マイアミ・ソウルの殿堂から世に出たファンキーでメロウでダンサブルな名品たちがまたしても大挙リイシュー! 全部聴かなきゃ桜も咲かないよ!
眩しいばかりの陽光が差し込み、椰子の木が南風に揺れる――そんな書割りのイメージをそのままサウンドにして世界を席巻したのが、フロリダはマイアミを拠点にさまざまなアーティストを送り出したレーベル/プロダクション/ディストリビューターのTKである。とりわけ70年代には世界に向けて〈マイアミ・サウンド〉を発信し、ディスコ・シーンの隆盛にも大きく貢献した一大ブランドであったことは、本連載の第93回と96回でも膨大なリイシュー作品と共にヒストリーを紹介してきた通りだ。
下に掲載のジョージ・マクレー『Diamond Touch』のディスクガイドにもあるように、アル・ケントのディスコ・エディット集に“Givin’ Back The Feeling”が収まっていたり、あるいは別掲のライナー・トゥルービーによるコンピ『Soulgliding』にピーター・ブラウン“Without Love”がチョイスされていたり、もはやTKサウンドに出会わずに日々を送ることすら難しい……というのは大袈裟だが、カヴァーやサンプリング需要の多さも含めてその広がりは現代の音楽シーンにもナチュラルに入り込んでいると言っていいだろう。
とはいえ、彼らの生み出したサウンドはもちろん常夏のグルーヴや海沿いのメロウ・チューンばかりではない。ソウル、ファンク、ディスコ、AOR、フュージョンなどそのカテゴリーや評価軸もさまざまで、〈マイアミ・サウンド〉の一言では括れないほど多岐に渡る作品がTKの豊潤なカタログには数多く残されている。そんな膨大な宝石たちを足掛け5年で日本盤として送り出してきたのが〈The Miami Sound: Original Soul/Funk/Disco Collection〉だが、その定期的なサイクルもこの2月のタイトルで一区切り。そこで今回は最新タイミングでリイシューされた9タイトルとコンピレーションに加え、第96回で取り上げて以降の数年間にリイシューされていた作品も含めて40作ほどを一気に紹介しておこう。
2月のリイシュー分では、イーライズ・セカンド・カミング『Eli's Second Coming』(77年)やファイアの『Fire』(78年)、ファンテイジア・フィーチャリング・ペギー・サンティグリアの『Sweet, Sweet City Rhythm』(78年)、ジョー・テックス『He Who Is Without Funk Cast The First Stone』(78年)という4タイトルが世界初CD化を実現。他にもジェイムズ・ブラウンの『Soul Syndrome』(80年)やチーズの『Cheese』(78年)などの人気作がラインナップされていて、いずれもソウル/ファンク/ディスコ・ファンなら(ずとも)聴き逃せない内容のはず。もちろんそれ以外にはベティ・ライトやリトル・ビーヴァーら主要アクトの定番作も多くあるわけで、その輝きもまた不変だ。既存のレアリティー基準に左右されることなくさまざまな作品に親しんでいただきたい。 *bounce編集部
関連盤を紹介。
左から、アル・ケントの選曲/エディットによるディスコ・コンピ『Disco Demands Part Six』(BBE)、Ryuhei The Man選曲のコンピ『The Message From T.K. ~It's A Miami Modern Soul World~』、定番シリーズのコンピ『FREE SOUL T.K.』(共にSolid、フォクシーの76年作『Foxy』(Dash/Solid)、ピーター・ブラウンの79年作『Stargazer』(Drive/Solid)、サーティーンス・フロアの77年作『Steppin' Out』、スヌーピー・ディーンの77年作『Wiggle That Thing』(共にBlue Candle/Solid)、ビル・パーセル&ザ・ナッシュヴィル・スウェット・バンド&アイデスの76年作『The Sweat Sound』(Alston/Solid)、スパッツの78年作『Spats』(Good Sounds/Solid)