
ポリフィアら超絶技巧化したテクニカルギターシーン
――ライブでも演奏してるんですか? 全部物理的に弾けるの?
「やってます! 全部弾いてるので、〈どんだけ弾くの!?〉みたいな(笑)。他のギタリストがいる時は分けて弾くけど、自分一人の時はひたすら弾いてるので、指が摩擦で痛くなりますね(笑)。ずっと速弾きしてるみたいな感じで」
――私、この前FOX_FESTに行った時にポリフィアを見て、演奏はめっちゃ上手だけど、ギタリストはお客さんを煽るためにステージ上で動くより、わりと長い時間指板を見てるなって思って。インストバンドで大きな会場を盛り上げるとか、一体感を作るのって難しそうだけど、ずっと指板を見ながらでも不思議と盛り上がってたんです。“BRIGHTNESS”ぐらいの物量だったら、ライブで指板を見なくても弾ける感じなの?
「このぐらいだったら大丈夫です。ポリフィアはやっぱり難しすぎるっていうか、技術的に弾いてること自体がすごいなっていうレベルで。もちろん曲とかギターが良いのは前提で、ビジュアルもスタイリッシュだし、色んなプラスアルファがあるところが素晴らしいなって思って見てますね」
――最近のギターインストって、チョン(CHON)にしてもアニマルズ・アズ・リーダーズにしても、耳に入ってくるものはわりと難しいものが多いよね。格好良いし好きだけど、難しい(笑)。
「そうなんですよね。ポリフィアは特殊な盛り上がり方をしてる気がします。Twitter(X)で〈ティモシー・シャラメがギター弾いてるみたい〉っていう投稿を見て」
――私が書いたやつよ、それ(笑)。
「そうだ、西山さんだ(笑)。ほんとそうだなって思った」
シャラメみたいなのがギター激ウマなの、反則よ
— Hitomi Nishiyama 西山瞳 (@hitominishiyama) May 25, 2024
――あんなふわふわ感のあるギターヒーロー、いなかったよね。ビジュアル的にもスクリーンに映し出される効果は大きく感じたし、優しく微笑んでくれるギターヒーローなんて、いなかったもん(笑)。
「あれだけギターが上手くて難しいのを弾けて、さらにあれだけ格好良かったら、そりゃそうだよねって思います。イングヴェイとか、もっと横暴な感じがしますからね(笑)。ご本人がどういう人物かは知らないんですけど、イメージ的にはギターの音がひたすら大きくて。ギタリストには〈王様〉みたいな人が結構多いイメージがありますね」
K-POPのトラックでギターを弾いたら?
――では、EPの中で一番新しい曲“THE EMPRESS”について。エキゾチックな感じですが、メロディがやっぱり歌メロっぽいのが面白いなと思いました。こういう75くらいのBPMのものって、今まで参加していたバンドでは案外なかったのでは?
「この曲はシバサキユウキさんという作編曲家との共作です。シバサキさんは元々ずっとK-POPっぽいトラックを作られている方なんですが、K-POPのトラックの上でギターインストをやってみたくて、〈一旦ギターインストっていうことを忘れて作って下さい〉ってオーダーを出したんですよ。
最近通い出したピラティスの教室で、TWICEとか、男女関係なくK-POPグループの曲がずっとかかってるんです。それで、DREAMCATHCERっていうグループが、本当かはわからないけどBABYMETALを参考にしてるらしくて、ハードロックっぽいギターが入ってる曲が多いので好きになって聴くようになったんですね。それと、K-POPの人ってデビューまでが無茶苦茶大変じゃないですか。だから、歌のクオリティがすごく高いんですよね。
K-POPを聴いていると、とても自由にトラックを作っているような感じがするので、〈その中でギターインストをやったらどうなるんだろう?〉っていうのが、今回の実験です。シバサキさんのトラックの上に自分でメロディを考えて乗せて、シバサキさんと相談しながら作っていった感じですね」
――ギターソロ部分は、華やかだよね。ソロとしても面白かったです。
「ギターシンセを入れたりとか、変わったことはちょこちょこやってますね」
――クロマチックスケール的なフレーズも聞こえるけど、ハーモニックマイナーとか、クロマチックとか、そういう基礎のスケール練習みたいなものってしているんですか? そちらのジャンルのプレイヤーはどうなんだろうっていう興味があって。ジャズは自分の思考がすぐ指先に反映されるように回路を繋げる練習をしているけど、メタル系の人はまた全然違うじゃないですか。難しそうなフレーズを聴いた時に、〈この人はどういう練習をしているのかな?〉と、よく思うんです。
「ハーモニックマイナーは意識して練習していないですけど、イングヴェイとかを弾くと強制的に練習になるところはありますね(笑)。“Far Beyond The Sun”とか、ひたすらそれを弾かなきゃいけないっていうのはあるので。クロマチックは指練習でやることがあるけど、大変ですね。地味な筋トレみたいな感じで(笑)。なので、ちゃんと一つ一つ押して弾いていく、みたいな練習はします。
最初の頃は独学だったので、そういう練習を何もやらず、好きなものをずっと弾いていました。プロになってから少し人に教えてもらったことはあって、やっぱりこういう練習って必要なんだって思いましたね」
――ジャンルは違うけれど同じミュージシャンとして思うのが、自分の活動の幅が広がって表に出ていけば出ていくほど色んなことをしないといけなくなって、練習時間が減っていくじゃないですか。そのあたりと折り合いをつけるのって、より商業規模の大きいロックだったら大変じゃないかなって思うんです。そういう中でインストに挑戦するって、特に大変なことだったんじゃないかと思ったのですが。
「そうですね。でもやっぱり、やってないことをやるっていうのは大事かなと思って。その中で大きかったのが、西山さんのNHORHMのセッションに参加させて頂いたことや、實成くんのプロジェクトなんです。インプロをやるっていうのがハードロックやメタル界隈ではまずないんですよ。
ギターは物すごく上手いんだけどインプロが全くできない人がとても多い、という話は聞きます。〈自由に弾いていいですよ〉が苦手なんですね。決まった難しいフレーズを丁寧に弾くことはできても、その場で〈Eマイナーで一発、ギターソロをどうぞ〉って言われても全然弾けないとか、メタルのプレイヤーはそういうところが特殊だと思います。なので、インプロを含むセッションを沢山経験させてもらったことが、積み重ねになっていますね」