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林 周平(リテール事業本部)

1. Disclosure & Fatoumata Diawara “Douha (Mali Mali)”

今年の再生回数ベストです。ジューシーなドラムにうねるベースライン、シンセパッドのフィルターが開閉するだけで大喜び、そしてなんといってもこの〈Mali Mali...〉と繰り返すフレーズ……完全に中毒になっています。アルバムとしても年間ベスト。今日もマリマリ、明日もマリマリ……

昨年もベストに挙げたConductaが主宰するKiwi RekordsよりSammy VirjiとShift K3Yによるコラボトラックがリリース! お互いの旨味を引き出し合うことに完璧に成功しており、それを一枚の皿に美しく盛り付けたかのような出来栄えにはひたすら笑顔。やはり信用のできる男の元には信用のできるやつらが集まるのか……

新譜が出たと聞いて今回はどんな感じかな、と思わせてくれるようなアーティストは誰にとっても貴重な存在ですが、個人的にその一人であるところのBibio。アルバムのタイトルにもなっているこのトラックですが、繰り返し聞いていると、Bibio本人の社会に対する観念めいたものも感じられるような気がしたり。往々にして、一人だけで制作された音源にはそういう要素が滲みがち。次のアルバムも楽しみです。

人間性への祝福という壮大なテーマを扱った一曲ですが、耳馴染みはどこまでもポップ(に聞こえるようにJacobがコントロールしてくれているのですが)。スキャット的に登場するTy Dolla $ignもいい味出してます。天才と言われているJacob Collierがこういった普遍的なことを歌うっていうのはなんかいいなと感じます。

5. Cookiee Kawaii “Vibe (If I Back It Up)”

SoundCloudでもSpotifyでもこの曲がやたら回ってくるので調べてみるとどうやらTiktokでバズったとか。2020年にDoja CatがJersey Clubで踊っている姿を見ることになるとは……それはさておき、チル系Jersey Clubとして普通に強度の高いトラックであり、だからこそバズ後も伸び続けているのでしょう。ちょっとアクの強いMVも素敵。

今年の年明けから新型コロナウィルスのことが日本でも取り上げられるようになり、自分も毎日ニュースを片っ端から読んでは気が沈み……というのを3ヶ月ほど繰り返していましたが、そんな中リリースされたFour Tetの新譜は暖かすぎず、冷たすぎずのちょうどいい塩梅の仕上がり。どういう気分のときでもフィットするのでよく聞いていました。今でもなんとなく聞きたいものが思いつかないときはとりあえずこのアルバムを流しっぱなしにしています。

ここ日本での人気も高いPorter Robinson。イントロから流れるギターのアルペジオですが、生演奏ではなく、わざわざ昔のGM音源のようなチープな音源を使っているのが逆にエモい。昔のMMOのログイン画面BGMとか、大体こういう音でしたよね。ピアノのフレーズも明らかに強い意志を持って配置しており、〈俺はこれをやりたいんや〉を感じる1曲。

ビートがUKガラージ風だったり、内省的な歌詞であったりと色々語れるポイントがあるはずなんですが、なにより〈前半は遠い音像で、後半から解像度が上がる〉というみんながやりたいネタを大真面目にやってくれたことに感銘を受けたのでピックアップ。(昨年の内にシングルカットされていたことを知らずでした……)

ふとグライムを聞いてみたいと思ってざっくりと聞いた中で一番ピンときたアーティストを調べてみるとDizzee RascalというMCだとか。〈だとか〉という言い回しも失礼な、グライムを聞いている人であれば当然知っているレベルのキャリアの持ち主なのですが。しかし普段その手のジャンルを聞かない自分でも反応してしまうだなんて、やはり最前線を走るベテランの馬力はすごい……と勝手に感動。

10. Dirty Loops “Rock You”

単純に良い曲! 来年はこれぐらい景気よくやっていきたいです!

 

鈴木英之介(Mikiki編集部)が選ぶ10曲

インディー・フォークの爛熟。2020年の音楽シーンを総括すべく振り返ったとき、そんなフレーズが頭に浮かんだ。フィービー・ブリジャーズ『Punisher』、フリート・フォクシーズ『Shore』、エイドリアン・レンカー『songs』……今年は当ジャンルにおいて、いくつもの名作が世に放たれた。そしてその中でも目玉というべき作品は、やはりテイラー・スウィフト『folklore』だろう。世界で最もメジャーと言っても過言でないポップ・アイコンが内省的なインディー・フォークに接近するというのは、やはり衝撃的な出来事だった。

だが熟れすぎた果実は、やがて朽ちるものだ。そしてその比喩はインディー・フォークに対しても、多かれ少なかれ適用し得るのではないだろうか。実際〈インディー・フォーク的サウンド〉は半ばトレンド化していく中で、その鮮度をやや失してしまったように感じられる。

僕自身はいちリスナーとして、良質なインディー・フォーク作品に親しみを覚えつつ、同時に少し食傷してもいて、だからこそ潮の流れを強引に捻じ曲げてしまうような力強さに満ちた、オルタナティヴな可能性を示唆する音楽に強く惹かれていた。上記のラインナップには、そんな僕の分裂的な心情が表れていると思う。

 

小峯崇嗣(TOWER DOORS)が選ぶ10曲

毎年のことですが、特に今年は音楽に救われた年でした。コロナによって外出もできなくなって、唯一の楽しみといえば毎週リリースされる音楽くらいでした。ひたすら掘っていた気がします。そのおかげで今年も素晴らしい音楽たちに出会えました。そんな自分の心の支えとなった10曲です。