4組がおすすめするUKのアーティスト
――最後に、いま、みなさんがおすすめするUKのアーティストを訊きたいです。たとえば、ウェット・レッグ(Wet Leg)は、まさに注目株だと思うのですが。
Matsuhiro「僕は、ウー・ルー(Wu-Lu)に注目しています。ダブやグランジ、ヒップホップなどを取り入れていて、いまのサウス・ロンドンを表すボーダーレスなアーティストなんですよね。でも、それを自然な形でアウトプットしていて、〈自分がやりたいことをやるだけ〉という姿勢が音楽から伝わってくるのが魅力的だと思います。
あと、最近はdvrが好きです。彼はまだ17歳なのですが、XLから『dirty tapes EP』をリリースしたばかりで、今後どうなるのかなって期待しています」
Kajihara「僕はいま、ORMでインタビューしたブルー・ベンディ(Blue Bendy)がいちばん好きですね」
村田「最高だよね!」
Kajihara「ですよね! 『Loud And Quiet』が彼らを見開きで取り上げていて、イギリスでの注目度も高いんです。
音楽性は、かなり異質だと思います。ボーカルのアーサー・ノーラン(Arthur Nolan)の歌い方がキュアーのロバート・スミスっぽい粘り気のある感じなのも良くて、新しさのなかに過去の音楽をリバイバルさせた要素があるのはすごくいいなと思いました。
あと、ポピー・アジューダ(Poppy Ajudha)というサウス・ロンドンのシンガーソングライターがおすすめですね。以前、トム・ミッシュがフィーチャーしていて、当時は気にかけていなかったのですが、徐々に注目されはじめています」
――“London’s Burning”というシングルが最高でしたね。コンピレーションアルバム『Blue Note Re:imagined』(2020年)にも参加していました。
Kajihara「そうですね。彼女は、4月22日(金)にアルバム『The Power In Us』を出します。ジェンダーや階級社会に対する意見をはっきりと打ち出すスタンスのアーティストって、フォンテインズD.C.(Fontaines D.C.)やシェイムのようにバンドではけっこういたのですが、彼女のようなソロアーティストではあまりいなかった印象です。そこが清々しいのと、音楽性もUKに囚われないUSからの影響も強い感じで、面白いですね」
Fujita「僕は、フォーリー・グループ(Folly Group)に注目しています。『So Young』が去年立ち上げたレーベルからデビューしたバンドで、スクイッド(Squid)のようにドラマーが歌うんですよね。次にきそうなアーティストのなかでも頭一つ抜けている印象で、現地の人たちの反応を見ても、今年は目が離せないなと思います。
もう一組はPVAで、BC,NRが所属しているニンジャ・チューン傘下のビッグ・ダダのバンドです。2020年のEP『Toner』が、ものすごく良くて」
――あれはめちゃくちゃ良かった……。
Fujita「ですよね。ポップでありながらもスロッピング・グリッスルのようなインダストリアル感があって、サウス・ロンドン・シーンのなかでもテクノの要素がある3人組というのが他にない魅力なので、今後が楽しみですね」
――Casanovaさんは?
Casanova「僕はアグリー(Ugly)というバンドが大好きなんです。BC,NRのチャーリーがドラムを叩いていたバンドですね。どうやらメンバーは、BC,NRのルイス・エヴァンズ(Lewis Evans)とメイ・カーショウ(May Kershaw)と同じ学校に通っていたようです。ボーカルのサミュエル・ゴーター(Samuel Goater)は、このシーンに多いしゃべるように歌うスタイル(シュプレヒゲザング)じゃなくて、リバティーンズのピート・ドハーティのような、ちょっとロマンがかった言葉数多めの歌詞を歌い上げるようなスタイルなんです。2020、2021年はコロナ禍で活動が止まっていたようで心配していたのですが、最近レコーディングを始めたようで、今年は期待しています。
あとは、スクイッドの“Narrator”(2021年)に参加していたマーサ・スカイ・マーフィ(Martha Skye Murphy)。彼女はここまでに挙げたバンドと同じシーンに属していると思うんですけど、方向性や音楽性がぜんぜんちがう。すごく映像的で美しい音楽を作っているんですよね。そろそろアルバムを出さないかなと、期待しています」
――マーサ・スカイ・マーフィの音楽は実験音楽、現代音楽やポストクラシカルに近くて、不思議な才能ですよね。村田さんは?
村田「まず挙げたいのは、カッセルズ(Cassels)です。オックスフォード出身の2人組で、いまはロンドンを拠点に活動しています。新作『A Gut Feeling』から最初にリリースされた先行曲“Mr Henderson Coughs”は、僕の去年のベストソングの一つなんです。ブラック・ミディやスクイッドのように1曲のなかでの曲調の変化が大きくて、ギーラ・バンド(Gilla Band)のような気持ち良い轟音ノイズを出すので、本当にかっこいいバンドです。しかも、それを2人だけでやっているのもすごい。
あとは、マンチェスターのマンディ・インディアナ(Mandy, Indiana)を挙げたいですね。ファイア・トーク(Fire Talk)というNYのレーベルと契約しているのも、サウス・ロンドンのバンドとはちょっとちがっていて面白い。
それと、ハイスクール(HighSchool)やグーン・サックス(The Goon Sax)などのオーストラリア勢のバンドがロンドンに去年移住したようなので、彼らがロンドンのシーンにどう溶け込んでいくのかにも期待しています」
佐藤「去年、マンディ・インディアナのライブをウインドミルで観ましたよ」
村田「お~!」
佐藤「たぶん、ロンドンで初のショーだったんじゃないかな。ロンドンのバンドとは毛色がちがっていたので、NYのレーベルと契約していると聞いて納得しました」
――ブライトンのポーリッジ・レイディオ(Porridge Radio)もアメリカのシークレットリー・カナディアン(Secretly Canadian)と契約していて、UKからUSへという展開は面白いですよね。
佐藤「シェイムが所属しているのもデッド・オーシャンズ(Dead Oceans)ですしね」
――では、最後に佐藤さんのおすすめは?
佐藤「僕は普段ブラックミュージック寄りの音楽を聴くことが多いので、その意味でも先ほど名前が挙がったウー・ルーには、ワープと契約したばかりということもあり注目しています。
彼はクウェイク・ベース(Kwake Bass)と〈The Room〉という小さなスタジオを構えていて、そこを中心にミカ・レヴィ、ティルザ、コービー・セイ(Coby Sey)など多くの音楽家が互いに共演してシーンを形成している。クウェイク・ベースはコン&クウェイク(CoN & KwAkE)名義での新作をシャバカのネイティヴ・レベル(Native Rebel)から発売予定で、ジャズシーンとの関わりも深い重要人物です。
あと、ウー・ルーと曲を出しているレックス・アモー(Lex Amor)という、ラップと歌の中間のようなボーカルスタイルのアーティストも今後が楽しみです。
あとは、ニルファー・ヤンヤ(Nilüfer Yanya)の周辺。彼女の新作『PAINLESS』に参加しているウィルマ・アーチャー(Wilma Archer)は風変わりなブラックミュージックを得意とする奇才プロデューサーで、ウィルマ・ヴリトラ(Wilma Vritra)というデュオ名義での新作も近々リリース予定です。ニルファーは、UKジャズのシーンともロックのシーンとも絶妙な距離感を保っているように思います」
Casanova「色々な方面で名前を聞くのですが、どのシーンにも繋がっていて、どこにも属していない、中間的な立ち位置が面白いですよね」
――というわけで、このメンバーの対談は、話が尽きませんが……(笑)。本日はここまでにしましょう。ありがとうございました! またぜひ、UKの音楽についてお話ししましょう。
RELEASE INFORMATION

BLACK COUNTRY, NEW ROAD 『Ants From Up There』 Ninja Tune/BEAT(2022)
リリース日:2022年2月4日
■国内盤CD
品番:BRC685
価格:2,200円(税込)
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/歌詞対訳・解説書封入
■デラックス輸入盤2CD
品番:ZENCD278X
価格:2,790円(税込)
■輸入盤CD
品番:ZENCD278
価格:2,490円(税込)
■日本限定カラー盤2LP(帯付き/クリスタルクリアローズヴァイナル)
品番:ZEN278JP
価格:5,190円(税込)
■デラックス輸入盤4LP(ブラックヴァイナル)
品番:ZEN278BX
価格:7,090円(税込)
■限定輸入盤2LP(ブルーマーブルヴァイナル)
品番:ZEN278X
価格:4,690円(税込)
■輸入盤2LP(ブラックヴァイナル)
品番:ZEN278
価格:4,190円(税込)
■輸入盤カセット
品番:ZENCAS278
価格:2,490円(税込)
TRACKLISTING
CD(BRC685)
1. Intro
2. Chaos Space Marine
3. Concorde
4. Bread Song
5. Good Will Hunting
6. Haldern
7. Mark’s Theme
8. The Place Where He Inserted the Blade
9. Snow Globes
10. Basketball Shoes
11. Haldern (Piano Version) [Bonus Track]
Deluxe CD(ZENCD278X)
Disc 1
1. Intro
2. Chaos Space Marine
3. Concorde
4. Bread Song
5. Good Will Hunting
6. Haldern
7. Mark’s Theme
8. The Place Where He Inserted the Blade
9. Snow Globes
10. Basketball Shoes
Disc 2
1. Mark’s Theme (Live From The Queen Elizabeth Hall)
2. Instrumental (Live From The Queen Elizabeth Hall)
3. Athens, France (Live From The Queen Elizabeth Hall)
4. Science Fair (Live From The Queen Elizabeth Hall)
5. Sunglasses (Live From The Queen Elizabeth Hall)
6. Track X (Live From The Queen Elizabeth Hall)
7. Opus (Live From The Queen Elizabeth Hall)
8. Bread Song (Live From The Queen Elizabeth Hall)
9. Basketball Shoes (Live From The Queen Elizabeth Hall)
2LP
Side A
A1. Intro
A2. Chaos Space Marine
A3. Concorde
A4. Bread Song
Side B
B1. Good Will Hunting
B2. Haldern
B3. Mark’s Theme
Side C
C1. The Place Where He Inserted the Blade
C2. Snow Globes
Side D
D1. Basketball Shoes
Deluxe 4LP
Ants From Up There
Side A
A1. Intro
A2. Chaos Space Marine
A3. Concorde
A4. Bread Song
Side B
B1. Good Will Hunting
B2. Haldern
B3. Mark’s Theme
Side C
C1. The Place Where He Inserted the Blade
C2. Snow Globes
Side D
D1. Basketball Shoes
Live From The Queen Elizabeth Hall
Side A
A1. Mark’s Theme (Live From The Queen Elizabeth Hall)
A2. Instrumental (Live From The Queen Elizabeth Hall)
A3. Athens France (Live From The Queen Elizabeth Hall)
Side B
B1. Science Fair (Live From The Queen Elizabeth Hall)
B2. Sunglasses (Live From The Queen Elizabeth Hall)
Side C
C1. Track X (Live From The Queen Elizabeth Hall)
C2. Opus (Live From The Queen Elizabeth Hall)
C3. Bread Song (Live From The Queen Elizabeth Hall)
Side D
D1. Basketball Shoes (Live From The Queen Elizabeth Hall)



