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(左から)橋爪亮督、鈴木孝紀、maiko、西山瞳、西嶋徹、則武諒

ブルーノートと機能和声の衝突

――『Dot』に続き、今回の資料にも〈以前より、機能和声に息苦しさを感じることが多々あり、ピアノ以外のジャズ楽器の自由さと曖昧さに憧れがあった〉と書かれていました。それは、『Echo』の〈(曲を)並べることで浮かび上がる、豊かな物語的な世界がある〉というコンセプトと逆の方向性にも見えます。それらが同居し両立してもいるのが醍醐味ですが、相剋や衝突は意識されましたか。

「はい。どの曲でも、大きな編成で生じる(パート間の)ぶつかりみたいなことはやっているんですが、それが結果的にブルース的なぶつかりになることがわかりました。ブルーノートと機能和声が同居するぶつかりが、即興的でなく計画的に起こるのが面白いと思いましたね」

――自分が『Echo』のほうが好きなのも、ブルース的な成分が多めに感じられるのが大きい気がします。そして、そこにヨーロッパ的なコード感や空気感が加わることで、独特のバランスが生まれているのが魅力的です。ところで、『Echo』と『Dot』の収録曲は、セッションの時点ではどう並べるか、そもそも2枚に分けるかは決まっていなかったんですよね。なので、メタルを意識した『Dot』の制作姿勢が、そういう感じでもない仕上がりになった『Echo』にも流れ込んでいるのではと思うのですが。

「はい。『Echo』はギター的な考え方が多くなっていると思います。1曲め“Echo”のサビなどは、ギターで弾いたら当たり前だけど、大きめの編成だとぶつかって聞こえるんです。コードはメジャーだけどメロディはマイナーみたいな響きをしてますね。2曲め“West World”も、ギターがスライドしていくイメージでハーモニーをつけています。全曲、そんな感じだったかな」

 

ジョン・レノンの低温な歌をジャズコンポジションに

――それでは、各曲について伺いたいと思います。1曲めの“Echo”は〈ロックやブルースギターのソロでは当たり前にすることを、ピアノで真正面から弾いてみた〉とのことですが、これは以前から取り組まれてきたことでしょうか。

「やったことはなかったですね。最初はメンバーはびっくりしてました。

あと、この曲は(このメンバー以外での)セッションでも、ギタリストに弾いてもらっていたんですよ。そしたらみんな、ペンタトニックスケールで乗りきる演奏ばかりするから、やっぱりそうなるんだというのが面白かったです(笑)。そういうところからもフィードバックをもらいました。

〈Echo〉というタイトルはメロディの音形が由来です。同じモチーフが続いていくからですね」

――こういったコンセプトは、メンバーにもお伝えしていたのでしょうか。

「トリオの面々には話したんですけど、上物の人たちには言ってないと思います」

――楽器的に、上物のほうがブルースと距離があるように思います。

「そうですね。ただ、上物の楽譜は、ブルース的な音に関与しないように書いているので。結果的に、アンサンブルというより私(ピアノ)がしっかりしないといけない曲になってしまいました」

――“West World”は、〈仕事でジョン・レノンを沢山聞かないといけなかった時期があり、その頃に「ジョン・レノンがぼそぼそとギターで弾き語りしているような曲にしよう」と思いながら作曲〉されたと。

「ピアノのレッスンのためですね。生徒には演奏を習いに来る人だけでなく、何かの曲をジャズアレンジして弾きたいという人もいるんです。それで、ある人がジョン・レノンの曲をやりたいと言っていて。アルバム『Imagine』を繰り返し聴いていました。

私が弾くわけではなかったのでそんなに分析していないのですが、あの歌のテンションの低さというか、ぼそぼそした感じがいいなと思ったんです。厭世的というほどでもないけど、独特の温度感がある。それが気持ちいいなと思いました。声を張り上げて美しいメロディを歌うのではない感じを反映できたらと考えていましたね」

――そういう加減を大きな編成でやるにあたって、気をつけたことはありましたか。

「鼻歌みたいな感じで書いたのもあって、ライブではまずトリオで演奏し、その後に管弦込みの編成でやるようになりました。管弦に関しては、普通のビッグバンドやホーンアレンジみたいな感じではありますが、あくまでさりげなく足しています。

この曲は、セッション2日めの寝起き、みんなまだ体が起きてないときに録ってるんです。それが良かったので一発OKにしました」