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ブラック・ミディを聴くと〈もっとやっていい〉と思える

――荘子itさんも崎山さんもブラック・ミディから刺激を受けつつ、彼らとはライバルであり同世代のミュージシャンでもあると感じていますか?

荘子it「崎山くんは完全に同世代だからね」

崎山「彼らをライバルと言うのはちょっと恐縮なんですけど、いちファンとしてめちゃめちゃ大好きです。あと同世代で、こんなにおもしろい音楽をかっこよく、うまくやっている方々がいらっしゃること自体に希望を感じます。ブラック・ミディを聴いていると、自分ももっとやっていいんだなって思えるんです」

荘子it「Dos Monosも、そうなりたいと思って始めたところがあるんだよね。特に2017、2018年頃までは、この手の攻め攻めの音楽をやることが憚られる空気を如実に感じていたから。でも、2019年にいきなりブラック・ミディとか、いろいろなミュージシャンが一気に出てきて」

――崎山さんがTVのパフォーマンスで話題になったのは、2018年の半ばでしたね。崎山さんとのコラボレーションもした諭吉佳作/menさんが注目されはじめたのも同時期で、長谷川白紙さんの『草木萌動』がリリースされたのが2019年12月です。あの頃に音楽シーンのムードが変わった、と言うこともできるでしょうね。

荘子it「〈チルから暴力へ〉なんて同人誌(2020年のZINE『痙攣』)もありましたね。〈なんか世の中チルっててつまんねえな〉という空気があって、鬱屈したものが一気に噴出してきたタイミングだった。〈こういう音楽をもっとやっていいんだぞ〉という空気にはすごく共鳴したし、他のミュージシャンもみんなそういうことをやりはじめて。

これはマジで大事なことで、もちろん音楽がかっこいいことも重要だけど、やっぱ綺麗にまとめあげられたものだけを聴いていてもね。いち音楽リスナーにとっては興奮できるものでも、音楽を遠目に眺めている人たちからするとホットに見えない。ミックスの妙とか、そういう細かいことも大事だけど、〈こんなとんでもないことをやっている人がいるんだ〉という状況が文化には必要だから」

――私が崎山さんのパフォーマンスを観たときの印象も、〈異物〉と言ったら失礼ですが、綺麗な歌を綺麗に歌う普通のシンガー・ソングライターとはちがう、はみ出した存在だと感じて衝撃を受けたんです。〈こういう歌を歌ってもいいんだ〉と感じる崎山さんの表現に、聴き手は勇気づけられていると思います。

崎山「それはうれしいですね。やっぱり、自分の歌ってけっこう聴きづらいなと思うんです」

――(笑)。

崎山「声も微分音的というか、(ピッチが)合っているのか合っていないのか、ギリギリの感じですし」

荘子it「“五月雨”に〈♪不安定な〉というところがあるじゃないですか。あれを聴くと、こっちも不安定な気分になる(笑)。そこがいいよね」

崎山「不安定さや弾けた表現は自分の個性だと思うので、磨いていきたいですね」

崎山蒼志の2018年のシングル“五月雨”

荘子it「ブラック・ミディから学べるのは、一回ぐちゃぐちゃになっても戻ってくればいい、ということですよね。崎山くんの音楽も、不安定な部分がありつつも、最後はポップスに戻ってくる。最終的にポップスに戻ってくれば許してもらえるというか、5分の曲のなかに30秒くらいやばい瞬間があってもバレない、それがむしろプラスになっている、みたいな(笑)」

――そういう点で、3者には共通するものを感じますね。

荘子it「ブラック・ミディのファースト・ライブはサウス・ロンドンのウィンドミル(ヴェニュー)だったんだけど、そこしか声をかけてくれなかったらしいんですね。そういう場所こそが文化の発信元になる、っていうのがミソですよね。

俺らもそう。日本のレーベルはどこからも声をかけられなくて、結局LAのデス・ボム・アークだけがひっかかってくれた。狭い感度を持っている変なやつが次世代の文化を作るんだよね。そう自分に言い聞かせるスタイルでやっています(笑)。なので、崎山くんのぶっ壊し芸に期待したいですね」

崎山「僕もブラック・ミディを聴いて、すごくポップな曲に1分くらいのドローンを入れたくなりました(笑)」

 


RELEASE INFORMATION

BLACK MIDI 『Cavalcade』 Rough Trade/BEAT(2021)

■国内盤CD(スピンオフ・アルバム『Covercade』付)
品番:RT0212CDJP
価格:2,420円(税込)
ボーナス・トラック2曲追加収録/解説・歌詞対訳付

■国内盤CD+Tシャツ(S)
品番:DISBD009
価格:6,820円(税込)

■国内盤CD+Tシャツ(M)
品番:DISBD010
価格:6,820円(税込)

■国内盤CD+Tシャツ(L)
品番:DISBD011
価格:6,820円(税込)

■国内盤CD+Tシャツ(XL)
品番:DISBD012
価格:6,820円(税込)

■輸入盤CD
品番:RT0212CD
価格:2,519円(税込)

■限定盤LP(ピクチャー・ディスク/特典ソノシート付)
品番:RT0212LPE
価格:3,179円(税込)

■輸入盤LP(初回帯付仕様/特典ソノシート付)
品番:RT0212LP
価格:2,849円(税込)

■輸入盤カセット
品番:RT0212MC
価格:2,519円(税込)

TRACKLIST
1. John L
2. Marlene Dietrich
3. Chondromalacia Patella
4. Slow
5. Diamond Stuff
6. Dethroned
7. Hogwash and Balderdash
8. Ascending Forth
9. Despair *Bonus Track for Japan
10. Cruising *Bonus Track for Japan

 

*2021年9月1日追記
〈black midi JAPAN TOUR 2021〉延期のおしらせ
2021年9月に開催を予定されていた〈black midi JAPAN TOUR 2021〉は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や日本政府による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置、出入国の制限、ライブ会場や運営の制限などにより、延期になりました。現在、振替日程を調整中で、新たな日程と希望者へのチケットの払い戻しについては、後日発表されます。詳しくはビートインクのオフィシャルサイトをご覧ください。
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12069

LIVE INFORMATION

black midi JAPAN TOUR 2021
OSAKA

2021年9月15(水)大阪・梅田 CLUB QUATTRO ※延期
開場/開演:18:00/19:00
インフォメーション(SMASH WEST):https://smash-jpn.com
コロナ・ガイドライン:https://smash-jpn.com/guideline
※キャパ制限あり

NAGOYA
2021年9月16日(木)愛知・名古屋 THE BOTTOM LINE ※延期
開場/開演:18:00/19:00
インフォメーション(JAILHOUSE):https://www.jailhouse.jp/
※イベント・ページにコロナ・ガイドラインが記載されています
※キャパ制限あり

TOKYO
2021年9月17日(金)東京・渋谷 TSUTAYA O-EAST ※延期
■1ST SHOW
開場/開演:17:30/18:15
■LATE SHOW
開場/開演:20:30/21:15
インフォメーション(Beatink):https://www.beatink.com/
コロナ・ガイドライン:https://www.beatink.com/user_data/covid-19_guideline.php
※キャパ制限を鑑み1日2回公演

■チケット
前売り:6,380円(税込/ドリンク代別/オール・スタンディング)
※未就学児童入場不可
※購入制限:お1人様2枚まで(要同行者登録)

■先行販売
2021年6月10日(木)18:00〜
Beatink主催者先行(先着限定数):https://beatink.zaiko.io/e/blackmidi2021
2021年6月12日(土)12:00〜2021年6月16日(水)18:00
イープラスPG最速先行(抽選限定数):https://eplus.jp/blackmidi/

■一般販売
2021年6月26日(土)〜
イープラス:https://eplus.jp/blackmidi/
チケットぴあ:https://t.pia.jp/
ローソンチケット:https://l-tike.com/
Beatink:https://beatink.zaiko.io/e/blackmidi2021

企画/制作/お問い合わせ(Beatink):https://www.beatink.com/

 


PROFILE: 荘子it(Dos Monos)
93年生まれ。2019年にファースト・アルバム『Dos City』で米LAのデスボム・アークからデビューしたヒップホップ・クルー、Dos Monosを率い、全曲のプロデュースとラップを担当。古今東西の音楽、哲学やサブカルチャーまで奔放なサンプリング・テクニックで現代のビート・ミュージックへ昇華したスタイルが特徴。2020年3~4月にかけて、ブラック・ミディとの共演も含むアメリカ・ツアーを予定していたが、コロナ禍の影響で中止に。その後、台湾のIT大臣オードリー・タンとのコラボレーション・ソング“Civil Rap Song ft. Audrey Tang”など、数作のシングルを発表し、7月24日にアリゾナのヒップホップ・クルー、インジュリー・リザーヴが参加したセカンド・アルバム『Dos Siki』をリリースした。

 

PROFILE: 崎山蒼志
2002年生まれ、静岡・浜松出身。2018年5月、インターネット番組の出演をきっかけに世に知られることになる。2021年1月27日にアルバム『find fuse in youth』でメジャー・デビュー。現在、自身の楽曲制作のほかにTVドラマや映画主題歌、CM楽曲を手がけるだけではなく、独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。