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田之上剛(TOWER VINYL SHIBUYA)

DURAND JONES & THE INDICATIONS 『Private Space』 Dead Oceans/Colemine(2021)

〈今年の1枚〉や〈マイベストレコード〉のような企画で執筆を依頼されると家のレコード棚を見直す。主に中古盤の購入が多いのだが、改めて見直すと新作もこんなに買った?と驚くとともにあまり聴いていないアルバムを見て毎年反省することになる。今年もそんな大量のレコードの中からセレクトしたが、あまり迷わずドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズのサードアルバム『Private Space』を選盤できた。

過去2作品ではファンク、ブルース、ニューソウルを取り込んだヴィンテージソウルバンドとして人気を博してきたが、今作ではモダンソウル色が強くなり今まで以上にグルーヴ感溢れる最高に気持ちいい作品である。

アルバム1曲目“Love Will Work It Out”はメロウでスウィートな楽曲だが、ここから何か始まる期待感を抱かせる一曲。そこからの流れで続くモダンディスコ“Witchoo”で完全に打ちのめされた記憶が蘇ってきました。その後も往年のソウルオマージュなどもありアルバムトータルで楽しめるソウルファンへおススメできる1枚。

バンドメンバーでドラマー兼、リードシンガーのアーロン・フレイザーのソロ作『Introducing...』も今年発売されてますのでこちらもおススメです。

 

塩谷邦夫(TOWER VINYL SHIBUYA)

ANDERS & PONCIA 『The Anders & Poncia Album(限定盤)』 Hanky Panky(2021)

ポップスファンにとってアンダース&ポンシアという言葉の響きはもはや魔法に近いものがありますよね。フィル・スペクター門下時代の経験をいかしたソングライターチーム期のヒット曲群でお馴染み、ピーター・アンダースとヴィニ・ポンシアによるコンビの唯一作が正規復刻したんですよ、2021年春に! 提供したヒット曲をまとめて聴くことも最近では残念ながら手軽にできないようだけれども、この大・大・大名盤がまさか復刻リリースされるとは。海外のレーベルから送られてくるインフォメーションを見てこれほどドキドキしたことは長いバイヤー歴の中でも過去には多分なかった。本当に発売されるの? 日本に入ってくるのかな?と悶々とした日々を送り……そして当初の発売日より遅れに遅れて、遂に入荷したときの喜びったらなかったですよ、もう。

 

小嶋千夏(タワーレコード新宿店VINYL担当)

LE REN 『Leftovers』 Secretly Canadian(2021)

いくつか候補があったのですが、図らずも毎年モノクロジャケを選んでいたのでこちらにしました! 昨年のEPも素晴らしかったモントリオールのシンガーソングライター、ル・レンのファーストアルバムです。リリースは安心と信頼のシークレットリー・カナディアンから! ヴァシュティ・バニヤンやカレン・ダルトンの系譜を継ぐ、素朴な美しさと温かさを湛えた正統派フォークで、澄み切った歌声が聴き流していて最高に心地よいんです。身近な人々への思いを寄せた叙情的な歌詞には、日頃忘れそうになる穏やかな気持ち、優しい気持ちを呼び覚ます浄化作用もある気がしますね。離れて暮らす母親への愛を綴った“Dyan”の一節、〈太陽の中を覗いたら、きっと彼女がそこにいるのだわ〉なんて言い回し、素敵すぎるでしょ……! 自分も今後曲を書くことがあったなら、親へのラブレターにしようと思いました。音楽っていいな。

 

中本颯一郎(タワーレコード新宿店10F)

SILVER SYNTHETIC 『Silver Synthetic』 Third Man(2021)

米国はニューオリンズ出身のガレージロックバンド=シルヴァー・シンセティックのデビューアルバム。サードマン・レコードからのリリースということでジャック・ホワイトのお墨付きです。ニューオリンズといっても泥臭さ、粘っこさは全く無く、例えるならCSNがガレージバンド化したようなカンジ。美しい哀愁のメロディ、ゆる~く軽やかにロックするヴィンテージサウンドが心地よいトリップへと誘ってくれます。シスコのヒッピーの生き残りみたいな見た目も相まって、現行バンドにも関わらずレコードに針を落とすと心に浮かぶのは60年代後半〈あの夏〉。ビッグ・リボウスキよろしく世の流れに疲れた男のサウンドトラック、ってなことで2021年愛聴しておりました。