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ライナー執筆の縁で訪れたサプライズ​

初めて大野さんに関わる長い文章を書いたのは、2005年に紙ジャケCDで再発された笠井紀美子と大野雄二トリオのジャズアルバム『ジャストフレンズ 笠井紀美子コンサート』(70年)の解説でした。しかし思い入れの強い大野サウンドを語れる嬉しさからか、自我丸出しのじつに稚拙な内容になってしまったのです(もう読み返したくない)。

笠井紀美子 『ジャスト・フレンズ 笠井紀美子コンサート』 London(1970)

忸怩たる思いを抱えていた僕に再度チャンスが訪れたのは2008年。大野さんが全編のアレンジを担当した、しばたはつみ&ハングオーバーのアルバム『ラヴ・レターズ・ストレート・フロム・アワ・ハーツ』(77年)の紙ジャケCDのライナーノーツ仕事が舞い込んだのです。

しばたはつみ 『ラヴ・レターズ・ストレート・フロム・アワ・ハーツ』 コロムビア(1977)

ここでは前回の反省を大いに踏まえて、私情を抑えめにしつつ知りうる限りのデータと情報をてんこ盛りにする構成にしてみました。文章的にはともかく、少なくとも〈リベンジは果たした〉という実感を持てる程度の内容には仕上がったと思います。

それからしばらく経ったある日、会社(タワーレコード)の後輩から「大野さんのブログに北爪さんの名前が出てきます!」という驚きの報告がありました。確認してみると、どうやら大野さんがしばたはつみのライナーを読んでくれたようで、「北爪さんて人は昔の僕のことを僕よりも知っている。調べてみたらタワレコ渋谷のスタッフらしい」というようなことが書かれていたのです。これは光栄にも余りあるお言葉だったのですが、間もなくしてさらに仰天するようなことが起こりました。

「大野雄二さんが北爪さんに会いに来られてます!」、仕事場で内線電話を受けた僕は思わずのけぞりそうになりました。大野さんがまれに買い物で来店するという噂は聞いていたものの、まさか自分を名指しで来られるとは。さすがに緊張しながら対面すると、大野さんは非常に気さくかつ気取りのない方で、10分ほどの立ち話ながらしばたはつみや「犬神家の一族」などについて楽しく語ってくれました。また、僕が持っていなかった某レコードの音源を後日わざわざCD-Rに焼いて送って頂いたことも忘れられません。

もっとも、その後はライブ会場で何度かご挨拶した以外はお会いすることもなく、レビューやライナーを書く機会もないまま時は過ぎていきました。

 

ファン冥利に尽きるメモリアルイヤーの仕事

再び大野ワークスと仕事で向き合うことになったのは タワー退社後の2021年。「リスアニ!」というアニソン専門誌から、〈アニソン視点から紐解く大野雄二サウンド〉というお題で6ページ分の原稿を書いて欲しいという依頼があったのです。個人的にも興味深いテーマだったうえに、フリーになってからの最初の大きな仕事だった(つまりそれまでとてもヒマだった)ので二つ返事で引き受けることにしました。

『リスアニ! Vol.46』 ソニー・ミュージックソリューションズ(2021)

大野さんの代名詞でもある「ルパン三世」の音楽に言及した読み物は数多くありますが、アニメ仕事全般を俯瞰した記事は読んだ記憶がありません。となればこれが〈決定版〉になるくらいのつもりで周到な下調べのもと(ヒマゆえに)、相当な情報量を詰め込んだ原稿を書き上げました。その甲斐もあってかレーベルサイドからも好評を頂いたうえに、大野さんから編集者宛に〈北爪くんに(原稿を)頼んでくれてありがとう〉というメッセージが届いたと聞いて、ようやく恩返しができたと感涙にむせぶ自分がいたのでした。

2021年は大野さんの生誕80年と「ルパン三世」のアニメ化50周年が重なったメモリアルイヤーだったことに加え、10月から「ルパン三世 PART6」の放送もスタートしたことで、メディア露出や関連ニュースが例年になく多い年でもありました。それゆえか「リスアニ!」仕事から間もなくして、映画.comで大野さんのインタビュー記事を書く機会に恵まれたのです。お会いするのは10年ぶりくらいだったと思いますが、もちろん対面で取材をするのは初めてだったので、ここぞとばかりに聞きたかった話を伺いまくるニッチなインタビューになったのでした。

それ以降も翌2022年1月に行われた〈映画「ルパン三世 カリオストロの城」シネマ・コンサート〉の公式レポートの担当や、そのコンサートがDVD化した際の特典映像で収録されたスペシャルインタビューの聴き手に指名して頂いたことで、立て続けに仕事をご一緒することができたのです。

大野雄二 『大野雄二ベスト・ヒット・ライブ ~ルパンミュージックの原点~』 バップ(2022)

末席ながら記念すべきメモリアルイヤーに関われたことは、長年のファン冥利に尽きる経験でもありました。

改めて、大野雄二さん、83歳の誕生日おめでとうございます!

 

長いイントロダクションになってしまいましたが、次回でいよいよ本題に入りたいと思います。仮タイトルは〈大野雄二ワークス:レアCD音源編〉。どうぞよろしくお願いいたします。

 


PROFILE: 北爪啓之
72年生まれ。99年にタワーレコード入社、2020年に退社するまで洋楽バイヤーとして、主にリイシューやはじっこの方のロックを担当。2016年、渋谷店内にオープンしたショップインショップ〈パイドパイパーハウス〉の立ち上げ時から運営スタッフとして従事。またbounce誌ではレビュー執筆のほか、〈ロック!年の差なんて〉〈っくおん!〉などの長期連載に携わった。現在は地元の群馬と東京を行ったり来たりしつつ、音楽ライターとして活動している。NHKラジオ第一「ふんわり」木曜日の構成スタッフ。