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My Morning Jacket “Love Love Love”


田中「髭の男たちが、最高のロック・ソングを引っ提げて帰ってきました。マイモジャことマイ・モーニング・ジャケットは、ケンタッキー州ルイヴィル出身の5人組。90年代から活動しているので、もはやヴェテランと言っていいバンドですね。勇猛さと繊細さを併せ持つサイケデリックなロック・サウンドはアメリカのみならず世界中のリスナーを魅了していて、一時期は〈宇宙最高のライブ・バンド〉なんて言われていました。2015年にリリースした『Waterfall』はグラミー賞の〈最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム〉にノミネートされています」

天野「マイモジャといえばライターの木津毅さん、という勝手なイメージ(笑)。木津さんがele-kingに書いた2012年の来日公演のレポートが素晴らしいので、この機会にぜひ読んでください。それはさておき、この新曲“Love Love Love”はかっこいいですよね」

田中「彼らは『Waterfall』での達成感が大きすぎて、その後何年も燃え尽き症候群のような状態だったみたいです。2019年にライブをやることで、バンドへの原動力を取り戻したんだそう。そのせいなのか、“Love Love Love”はエネルギーにあふれていますよね。メロディーもバンド・アンサンブルも、とにかく迷いなく進んでいく印象です」

天野「亮太さんはこの曲を聴いて〈ロックの未来を感じた〉とまで言っていましたが、そんなにかな~(笑)。10月22日には新作『My Morning Jacket』がリリースされます。セルフ・タイトルということは、バンドにとっても相当な自信作なのではないでしょうか。既発のシングル“Regularly Scheduled Programming”もすごくいいですし、〈ロックの未来〉に期待しましょう」

 

Tion Wayne feat. JAE5 & Davido “Who’s True”


天野「ティオン・ウェインがジェイ5とダヴィドをフィーチャーした“Who’s True”。いわゆるアフロスウィング/アフロバッシュメントの曲ですね」

田中「ティオン・ウェインは93年生まれ、英ロンドンのエドモントン出身のドリルMCです。デビューは2014年と、キャリアはそれなりに長いのですが、ダッチャヴェリ&ストームジーとの“I Dunno”(2020年)ラス・ミリオンズとの“Body”(2021年)がヒットして、最近になってその才能を広く知らしめたラッパーですね」

天野「そんなティオンが先週末の9月17日、ようやくリリースしたデビュー・アルバムが『Green With Envy』です。ドリル・ナンバーが中心ですが、半分近くはアフロスウィングや甘いR&Bっぽい曲で、その構成を含めてとにかく素晴らしいので、ぜひ聴いてください。まさにいまのUKのリアルなサウンドという感じで、ドリルもアフロビーツも好きな僕はぐっときました。ちなみに、ティオンの両親はナイジェリア人だそうで、彼はフェラ・クティを聴かされて育ったのだとか。だから、アフロスウィングやアフロビーツに親しみを覚えるのでしょうね。その出自を考えると、アルバムの構成も納得です」

田中「“Who’s True”は同作からのシングルで、フィーチャリングされているジェイ5とダヴィドは〈PSN〉に何度も登場していますよね。ジェイ5は、J・ハスのサウンドを支える東ロンドンのプロデューサー。いっぽうダヴィドは、ナイジェリア系アメリカ人のアフロビーツ界のスターです」

天野「ダヴィドはコーラスの歌を担当。ティオンのヴァースは、女の子を前に自分のリッチさを誇示して〈神よ、誰が真正か教えてくれ〉とドヤっていますね(笑)。アルバムをリリースしてますます知名度を上げたティオンの今後の活躍が楽しみです」

 

DJ Lag & Lady Du “Lucifer”

天野「最後は、南アフリカのプロデューサーであるDJラグを紹介します。彼が11月5日(金)にリリースするファースト・アルバム『Meeting With The King』からのリード・シングル“Lucufer”。レディ・ドゥとコラボした楽曲ですね」

田中「レディ・ドゥは、南アフリカの新しいベースライン・ハウスとして注目を集めているアマピアノ・シーンで活躍しているシンガー。DJラグはゴムの新世代として話題のアーティストなので、この“Lucifer”は〈ゴム × アマピアノ〉なんて形容されています

天野「この曲、アマピアノの要素はほとんどないんですけどな~。ダブステップやUKファンキーとゴムが融合していて、ゴムのネクスト・レヴェル、というのが第一印象です。飾り気のない打ちっぱなしのコンクリートみたいな武骨なビートがヤバくてかっこいいですし、後半のレイヴィーなシンセが迫力満点。〈ルシファー〉といえば悪魔の名前ですが、タイトルどおりのホラーなサウンドで、ちょっと怖いくらいでビビリます(笑)」