時代を越えてニュー・タイトルが続々と登場してくるソウルの世界。もはや現実はなかなかですが、今回は2020年の収穫を総決算しておきましょう。さまざまなリイシューや発掘盤など膨大なリリースの宝の山から、いまこそ拾い上げて聴いておきたい珠玉のアルバムとは!?
旧年中はお世話になりました。ってことで、毎年恒例のソウル復刻&発掘の個人ベスト、2020年版です。クラーク・シスターズやビリー・オーシャン、ドン・ブライアントといった大御所が元気に新作を届けたこの年は、かつて本連載でも取り上げたビル・ウィザーズやベティ・ライト、クール&ザ・ギャングのロナルド・ベルといったレジェンドが逝去。元TOPのフランシス・ロッコ・プレスティア、ランス・アレン、DJ・ロジャース、エモーションズのパメラ、ハニー・コーンのエドナ・ライト、ロイC、ハミルトン・ボハノン、元シュープリームスのバーバラ・マーティン、元テンプスのブルース・ウィリアムソン、ソウル・サヴァイヴァーズのケニー・ジェレマイア、スウィート・セイブルら忘れ難い面々もこの世を去っています。例の映画が話題になった年にアンドレ・ハレルが急逝するというのも……。
そんな思いはさておき、いつ生まれた曲であろうと、その作品に初めて出会うリスナーにとってはそこがリアルタイムなわけで、そう考えればやはり2020年も注目すべき復刻や発掘は多々ありました! *bounce編集部
2020年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/林 剛

VARIOUS ARTISTS 『Stone Crush: Memphis Modern Soul 1977-1987』 Light In The Attic(2020)
アフター・スタックス時代の知られざるメンフィス・ソウル/ファンク曲を集めた本コンピは画期的だった。ローカル産らしいセカンドクラス感もあるとはいえ、メジャーからこぼれ落ちた才能たちがスタックスやハイの残党を味方につけて地元スタジオにて録音した楽曲はモダン・ソウル~ブギー・ファンクの良品揃いで、現在の空気に馴染む。フランキー・アレクサンダーのエレガントなミディアム“No Seat Dancin'”をベン・コーリーが手掛けているが、バーケイズに影響を受けたと思しき曲も多数。肉厚で詳細なブックレットも労作だ。

シカゴのベーシスト/シンガーがAVIから出した2枚のアルバムは、ブギー・ブーム以降に復刻されたファンク盤の中でも屈指の作品だろう。ジャケットから滲み出るPファンク愛も好感だが、洗練されたディスコ・ダンサーで開幕するこの2作目は、ダニー・リークら地元の腕利きを集め、管弦の響きも活かして優雅なウィンディ・シティ・ソウルを繰り広げた快作。ケンドリック・ラマーの初期曲にて引用されたメロウ・ソウル“Cream & Sugar”などでは、後にフィリーのWMOT一派と絡む彼らしいモダンなセンスが光る。

VARIOUS ARTISTS 『The Gospel Truth -Complete Singles Collection』 Craft(2020)
スタックス音源の復刻がクラフトによって新たな視点で進められているが、傘下のゴスペル専門レーベル、ゴスペル・トゥルースの全シングルA/B面を品番順に並べたこの作品集は待望の企画だった。モータウンやフィリー・ソウルの曲をカヴァーするなどして世俗に接近したランス・アレン・グループを看板アクトとしただけに、図らずも10月に他界したアレンの追悼作となったコンピでもある。ジョシー・ジョー・アームステッドや21stセンチュリー、ジャッキー・ヴァーデルなど、単純に70年代ソウルとしても強力な曲が揃う。

レア・グルーヴ方面で人気を集めるマイティ・ライダーズのライオネル・ハリソンを擁した4人組で、マイティ~の78年作『Help Us Spread The Message』と同じくサミュエル・ソロモンJrが制作し、マイアミで録音されたとくれば見逃すわけにはいかない。チョコレイトクレイを思わせるブリージンなマイアミ・ソウル“Strung Out On Your Love”に代表される洒脱なモダン・ソウル/ファンクの連続で、歌や演奏のヘタウマ感も愛おしい。81年の原盤は激レア。そこに入っていた半裸写真のポスターが本復刻盤のジャケに使用された。

RON HENDERSON & CHOICE OF COLOUR 『Soul Junction』 Chelsea/Pヴァイン(1976)
オリジナルLPは高嶺の花。そのチェルシー原盤作(76年)が、80年代に出された増補新装盤の収録曲をもとに、74年のシングルを加えてCD復刻された。シャーロットを拠点としたロン・ヘンダーソンがニューオーリンズ勢と連携して作り上げたアルバムで、ドゥワップ、スウィート・ソウル、NOLAクラシックを混在させながらモダンなアプローチで迫る。裏声を交えたフィリー・ソウル風の“I'll Be Around”は、人種間の分断がない世界を願うメッセージ・ソング。偶然とはいえ、BLMが叫ばれる現代に相応しい復刻でもあった。

VARIOUS ARTISTS 『Ready Or Not - Thom Bell's Philly Soul Arrangements & Productions 1965-1978』 Kent/Solid(2020)
フィリー・ソウルの立役者による14年間の仕事から代表曲を集めた本盤は、バート・バカラックにも喩えられる小粋なポップセンスが光る名曲揃いで、トム・ベルがスウィート・ソウルのムードを作り上げた名匠のひとりであることを改めて実感させてくれた。コートシップのモータウン音源もフォロー。そのエレガントな作法は、レスリー・ゴーア、コニー・スティーヴンス、ダスティ・スプリングフィールド、ローラ・ニーロといった白人女性たちと相性が良かったことも知らしめる。監修はセイント・エティエンヌのボブ・スタンリー。

このオークランドのヴォーカル&インスト・グループは今回初めて耳にした。お蔵入りとなった76年発表予定のアルバムを軸に、80年代録音の曲も交えて組んだ編集盤。既発シングルA/B面の2曲が象徴するようにグルーヴィーなファンクとスウィートなバラードを聴かせるバンドで、元祖アシッド・ジャズ的な曲もあるが、テンプテーションズ“The Girl's Alright With Me”のカヴァーを披露する歌心がキモだ。12分近くの長尺版も収録された“Set You Free”などのモダンで落ち着いたスロウに彼らの本質が現れている気がする。

THE CLARK SISTERS,ELBERNITA "TWINKIE" CLARK 『You Brought The Sunshine: The Sound Of Gospel Recordings 1976-1981』 Westbound/Ace(2020)
伝記TV映画の公開で改めて注目が集まったデトロイトのゴスペル姉妹。ディーン・ラドランドの監修で、トゥインキー・クラークのソロ曲を含むサウンド・オブ・ゴスペル時代(76~81年)の編集盤も再評価に一役買った。ガラージ・クラシックとしても有名な“You Brought The Sunshine(Into My Life)”を筆頭に、ディスコなどに接近して世俗でも人気を得た彼女たちの開かれたゴスペルは、クリスチャンであるか否かは関係なく広く親しまれて然るべきものだ。久々の新作『The Return』でも爆発的な歌声とスピリットは変わらず。

日本公開された映画「メイキング・オブ・モータウン」にてベリー・ゴーディJrとスモーキー・ロビンソンが社内のシステムを詳らかにしていたが、〈品質管理会議〉でボツにされたであろう曲を含む黄金期モータウンの未発表/レア音源集、その第5弾が前作から約10年ぶりに到着。CD化およびデジタル配信済みの曲もあるとはいえ、ファンク・ブラザーズの未発表インストは録音予定だった歌い手の姿を想像すると胸が熱くなるし、ブライアン・ホーランドのデモなどに初めて接する喜びは大きい。モータウンの音源は本当に底なしだ。

ELI'S SECOND COMING 『Eli's Second Coming』 Silver Blue/Solid(1977)
秘境レヴェルに突入したTKの復刻シリーズ。故レン・バリー(2020年に他界)との仕事も多かったMFSBのギタリスト、ボビー・イーライによるディスコ・プロジェクト唯一のシルヴァー・ブルー原盤作が世界初CD化となったのも嬉しい。第2期MFSBによる演奏のもと、スウィートハーツ・オブ・シグマの女声コーラスを従えて華やかに展開するフィリー・ディスコは一連のサルソウル作品に通じる昂揚感があり、快楽への扉を開いてくれる。イーライがメイジャー・ハリスに提供した“Love Won't Let Me Wait”のカヴァーを含む。
2020年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれじゃ! 選・文/出嶌孝次

PRINCE 『Sign 'O' The Times:Super Deluxe Edition』 Paisley Park/Warner Bros./NPG/Rhino/ワーナー(2020)
何かしらの発掘が毎年のように実現することになったプリンス周辺だが、こちらは多様なインプットの屍の上に本編が完成したことも心の揺れと共に伝わってくるドキュメンタリーのような一大発掘盤。重要な未発表曲が膨大に蔵出しされることで、幻の『Dream Factory』『Crystal Ball』『Camille』の全容が公式に楽しめるようになっただけでなく、ウェンディ&リサの貢献やレヴォリューションの終焉劇、帝王マイルスやボニー・レイットとの邂逅といった多彩な切り口から楽しめる内容だった。次は『Parade』か。

DIANA ROSS & THE SUPREMES 『Sing And Perform "Funny Girl" -The Ultimate Edition』 Motown/Real Gone(1968)
映画「メイキング・オブ・モータウン」の日本公開が前年のレーベル設立60周年よりも盛り上がった2020年……結成メンバーのバーバラ・マーティンは逝去し、ダイアナはソロ・デビュー50周年を迎えた。以外にも初CD化となったこちらはバーブラ・ストライサンド主演ミュージカル「ファニー・ガール」(64年)のレパートリーをギル・アスキーのアレンジで取り上げた一枚。次代のショウビズ女王を望まれたダイアナの実質的なソロという側面も強く、これを本編の映画化にぶつけて出したベリー・ゴーディJrの野心も忍ばれる。

THE THOMPSONS 『I’ll Get Over It』 BCW/Brewerytown Beats/ディスクユニオン(2020)
グングン掘り進められているプライヴェート盤や学校モノの多くはバンド形態のファンクだったりするが、フィラデルフィアの高校でトンプソン兄弟と友人が結成したヴォーカル・グループは、珍しく全編で正統派のスウィート・マナーを披露している。トム・ベルやギャンブル&ハフらの作法を模倣した全体の雰囲気作りは微笑ましくもあるが、後にWMOTからトンプソン・ブラザーズとしてプロ・デビューするだけあって実力は確かなもの。チープな音作りも絶妙な甘酸っぱさでティーンエイジ・ソウルの幻想を膨らませてくれる。

SPARKLE 『Sparkle』 Jam Sessions/Cultures Of Soul/OCTAVE(1979)
〈ディスコ・ブギーの永遠の名作〉という謳い文句で世界初CD化が実現した女性トリオの唯一作。本能に訴えかけるジャケも最高だが、ウッド・ブラス&スティールのハロルド・サージェントがプロデュースした内容にディスコ/ブギー的な要素は薄く、手数の多いアップリフティングな人気曲“Let Yourself Go”や“Disco Madness”など、ラテンやジャズを含有した超絶パーカッシヴなアッパー・グルーヴがスリリングに響いてくる。ブラジリアン作法の“You”や、Pの影響が色濃いアーシーなファンクでの歌いっぷりも気持ちいい。

ソウル/R&B界には何組かのスターが存在する〈シルク〉だが、こちらは90年代からJBのバンドで活動するサックス奏者のリロイ・ハーパーJrが在籍したレアなシルク。いわゆるジョージア・ライナ圏のバンドで、この唯一のアルバムも当時プロモ盤が限られた数だけ出回ったもの。ローカルなレア・ディスコ観点からの評価に加え、ライト・イン・ジ・アティック系列タイダル・ウェイヴからの復刻という箔もついた(?)作品ながら、そこはかとない妖しさや同時期のリック・ジェイムズばりに野太い歌唱のスロウが甘くて最高。

ベイエリア・ファンクの雄として70年代から活動する大御所バンドの全盛期の足取りを追った2枚組アンソロジー。代表曲“Ffun”や“Chase Me”などの筋肉質なファンク、80年代らしい軟弱な“Love's Train”“Electric Lady”などのヒットを網羅し、珍しさより何より先に普通に楽しめる。レアものの発掘が華やかに映る状況にあって、リアルタイムでメジャー・ヒットを飛ばしたアーティストほどリイシュー状況が芳しくなかったりすることも多いが、このように普通の良品がもっと知られてほしいと感じることも相変わらず多い。

EMERSON 『If You Need Me, Call Me』 L.A.S./Kalita/OCTAVE(2020)
アラビアン・プリンスやデイム・ファンク風のルックスが中身を説明している感じだが、本作はジョージア出身のエマーソンが88年にリリース予定だったという未発表アルバムだ。プライヴェート・プレスで500枚のみ世に出た自主7インチ『Sending All My Love Out/Why Are You So Cold?』以外の楽曲は蔵出しで、遅れてきたシンセ・ファンクが今風のレア・ブギーとして輝きを放っている。甘すぎる表題曲や“Nosey Neighbours”、不穏なエレクトロの“Raw Deal Cocaine Kills”など狙って出せない味が凄い。

10年ほど前の大発掘だったダーウィンズ・セオリーの一員にも名を連ね、オクラホマ州タルサで活動していたと思しきブギー・ファンカーの楽曲をAOTNがコンパイル。“The T-U-L-S-A Song”(88年)などローカルでひっそり出していた本人名義のシングル2枚とT・スプーン名義のシングル、未発表曲を寄せ集めた全10曲入り。情感に溢れたチープなスロウ“Never”やシンセの煌めく疾走ダンサー“If You Dance Tonite”、疑似クワイアを従えた“Genesis”など、時代感覚がわからなくなる絶品のカルト・ファンクに酔わされた。

毎年のように気の利いたコンピを編んでくるケント。こちらは60年代後半~80年代後半に名を馳せたNYソウルの名門レーベル、スプリング(及び系列レーベルのイヴェント、ポッセ)の音源を選りすぐった一枚で、デタミネーションズ“Save The Best For Me”の未発表エディットを筆頭にレイ・ゴッドフレイのスマートな“Hold On”などの未発表曲、ジョーンジズのポッセ録音“Beauty(Is In The Eye Of The Beholder)”などの初CD化モノなど、どれも都会的で高品質で驚かされた。摩天楼を写したジャケの雰囲気も最高。

KOOL & THE GANG 『Ladies' Night/Celebrate!/Something Special/As One/In The Heart/Emergency』 BGO(2020)
ジェネイ・アイコのベタな“Summer 2020”に聴き惚れていたら、巨星ロナルド・ベルが急逝してしまったクール&ザ・ギャングの2020年。こちらはジェイムズ“JT”テイラー加入に伴って訪れたバンドの第2次全盛期におけるアルバム6枚が丸ごと楽しめる3枚組セット。珍しさは皆無ながら、当時は甘口に受け止められたであろうポップ・ヒット群のファンキーでグルーヴィーな強度を手軽に堪能できる。生前のロナルドが取り組んでいたとされる新作『Perfect Union』のリリースも2021年の大きな楽しみとしておきたいところだ。
リイシューが明けてどんな気がする?

新年になりまして、いろんな意味でどう生きるべきか悩みどころではありますが、それでもリイシューの道は続いていくのです。……ってことで、まずはイーゴン様の発掘したミュージック・メイカーズ・バンドのお蔵入りアルバム『You Can Be』(Now-Again)を大推薦。最近よくあるモノクロのジャケもそこはかとなくナイスなムードを出していますが、これは『Black Gold』(77年)で知られるジョージア州メイコンのバンド、マイティ・シェヴェルズが残していると噂されてきたらしい別名義での作品で、そんな噂は知らんけど中身は素晴らしいです。録音は77~79年ということで、ディスコ時代らしく絶妙に洗練されたダンサブルなファンクを中心に、ローカル産品ならではの泥臭さと純真を纏ったミッド~スロウも収録。なかでも軽快すぎて泣ける“That's The Way”をはじめとしたグルーヴィーで瑞々しいダンス・ナンバーはそれもハズレなし。オリジナルの8曲にインスト、ケニー・ドープの尺伸リミックスも収録されて、これは早くも今年の発掘ベスト候補かもしれません。

お次は、ブラック・ジャズでの処女作『Maiden Voyage』が有名なケリー・パターソンの2~4作目が一挙リイシュー。2作目『Kellee』(Shadybrook/OCTAVE)も“I'm Gonna Love You Just A Little Bit More, Baby”などのソウル・カヴァーが魅惑的ですが、初CD化となった77年の3作目『Turn On The Lights -Be Happy』は、ラリー・ファーロウの手掛けた歯切れのいいタイトなサニー・グルーヴが爽快なジャケそのままに広がる快作となっております。さらに、ディスコ爛熟期の空気をエレガントに反映しつつジャジーな本来の魅力も見せた79年のラスト作『All The Things You Are』も初CD化。黒人女性で初めてミス・インディアナに選ばれた彼女だけにどのジャケも快活な笑顔が印象的ですが、品のある内容の良さはいずれも保証できます!

VARIOUS ARTISTS 『Lofts & Garages: Spring Records & The Birth Of Dance Music』 BGP(2020)
最後に、スプリング系列のファンク~ディスコ~エレクトロ音源をコンパイルした『Lofts & Garages: Spring Records & The Birth Of Dance Music』(BGP)を紹介。元ダズ・バンドのマイケル・カルホーンによるC・ブランドの“Wired For Games”、ファットバック周辺、そしてリッツやグローリー、ブレイズといったモーリス・スター絡みの80年代仕事がまとめて楽しめる好盤であります。 *出嶌孝次