キラキラと輝く青い感性を保ったまま成熟をしていくのはいろんな意味で難しいが、ユミ・ゾウマはそれを成し遂げている。ニュージーランド出身のこの4人組による『Present Tense』は彼らにとって4枚目のアルバムだ。ギター・ポップ、ドリーム・ポップなどジャンルで表せばどうとでも言えるだろうが、まずもってこの作品には成熟した甘酸っぱさ、と言うべきものがある。

YUMI ZOUMA 『Present Tense』 Polyvinyl/BIG NOTHING(2022)

 本作の素晴らしさはシャープで高解像度な音の質感に依っている部分が大きい。歯切れの良い音像が楽曲の進む方向を決めているようですらある。例えば先行シングルの“Mona Lisa”では小気味良く曲が展開していき、魅力的なサビが軽快に弾ける。音のキレが良いからこそ、展開の節々に絶妙な〈間〉があり、それが魅力的なリズムとなり曲を推し進める。6曲目の“Of Me And You”にしてもそうだ。クッキリとした輪郭のサウンドが、その輪郭を通じて曲を推進し、強いフックを生んでいる。

 そんな明瞭な音こそが、持ち味である切なく甘酸っぱいメロディーをより際立たせている。これは彼らのキャリアを通じた成長の証である。初期EPの頃はやや線が細く、それゆえの美しさもあったが、バンドが成長するにつれて音の輪郭はより豊かに肉付けされ、アレンジの幅も広がっていった。そうした末に成熟しつつもなお青く、美しいアルバムを作り上げた。これぞ理想的なバンドのあり方ではないか。

FATHER JOHN MISTY 『Chloë And The Next 20th Century』 Sub Pop(2022)

 なお、いよいよ4月8日にアメリカが誇る稀代のシンガー・ソングライター、ファーザー・ジョン・ミスティ待望の新作が世界同時リリースされるということなので、残りはそれについて少し触れておきたい。アルバムのタイトルは『Chloë And The Next 20th Century』。この原稿を執筆している3月前半の時点で2曲が先行公開されている。映画音楽的なモチーフがサウンドの中心に置かれつつ、お馴染みの強烈な毒気も健在である。

 “Funny Girl”は恐らくバーブラ・ストライサンドが主演した同名ミュージカルにちなんだ曲であり、ヘンリー・マンシーニすら思わせる壮麗なストリングスに沿って、映画産業への風刺が歌われる。“Q4”でも大仰かつ抒情的なストリングスが用いられていることからも、アルバムはかなりシアトリカルな内容になりそうである。アークティック・モンキーズの直近作に近かったり?

 半ば開き直ったような時代錯誤と、マジなのか冗談なのか判断がつかない素振りで(というかほとんど分裂しながら)〈エンターテインメント〉という自身と社会の宿痾に取り組んできたジョシュ・ティルマン=ファーザー・ジョン・ミスティ。彼が歌う〈次の20世紀〉とは果たしてどのようなものなのだろうか。

 


【著者紹介】岸啓介
音楽系出版社で勤務したのちに、レーベル勤務などを経て、現在はライター/編集者としても活動中。座右の銘は〈I would prefer not to〉。