
「アメイジング・グレイス」に続いて豪華ボックスも登場し、映画「リスペクト」の日本公開もあって、かつてなくアレサが盛り上がっている……この好機に偉大なクイーン・オブ・ソウルの凄さと魅力の本質を改めて探ってみよう!!
ソウルの女王。アレサ・フランクリンがそう呼ばれるに至る過程をジェニファー・ハドソンの熱演で描いた映画「リスペクト」が日本公開される。本来は2020年に公開予定だったが、コロナ禍によって本国での公開も含め今年に延期となった。それに伴ってアレサの全キャリアを総括したライノ企画のCDボックス『Aretha』(未発表デモ、TVや式典でのパフォーマンス音源などを含む4枚組)も発売延期となったが、今夏、映画の全米公開に合わせて無事リリース。また、72年1月にLAワッツ近辺の教会で行ったゴスペル・コンサートの映像版となるドキュメンタリー映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」も、結果的に「リスペクト」に先駆ける形で日本公開となった(11月にBlu-ray/DVDもリリース)。同コンサートの実況盤として発表されてゴスペル・アルバムとしては最高のセールスを記録した『Amazing Grace』(72年)の(ほぼ)完全盤も日本でCD化され、没後3年目にしてアレサ祭りとでもいった様相を呈している。
60年もの音楽人生
アレサ・フランクリンのキャリアは本当に長い。生まれたのは1942年で、教会での初録音が14歳頃だから、50年代から2010年代まで約60年間、表舞台で歌い続けてきたことになる。むろん、その間には浮き沈みがあったし、晩年には体調不良で活動をセーヴしたこともあった。そんなアレサの人生は、「リスペクト」公開に先駆けてナショナル・ジオグラフィック・テレビで放送されたシンシア・エリヴォ主演の伝記ドラマ・シリーズ「ジーニアス:アレサ」(全8話)でも細密に描かれていた。彼女のほぼ全キャリアを満遍なく描いたドラマは、70年代中期のディスコ・ブームに戸惑い、同時期にデビューしたナタリー・コールに嫉妬するシーンまで再現。アトランティック初期に米南部マッスル・ショールズのミュージシャンと録音した一件だけが崇め奉られ、その時代こそがアレサだという定説を覆したという意味でも価値のあるドラマだ。先述のCDボックス『Aretha』も同ドラマのサウンドトラックになり得る内容で、92年に発売されたボックス『Queen Of Soul (The Atlantic Recordings)』以外では公式にCD化されていないアトランティック後期の楽曲も収録され、今後のリイシューに期待を抱かせる。UKシングル・ヴァージョンなどの収録は、監修が英国のソウル・ジャーナリスト、デヴィッド・ネイザンだからでもあるのだろう。
アレサのキャリアをレーベルで区切ると、ジャズやスタンダード曲を中心に歌ったコロムビア時代(61~66年)、ソウル・シンガーとして花開いたアトランティック時代(67~79年)、数々のスターたちとコラボを行ってポップ・フィールドに食い込んだアリスタ時代(80~2007年)の3期となる。もちろん、初期にJ-V-Bから出したゴスペル曲、晩年に興した自身のアレサズやRCAからの作品も見逃せないが、基本はその3期だ。そのうち、映画「リスペクト」で描かれるのは、主にコロムビア時代とアトランティック時代初期。なにしろキャリア60年超。時間に制約がある映画でアレサの全キャリアを描くのは不可能で、特定の時代にフォーカスしないと成立しない。そんな音楽人生の中でもっともドラマティックな場面といえば、60年代後半、コロムビアで燻っていたアレサがジェリー・ウェクスラーによってアトランティックに引き抜かれ、マッスル・ショールズの白人演奏家たちと化学反応を起こし、“I Never Loved A Man (The Way I Love You)”でソウル・シンガーとして生まれ変わる瞬間。これがすべてではないが、ここがひとつの山場となる。
映画では、フォレスト・ウィテカー演じる説教師の父CLフランクリンの束縛や夫テッド・ホワイトによる暴力に耐えながら、それらを糧にして歌手として成長していくアレサが描かれる。“Respect“や“Think”、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンが書いた“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”といったフェミニズム的に賛美される名曲も、背景にはそうした暴君の存在があったことが示される。なかでも、映画の表題になった“Respect”はアレサのシンガーとしての凄さや魅力が集約された一曲。オリジナルはオーティス・レディングだが、アレサが姉アーマと妹キャロリンを従えて女性目線で歌うことで女性へのリスペクトを求める歌となった。この解釈に触れたオーティスが〈あの娘に曲を盗られちゃったよ〉とボヤきながら感心したというエピソードは語り草となっているが、つまりアレサは他人の曲を自分の曲のようにしてしまうほどオリジナリティー溢れる表現力を持っていたのだ。

独創的な歌の解釈
アレサが歌えばアレサの曲になる。若き日に憧れのダイナ・ワシントンの前でダイナの曲を歌って本人から激しく嫉妬されたほど、アレサの歌は特別だった。10代で2度の出産を経験したことと結び付けるわけではないが、アレサの声には成人前から人生を達観したような雰囲気があった。押しと引きを使い分けた歌唱は〈ソウルフル〉のひと言では済ませられない滋味深さがあり、ふと息を吐いただけでアレサの世界を作る。アレサに先駆けて聖から俗へと転向したサム・クックの“You Send Me”も、サイモン&ガーファンクルの大ヒット“Bridge Over Troubled Water”も、アレサがゴスペル感覚を滲ませながら歌うとオリジナルを忘れてしまうほど(映画「リスペクト」のサウンドトラックにジェニファー・ハドソンの歌で収録されたキャロル・キング共作のオリジナル新曲“Here I Am”は、アレサ版の“Bridge Over Troubled Water”を意識して作られた気がする)。すでに評価が確立された曲に新しい解釈を加えてアレサの世界に導く独創的な歌唱は、新旧女性シンガーの名曲をカヴァーした最後のスタジオ録音アルバム『Sings The Great Diva Classics』(2014年)においても変わることなく、70歳を超えてもスケールの大きいアレサ節をキープしていたことに感服させられたものだ。
キング牧師と家族ぐるみで交流があり、公民権運動にも関わっていたアレサは、70年に黒人/女性解放運動家のアンジェラ・デイヴィスが不当逮捕されたことを受け、ニーナ・シモンの名唱で知られる“Young, Gifted And Black”をカヴァーした。もっとも、当初ジェリー・ウェクスラーはニーナの歌唱には敵わないだろうと、アレサがカヴァーすることに難色を示していた。だが、オルガン奏者としてスタジオに現れたビリー・プレストンが〈アレサならいけるよ〉と言ったことで録音を決行。結果、それは72年のアルバムに同名のタイトルが冠されるほど、アレサを代表する曲となる。
また、このカヴァーが名演たりえたのは、卓抜したヴォーカル表現に加え、彼女自身によるピアノ演奏の素晴らしさもあるだろう。ピアニストとしての腕前は早い段階で証明されていたが、ニュー・ソウルのムーヴメントにスムースに適応し、フィルモア・ウェストでのライヴを伝説にしたのも、チャーチの雰囲気を内包したリリカルな鍵盤捌きによるところが大きい。ゆえに、同じアトランティックからロバータ・フラックが登場した際、敵意を剥き出しにしたという話も頷ける。
他人の曲を独自に解釈する一方で、自作曲ではソングライティングの才能も発揮した。例えば“Think”。当時の夫テッドも共作者としてクレジットされているがアレサが単独で書いたと言ってよく、彼女がソウル・フード店の女将役で出演した映画「ブルース・ブラザーズ」(80年)でも強烈なインパクトを与えたように、人々の心を瞬時に掴む曲を作った。また、アレサ最高のファンクと言われ、安室奈美恵までもが歌った“Rock Steady”(71年)も自作だし、表題通り白昼夢に浸るようなメロウ・チューン“Day Dreaming”(72年)もテッドとの離婚後に一時恋仲にあったデニス・エドワーズ(テンプテーションズ)を思ってアレサがひとりで書いた曲だ。

女王が女王たる理由
そして、やはり切り離せないのがゴスペル。映画「リスペクト」で描かれる、デトロイトに暮らす教会育ちの姉妹たちが親に束縛されながらもシンガーとして成長していくストーリーは、クラーク・シスターズの伝記映画「First Ladies Of Gospel」にも通じている。アレサの場合はソウル・シンガーとして大成するが、クララ・ウォードに感化されてゴスペルを歌う少女時代に始まり、師であるジェイムス・クリーヴランドの助力を得て『Amazing Grace』(72年)として音盤化された教会コンサートでクライマックスを迎える「リスペクト」は、彼女の音楽人生において常にゴスペルが背景にあったという事実を改めて強く印象づける。今回は生前の本人からの指名でジェニファー・ハドソンがアレサを演じることになったが、むろんジェニファーも教会出身のシンガーだ。
そのジェニファーはオーディション番組「アメリカン・アイドル」出演時にアレサの“Baby I Love You”を歌ったほどのアレサ・フリーク。同様にアレサに影響を受けたシンガーはジェニファー以外にも数多く、似た声質や唱法ということではケリー・プライスやロージー・ゲインズの名前がたびたび挙げられるし、10代の頃に〈ヤング・アレサ〉と呼ばれたジャズミン・サリヴァンもそのひとりだろう。存在感や知名度の高さも含めると、チャカ・カーンやホイットニー・ヒューストンがアレサの志を受け継いだシンガーの筆頭格となりそうだ。そして、今回の映画でダイナ・ワシントン役を務めたメアリーJ・ブライジは、アレサさながらに〈クイーン〉の称号を与えられた数少ないひとり。時に痛みや悲しみが歌の原動力になるという意味でも両者は共通している。
アレサは2018年8月に76歳で亡くなった。だが、人生の後半戦にも伝説と呼ばれるようなパフォーマンスを披露し、ソウルの女王と同じ時代を生きているのだと実感させてくれた。98年の第40回グラミー賞授賞式にて急遽ルチアーノ・パヴァロッティの代役を務めてオペラの名曲を歌った姿。2009年にバラク・オバマの大統領就任式で愛国歌を歌った姿。そして、2015年のケネディ・センター名誉賞授賞式にて、受賞者となったキャロル・キングの前で“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”をピアノ弾き語りで披露した姿。CDボックスにも収録されたそれらのパフォーマンス音源などに触れれば、何ゆえにアレサが〈女王〉と呼ばれているのか、きっと理解できるに違いない。 *林 剛
アレサ・フランクリンの4枚組ボックスセット『Aretha』(Rhino)。1CD版もあるけど……
72年にリリースされたライヴ盤の完全版『Amazing Grace: The Complete Recordings』(Atlantic/Rhino/ワーナー)
2021年公開映画のDVD/BD「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」(ギャガ)
71年のライヴ盤の完全版『Live At Fillmore West: Don't Fight The Feeling』(Rhino/ワーナー)。11月24日に日本盤として再リイシューされます
映画「リスペクト」はサントラにも注目!
アカデミー賞の最優秀助演女優賞を獲得した「ドリームガールズ」(2006年)での名演に続き、ジェニファー・ハドソンの堂々たる存在感と風格 は〈ソウル映画の女王〉と言ってもいいかもしれない。彼女がアレサ・フランクリンを演じ、フォレスト・ウィテカーやマーロン・ウェイアンズ、メアリーJ・ブライジらが脇を固めた伝記映画「リスペクト」は、そんな熱狂を演出するライヴ・パフォーマンスという面でも話題の一作だが、劇中でジ ェニファーが披露する数々のアレサ名曲を集めたサウンドトラック『Respect』も日本公開に合わせて日本盤化!

アレサ本人のリクエストもあって選ばれたジェニファーの起用に関しては当然ヴォーカルの実力も込みでのキャスティングだったはずで、その期 待に応えるソウルフルな歌声はソウル・ミュージックが上昇を続けていた60〜70年代のフィーリングを彷彿とさせる。彼女が熱唱するのはもちろん “Respect”や“I Never Loved A Man(The Way I Loved You)”から“Think”“Spanish Harlem”など、そして“Amazing Grace”まで問答無用な17の名曲たち。それにプラスしてキャロル・キングも共作者に名を連ねるウィル・アイ・アム制作のオリジナル曲“Here I Am (Singing My Way Home)”も収録されているので、そちらもチェックしてみよう。 *出嶌孝次
ESSENTIALS
アレサの名盤、定番のごくごく一部!

ARETHA FRANKLIN 『Songs Of Faith: Aretha Gospel』 Geffen(1956)
アレサの初録音。56年、13~14歳の時に父CLのニュー・べセル・バプティスト教会で吹き込んだ曲をまとめた編集盤。72年の教会コンサートでも歌うゴスペル古典を含み、地元のJ-V-Bからシングルを出した“Never Grow Old”と“You Grow Closer”は後にチェッカーから再発もされる。クララ・ウォードに影響を受けた歌唱は若々しくも成熟しており、アレサ節はこの時点で完成されていた。 *林

ジャズやスタンダードを中心に歌っていたコロムビア時代の編集盤。〈クイーン〉になる前の模索期とされがちだが、ジョン・ハモンドやクライド・オーティスらの制作で名曲を独自解釈するアレサの表現力は見事だ。レイ・ブライアントの援護で歌ったゴスペル、ダイナ・ワシントンの追悼盤で披露したブルースでも本領発揮。アトランティック時代に再演する“Today I Sing The Blues”も収録。 *林

ARETHA FRANKLIN 『I Never Loved A Man The Way I Love You』 Atlantic(1967)
アトランティック移籍作にしてブレイク作で、映画でも描かれる数々の逸話に守られた問答無用のソウル・クラシック。“Respect”で賑々しく幕を開け、“A Change Is Gonna Come”で結ぶまでどの曲も名唱揃い。アレサ自作の“Baby, Baby, Baby”やダン・ペン作の“Do Right Woman, Do Right Man”も硬軟自在でいいが、やはり表題曲のシンプルな味わいがグッとくる。 *出嶌

〈ソウルの女王〉の称号を手に入れたアトランティックでの3作目。泥臭い南部フィーリングが全開となるドン・コヴェイ作の“Chain Of Fools”を筆頭に、インプレッションズやラスカルズの名曲カヴァーも披露するが、キング&ゴフィンが書いた“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”の名唱に心を掴まれる一枚だ。最後は妹キャロリン作のバラード“Ain't No Way”で止めを刺す。 *林

アリスタ時代に再演する“Think”で勢いよく始まる快作。キング牧師暗殺直後ゆえか、NY録音ながら生まれ故郷メンフィスのホーン隊も起用し、ドン・コヴェイやサム&デイヴのスタックス録音曲を取り上げている。カヴァーはレイ・チャールズやサム・クックの曲もあるが、エレガントな原曲の魅力を失わずアレサ節を聴かせるディオンヌ・ワーウィック“I Say A Little Prayer“での解釈が見事。 *林

ARETHA FRANKLIN 『This Girl’s In Love With You』 Atlantic(1970)
ライヴ盤やビッグバンド作品を挿んでマッスル・ショールズ勢と組み直した南部マナーの一枚。ビートルズなどのロック系カヴァーが目立つが、ジェニファー・ハドソンが「アメリカン・アイドル」審査時に歌ったボビー・ブランド“Share Your Love With Me”やジェイムス・カー“Dark End Of The Street”も歌い、ディープネスが漲る。アレサのピアノ名演が聴けるバラード“Call Me”もここに。 *林

レコーディング期間の前後で出産していたというが、知らなければそうとは思えないほど、ディキシー・フライヤーズの演奏を従え、この時代ならではのディープでブルージーなフィーリングを余裕で全開にする充実作。ベンE・キングのヒットをそれ以上のソウル・チャート首位に押し上げた“Don’t Play That Song”はもちろん、貫禄十分な自作の“Spirit In The Dark”もクールでかっこいい。 *出嶌

ARETHA FRANKLIN 『Young, Gifted And Black』 Atlantic(1972)
ニーナ・シモンで知られる黒人讃歌をカヴァーし、表題にも引用したニュー・ソウル路線のアルバム。演奏はコーネル・デュプリー、チャック・レイニー、バーナード・パーディらが中心で、ダニー・ハサウェイも鍵盤で参加。ダニーのエレピで始まるメロウな“Day Dreaming”や快活なファンク“Rock Steady”は本作のハイライトだ。デルフォニックスなどのフィリー・ソウル曲もカヴァー。 *林

ARETHA FRANKLIN 『Hey Now Hey (The Other Side Of The Sky)』 Atlantic(1973)
30代になって最初のアルバムは初めてクインシー・ジョーンズと組んで西海岸で録音した意欲作に。ポップ方面に切り込んでいく以前のクインシーだけにシネマティックなジャズやミュージカル寄りの意匠が目立ち、楽曲の振り幅は良くも悪くも多彩。キャロリン作の素晴らしいバラード“Angel”やボビー・ウーマックのカヴァー“That's The Way I Feel About Cha”は大きな聴きどころだ。 *出嶌

制作陣を以前のチームに戻してアトランティック時代でも屈指のヒットとなった、70年代を代表する一枚。スティーヴィー・ワンダー作の“Until You Come Back To Me (That’s What I’m Gonna Do)”を収め、“Ain’t Nothing Like The Real Thing”やレオン・ラッセル“A Song For You”の解釈も見事。ダニー・ハサウェイらNYの演奏家と都会的でスタイリッシュな作法を極めた傑作だ。 *出嶌

アリスタ移籍第1弾。旧知のアリフ・マーディンとチャック・ジャクソンが制作を分け合い、TOTOや元キングピンズ一派らが演奏した楽曲は、ドゥービー・ブラザーズで有名な“What A Fool Believes”のカヴァーも含めてAORやアーバン・ソウル的な感触が強い。壮大なバラード“United Together”はアレサ節の真骨頂。縁深いオーティス・レディング“Can’t Turn You Loose”にも挑んでいる。 *林

アリスタ時代屈指の名盤とされるルーサー・ヴァンドロスのプロデュース作第1弾。ダンサブルな表題曲を筆頭に、サム・ディーズ作のスロウ、リーヴァイ・スタッブスとの共演、アイズレー・ブラザーズ名曲のカヴァーなど、ルーサー軍団のマーカス・ミラー(ベース)やナット・アダレイJr(キーボード)、ヨギ・ホートン(ドラムス)らが奏でるしなやかなグルーヴに乗って泳ぐように歌うアレサが素晴らしい。 *林

ナラダ・マイケル・ウォルデンをメイン・プロデューサーに、活動領域をポップ・フィールドに広げたアルバム。大ヒットしたジャンプ・ナンバー“Freeway Of Love”を含み、コロムビア時代に吹き込んだ“Sweet Bitter Love”を自身の制作で再演もした。女性のエンパワーメントを謳ったユーリズミックスとの“Sisters Are Doin' It For Themselves”は80年代版の“Respect”とも言える。 *林

ARETHA FRANKLIN 『One Lord, One Faith, One Baptism』 Arista(1987)
前年にポップ・フィールドで特大の成功を収めた反動なのか、スピリットを調えて足場を見定めるかのように『Amazing Grace』以来の教会実況録音をセルフ・プロデュースで敢行したゴスペル・ライヴ盤。亡き父の教会を舞台に地元の演奏家たちを迎え、姉妹やメイヴィス・ステイプルズらも交えて厳かに放熱する。結果的にはアレサがリアルタイムで出した最後のライヴ盤にもなった。 *出嶌

一時は引退作とも言われたアリスタでの最終オリジナル。トロイ・テイラー、ゴードン・チェンバース、ジャム&ルイスらがオールドスクールな感触をモダンに再現した上質なR&Bを提供し、ロン・ローレンス制作の“Wonderful”はグラミー受賞曲となった。メアリーJ・ブライジがペンを交え、バック・コーラスでも参加したヒップホップ・ソウルも登場。還暦を迎えてもアレサは凄かった。 *林

80~00年代のコラボ録音のみを集めた編集盤で、アリスタ時代にフィールドを跨いで広がった華やかな交友録が一望できる便利な一枚。ジョージ・マイケルやホイットニー・ヒューストン、エルトン・ジョン、キース・リチャーズ、シナトラまで、オリジナル・アルバム未収録の曲も多めに楽しめる。ジョン・レジェンドとファンテイジアをそれぞれ迎えたエクスクルーシヴなデュエットも聴きもの。 *出嶌

ARETHA FRANKLIN 『Aretha Franklin Sings The Great Diva Classics』 RCA/ソニー(2014)
ラスト・アルバムはディーヴァたちの名曲を歌った企画盤。エタ・ジェイムスからアリシア・キーズまで新旧の人気曲が並び、アデル“Rolling In The Deep”は凄みを効かせた声で我が曲のように披露。チャカ・カーン“I’m Every Woman”に“Respect”を繋いだ女性讃歌メドレーもアレサらしい。ジャズ調でスキャットを交えて歌うプリンス作“Nothing Compares 2 U”も独創的だ。 林
リイシューでその掌を温めて……

まずは入手が遅くて紹介が遅れましたが……恒例のモータウン発掘コンピ最新弾『Good Good Feeling! More Motown Girls』(Ace)をもちろん大推薦。今回は女性アーティスト編で、例によって先に配信などで蔵出しされてたものもありつつほぼすべてが未発表だった音源です。謎アクトの解説など資料部分も音源以上(?)に価値がありますよ。

STACY LATTISAW 『The Cotillion Years 1979-1985』 Robinsongs(2021)
続いては少女シンガーからソウルフルに成長しつつ10年ほどで世俗シーンを去ったステイシー・ラティソウの7タイトルを集大成した『The Cotillion Years 1979-1985』(Robinsongs)を推薦。大ネタも含むナラダ・マイケル・ウォルデンとのポップなダンス・ヒット群やジョニー・ギルとのデュエット作は著名でしょうが、12歳で録音したデビュー作『Young And In Love』(79年)なんかは急逝したヴァン・マッコイの最後のプロデュース作としても改めて注目かも。ヴァン・マッコイ~ナラダという仕事歴もアレサと重なる気がしなくもないです。

で、最後は大発掘となるインディアナポリスのファンク・バンド、エボニー・リズム・ファンク・キャンペーンの未発表作品集『69 Cents』(Pヴァイン)。前身にあたるエボニー・リズム・バンドはランプに残した音源をかつてナウ・アゲインが復刻しましたが、74~75年に録音されていたこちらも相当エネルギッシュです! *出嶌孝次