dirty”などはマイアミの後輩にあたるルーク(2ライヴ・クルー)の先駆けとでも言うべきもの。猥雑な内容は賛否両論だが、黒人芸能の真髄を極めた意欲作だ。 *林

相棒のウィリー・クラークやスティーヴ・アレイモをプロデューサーに迎えたアルストンでの2作目。ニュー・ソウル以降のモダンさを備えたサザン・ソウル作品で、後にルー・カートンらが取り上げる“New York City”などをディープな嗄れ声で歌ってみせる。ファンキーな“Living Together Is Keeping Us Apart”はドラム・ブレイクの定番。ブロウフライのクリーン版とも言える。 *林

グウェン・マクレーを妻にしていたフロリダ出身のシンガー。ディスコ・ブームに乗じて大ヒットしたリズムボックス使いのパーカッシヴな表題曲で知られる本デビュー作は、KC&ザ・サンシャイン・バンドのふたりが手掛けた開放的なサウンドでTKのイメージを決定づけた。ジョージの情熱的な歌声も際立つ。“I Get Lifted”は定番ネタのファンクで、後にケムらもカヴァー。 *林

夫ジョージ・マクレーとのデュオ盤を経て、本作でソロとしてアルバム・デビュー。スティーヴ・アレイモの制作で、当時のTKオールスターズとでも言うべき面々の演奏をバックにディープでタフなヴォーカルを聴かせるグウェンは、JBファミリーの女性たちに通じる迫力がある。緊張感とレイドバック感を両立させたファンクなバラード“90%Of Me Is You”はネタとしても有名。 *林

LATIMORE Let's Straighten It Out - More, More, More, Latimore Glades/Solid(1974)
もともとスティーヴ・アレイモのバックでピアノを弾き、60年代半ばにTK系列のデイドからデビューしていたテネシー男の、グレイズでの2枚目のアルバム。制作はアレイモでリトル・ビーヴァーらが演奏を固め、R&Bチャート首位に輝いた“Let's Straighten It Out”のほか、やるせない“Put Pride Aside”、ボビー・ブランドのカヴァーなどブルージーな歌い口が苦味と渋みを残す。 *出嶌

TK一派のギタリストとして幾多のセッションに参加していた最中に出したアルバム。間奏のギターとスキャトのユニゾンがジョージ・ベンソン風でもあるレイジーな表題曲がヒットしたビーヴァーの代表作で、同路線の“Get Into The Party Life”や“I Can Dig It Baby”など、マイアミの夕暮れを思わせるようなムードがたまらない。ヘタウマなヴォーカルもメロウさに拍車をかける。 *林

同年リリースとなる歌モノ中心の『Party Down』に対して、こちらは全編インスト。敬愛するウェス・モンゴメリーに捧げた冒頭曲をはじめ、ジャジーなオクターヴ奏法を披露しながらファンキーなギターを聴かせるアルバムで、後半ではガーシュイン、テンプテーションズ、ジャクソン5、アル・グリーンの名曲も奏でてみせる。ヴォーカルはなくても、ギターが実によく歌っている。 *林

本格的にソングライティングに取り組み、大半をウィリー・クラークと共作した通算5作目。実兄ミルトン・ライトを含めTK仲間が顔を揃えるが、サウンドや作風はマイアミらしい南国感やディープネスを残しながらも、“Keep Feelin'”のようにモダンで洗練された曲が増えた。ダレル・バンクスのノーザン・クラシック“Open The Door To Your Heart”のダンサブルなリメイクも快演。 *林

妻グウェンとの離婚もあってか、マイアミを離れてNYで録音したソロ3作目。表題が仄めかすように名匠グレッグ・ダイアモンドの制作で、“Rock Your Baby”のイメージをキープしながらNYディスコ・マナーの華麗なサウンドと一体になって歌っていく。ファンクな“Givin' Back The Feeling”もNY色に染まった一曲で、先日アル・ケントのエディット版もリリースされたばかり。 *林

音が整理されてシャープになった4作目。ミルトン・ライト作の“Listen To My Heartbeat”などディスコに傾倒する当時のTKらしい曲もあるが、やるせない歌声とブルージーでメロウなビーヴァー節に変わりはない。ギター・インストの“We Three ”もクール。ラルフ・マクドナルド&ウィリアム・サルター作のスロウ“When Was The Last Time”にて交える美しい裏声も酔わせる。 *林

原盤LPがTK屈指のレア度を誇った自作自演ファンク・バンドの初アルバム。チョコレートクレイの片割れとして知られるジョージ“チョコレート”ペリーの制作で、ホーンやクラヴィネット、シンセ、ギターなどが有機的に絡み合う無骨かつポップな楽曲は、ファンキーなインストも含めてウォーやタワー・オブ・パワーなどのマイアミ版といった趣。まさにレア・グルーヴな作品集だ。 *林

THE BILLION DOLLAR BAND The Billion Dollar Band Good Sounds/Solid(1977)
リード・シンガーのヴァーノン・マドックスを中心にトランペッターとトロンボーン奏者も名を連ねたクライテリア・スタジオ産5人組バンドの唯一のアルバム。冒頭の“Get In The Groove”などキレのあるファンクの機能性も備えつつ、スマートな“Love's Sweet Notions”などファルセットとバリトンの絡みが醸すヴォーカル・グループ然とした甘美な魅力も味わいどころとなる充実作。 *出嶌

名門クライテリア・スタジオが運営するグッド・サウンズから登場した白人5人組バンド、唯一のアルバム。クライテリアのスタッフが制作にあたり、青臭いAOR声で歌われる楽曲はウエストコースト・ロックに通じる開放感やファンキーさがあるが、70年代後期のTKらしいモダンでメロウなミディアムも光る。バック・ヴォーカルにはリード・インクやスパッツのメンバーが参加。 *林

MFSBのギタリストだったボビー・イーライのプロジェクト。その名の由来となるローラ・ニーロ“Eli's Coming”のカヴァーで始まる本作は、第2期MFSBの面々を従えたフィリー・ディスコ作品で、“Love Chant”などのダンス曲が並ぶ。スウィートハーツ・オブ・シグマの女声コーラスも活躍し、イーライがメイジャー・ハリスに提供した“Love Won't Let Me Wait”のカヴァーも収録。 *林

ドラマーでヴォーカリストのエリック“ファット”ギャロン率いるファンク・バンド唯一のアルバム。全曲がプロデューサーのウィリー・クラークとの共作で、Pファンクを咀嚼したサイケで骨太なファンクを中心に聴かせる。ソウルフルなギャロンの歌が映える冒頭の “How Can I Explain”は、いまならディアンジェロと喩えたくなるジャジーなスロウで、これがいちばんTKらしい。 *林

その名が示す通りクラレンス・リードの子飼いグループだった女性4人組。リードがチョコレートクレイのクレイ・クロッパーと共同で制作し、アレサ・フランクリン版を意識した“Respect”を筆頭に、ヘヴィー・ファンク、ディスコ、バラードなどを聴かせる。ハニー・コーンを思わせる陽性のダンサー“What Am I Gonna Do”、リードが歌っていた“New York City”のカヴァーが人気だ。 *林

ROCKY MIZELL AND THE SUGAR ROCK BAND Rocky Mizell And The Sugar Rock Band Drive/Solid(1977)
後にソロ名義で“Let's Go Dancing”(80年)も残すロッキー・ミゼルの唯一のアルバム。ジャケの印象よりは薄めの歌声と軽く明るいサウンドで盛り上げる。マイルドな中毒性のある前年のシングル“Hey Sexy Dancer”と優雅なグルーヴに乗った“Never Never Girl”の2曲はいずれも翌年ジョージ・マクレーが歌っていて、制作を担ったウイリー・クラークにとっても自信作だったのかも。 *出嶌

コークリー兄弟を中心とした、バハマはナッソー出身の4人組ファンク・バンド。マイアミに移住して契約したTK(ダッシュ)からのデビュー・アルバムは、クライテリア・スタジオの関係者などがバックアップ。ガラージ・クラシックとしても有名な“Do What Ya Wanna Do”を筆頭に、“Disco Magic”のようなインストも含めて開放感のあるディスコ・ファンクが飛び出す快演作だ。 *林

ダッシュからの2作目。大半をメンバーのセオフィラス・コークリーが書き、ヒットした表題曲など、よりディスコを意識したパーカッシヴでギラついたダンス・チューンが中心となるが、一方で“Prisoner Of My Mind”のようなスケールの大きいバラードを歌うなど、クイーンぽさも漂う振り幅の大きいアルバムとなった。 “Groove To Get Down”はブレイクビーツとしても有名。 *林

後にマイアミ・サウンド・マシーンのバックで歌い、ソロでもヒットを飛ばすフロリダの歌姫ドナ・アレンをリードに据えた9人組ファンク・バンド。これは名匠サックス・カリが制作した彼ら唯一のアルバムで、骨太にしてスペイシーな音を放つ“Gimme Some Lovin'”を筆頭に、チャカ・カーンにも通じるドナの溌剌とした歌が冴え渡る。ビー・ジーズやベティ・ライトの曲もカヴァー。 *林

ゲイリー・クリスのサルソウル名盤に関わったビリー・テレルがジョン・デイヴィス人脈を巻き込んで立ち上げたディスコ・プロジェクト。MFSBの演奏によるフィリー録音のアルバムで、ゴージャスでドリーミーなディスコ・ダンサーを元エンジェルズのペギー・サンティグリアが歌っていく。テーマ曲とも言うべき“Fantasia”とサンバ調のトロピカルな“Carnival”のメドレーが最高だ。 *林

KC&ザ・サンシャイン・バンドの女声コーラス隊だったビヴァリー・チャンピオンとジーネット・ウィリアムス、後にソロでも活躍するマーガレット・レイノルズが参加したユニット。制作は親分ふたりで、彼らの曲もカヴァーしたファンキーで軽快な内容は、まさにKC~の女声ヴォーカル版といった印象。レイ・チャールズで知られる“Hit The Road Jack”のカヴァーもゴキゲンだ。 *林

TKでの最終作。KC&ザ・サンシャイン・バンドのケイシー&フィンチとの再会作で、サンバ調の“(You've Got)My Love My Life My Soul”からマイアミ録音らしい楽天的なディスコ・ファンクで突っ走る。張り切ったテナー・ヴォイスは相変わらずで、アーバンなバラード“I Want You Around Me”での繊細なヴォーカルも味わい深い。表題曲などでは元奥方のグウェンも制作で参加。 *林

ヴィレッジ・ピープルなどジャック・モラリ主導アクトのバックを固める面々が集まったバンドによる唯一のアルバム。ここでもモラリが猥雑と洗練の入り交じったディスコを仕掛け、後にサルソウルで活躍するラリー・デイヴィスら敏腕プレイヤーたちが叩き出すグルーヴも強靭そのもの。雄々しいファンクの“Boogie Woogie Woman”から清涼なAOR系まで佳曲の揃った好盤だ。 *出嶌

マルチ・ミュージシャンのジミー・キャスターとファットバック・バンドにも在籍したジェリー・トーマスらが組み、“It's Just Begun”(72年)などネタの宝庫としても知られるファンク・バンドが、TK傘下のドライヴに1枚だけ残したアルバム。彼らのキャリアにおいて重要視されている作品ではないものの、“Future Place”や表題曲など時代性も弁えたタイトなディスコ・ファンク群が楽しい。 *出嶌

“I Gotcha”(72年)などのヒットで知られるソウル・スターが、長らく在籍したバディ・キレン主宰のダイアルがTKの配給になったタイミングで出したアルバム。制作は相棒のキレンで、ナッシュヴィル録音らしいサザン・マナーを感じさせながら、“Loose Caboose”を筆頭に賑やかなディスコ・ファンクをスペイシーな音も浴びながらゴリゴリと歌い倒す。まさにファンク怪人。 *林

テリー・ハフ中心の体制でメインストリームに名盤『The Lonely One』(76年)を残したワシントンDC発のグループが、ハフ離脱後に女性シンガーのヴェロニカを加えて発表したTK傘下で唯一のアルバム。超スウィートな“Oh Let Me Know”やドリーミーなダンサー“This Kind Of Love”などのソフトな佳曲からファンクまでメンバーのジョージ・パーカーが制作手腕を発揮した名盤だ。 *出嶌

THE STONY ISLAND BAND Stony Island Glades/Solid(2017)
シカゴを舞台にした映画「Stony Island」のサントラとして、劇中に登場した架空のジャズ・バンドの名義でリリースされた異色の一枚。デヴィッド・サンボーンやハイラム・ブロック、ジョージ・ヤング、アンディ・ニューマーク、パトリース・ラッシェンら豪華な顔ぶれが実際の演奏を担当しており、小気味良い表題曲や劇画的な“Gangster City”など痛快なフュージョン作品として楽しめる。 *出嶌

制作陣を一新し、ベティ・ライトをプロデューサーに迎えたTK歌姫同士の初コラボ作。キャットでの最終作で、冒頭のファンキー・ディスコこそ79年産らしい華やかさで迫るが、以降はシャープながらレイドバックしたサザン・マナーのミディアムやバラードが中心で、グウェンは情熱を込めつつ抑制を効かせて歌う。ラストの表題曲はストリングスが宙を舞う幸福感に満ちたダンサーだ。 *林

後にジャズ歌手として活動するコネティカット出身の白人女性シンガーの、ディスコ爛熟期のエレガンスに溢れた処女作。ジミー・バージェスがリミックスした表題曲を筆頭に、ソフトな歌い口とストリングスの煌めきを纏った上品なアーバン感覚が快く流れていく。シック風からウェットなバラード、トライバルなブギーまで、ほぼ全曲を彼女が自作&アレンジを担当しているのもポイント。 *出嶌

マーヴィン・ゲイ『I Want You』を手掛け、モータウンから自身のソロ作も出したメロウな男がTK傘下に移り、前作とほぼ同じ西海岸の名手たちと録音した3作目。センシュアルなメロディーと歌が昂揚感溢れる華麗なサウンドと共に鳴り響く快作で、ミニー・リパートンに提供した曲の自演版やマルコス・ヴァーリ作の曲も含む。メリッサ・マンチェスターとの“Club Sashay”もクール。 *林

タイロン・ブランソンの在籍でも知られるワシントンDCのファンク・バンドがTK傘下から放ったデビュー作。ホーニー・ホーンズやドラマーのジェローム・ブレイリーといったPファンク勢を迎えてヘヴィーかつダンサブルなファンクを聴かせる力作で、バンドを率いるオサイリス・マーシュの歌も骨太で力強い。洒脱なミディアム“Love In Your Heart”にTKらしさを感じる。 *林

かつてシャーデーが取り上げ、近年はドレイク“Hotline Bling”のリズム転用で再脚光を浴びた“Why Can't We Live Together”で知られるティミー・トーマス。そんな代表曲を最初とラストに披露した本作は、結果的にTKで最後のアルバムとなったライヴ盤。南アフリカはヨハネスブルグ公演の模様を収め、初期から当時の最新作『Touch To Touch』までの楽曲を熱演している。 *出嶌

TKディスコ発の12インチ第1弾“At The Top Of The Stairs”(76年)を残していた女性トリオが、クラレンス・リード制作で仕上げた唯一のアルバム。フィリー調の壮麗な“You Danced Your Way Into My Life”や、フォクシーっぽい軽薄な“Oops - Oops Means I Love You”、リード・インクのリメイクといったディスコを中心に、スロウもしっかり聴かせて実力派ぶりを窺わせる佳作だ。 *出嶌

ソウルの帝王がTKで発表した唯一のアルバム。自身の名曲“The Payback”をラップ調にリメイクした14分超えの“Rap Payback(Where Is Moses)”をはじめ、TKのカラーにも通じるディスコ・ファンクをシャウトしながらエネルギッシュに歌っている。スペイシーな音が飛び交うミディアム・ディスコ“Stay With Me”もヒットした。ビル・ドゲットの“Honky Tonk”を本作でも熱演。 *林

もはや存在的にもリトルではなくなったビーヴァーが本名ウィリー・ヘイルを用いて発表したキャットでの最終作。ギターよりもシンガーとしての側面を打ち出し、女声コーラスを従えて持ち前のハイ・ヴォイスで歌っていくアーバンなソウル・アルバムだ。AORな“I Feel Like Crying”はボビー・コールドウェルの制作だが、そのムードは“Groove On”などアルバム全体に波及している。 *林

60年代末からTK系列の諸レーベルにシングルを残し、“Our Day Is Here”(74年)などが後年もソウル好きの間で支持されてきたJP・ロビンソン。リアルタイムでアルバムは出なかったものの、多くのシングル曲はこれまでも数種の編集盤で親しまれており、鈴木啓志のコンパイルした本作ではそもそもゴスペル~サザン・ソウルの土壌で育まれたノドのディープな持ち味がじっくり堪能できる。 *出嶌
コンピレーションで知るTKの沼
さまざまな音楽を扱ったTKの間口の広さと奥深さを個々の作品だけで量り知ることはできない……ってことで、例えば別掲のRyuhei The Man選曲による『The Message From T.K. ~It's A Miami Modern Soul World~』がレア・グルーヴ視点から編まれた一枚であるように、さまざまな編集盤をチェックすれば、各々の主旨がそのままレーベルの多様な断面図を明らかにすることになる。
で、今回も2タイトルが登場。まず、金澤寿和が推進する〈LIGHT MELLOW〉シリーズの『LIGHT MELLOW T.K.』は、ジャズ~フュージョンも交えつつブリージンなリゾート目線で編まれた極上ライト・メロウな一枚。もう一枚はソウル評論家の鈴木啓志による『We DIG! GROOVIN' -T.K. 7INCH COLLECTION-』で、こちらはマイアミ・ソウルのグルーヴィーな真髄を数々の7インチ音源から選りすぐったものだ。両極端(?)ながらどちらもTK、どちらも最高である。 *出嶌孝次
このたびリリースされたTKの編集盤。
左から、『LIGHT MELLOW T.K.』『We DIG! GROOVIN' -T.K. 7INCH COLLECTION-』(すべてSolid)
春にしてリイシューを想う

いろいろある世の中ですが……リイシュー界も冬から春へ。まずはDJ目線の名品で、ドイツのライナー・トゥルービー選曲の『Soulgliding』(BBE)を推薦。彼の造語となる表題は〈BPM110以下〉縛りというルールを設けたジャンル不問なカテゴリーのこと。本作にもパトリース・ラッシェン“To Each His Own”やキャスト“Sweetness”などが並び、TK音源ではピーター・ブラウンのドラムレスな“Without Love”が冒頭から幻想的に響き渡ります。

続いては空ジャケ繋がり(?)で、コンピ『Spring NYC Soul』(Kent)をオススメ。60~80年代のNYで名を馳せたスプリング(+系列レーベルのイヴェント、ポッセ)の音源を集めた豪華な一枚で、ヴィクター・タヴァレスの甘くやるせない“Faling In Love”やレイ・ゴッドフレイのスマートなダンサー“Hold On”などの蔵出し曲も最高ですが、初CD化と思しきジョーンジズの軽快なポッセ音源“Beauty(Is In The Eye Of The Beholder)”(80年)など純粋に素晴らしい曲だらけです。

THE THOMPSONS I’ll Get Over It BCW/Brewerytown Beats/ディスクユニオン(2020)
続いては昨年LP復刻も実現していた激レアな逸品、トンプソンズの75年作『I'll Get Over It』(BCW/Brewerytown Beats/ディスクユニオン)の初CD化です。フィリー産ヴォーカル・グループながら、同時期のPIR的な洗練ではなく“I'll Always Love You”などトラディショナルな甘茶コーラスが漲った名唱揃いの内容になっています。これもマストな甘味!

さらに地縁繋がりで……TK音源の発掘も名高いアセンズ・オブ・ノースから、フィリー出身LA在住のコンポーザー/シンガーであるラロンベの、自宅などにあったテープから抽出したという編集盤『From Philly』(Athens Of The North)を。AOTN主宰のユアン・フライヤーがジャズマン時代から交渉してきたという労作で、7インチも出ていた“You're The Best”をはじめ、ブギー~AOR~エレクトロと切り口多彩な音と素晴らしくヘタウマな歌唱に心惹かれる不思議な好盤です。

最後も発掘モノ、76年に7インチ1枚を残していたオークランド産ファンク・バンド、ファミリー・オブ・スウェードの未発表アルバム『Family Album』(Cordial)。個性は希薄なれど良し! *出嶌孝次