
綺麗な正解ではなく、面白いと思える曲を求めて
――曲を作る、ということはいつ頃からやってたんですか?
「たぶん22、23歳の時なんですけど、もともと京都のライブハウスで〈CDを作りませんか〉って言ってくださったところがあって、そこではエンリコ・ピエラヌンツィの曲ばっかりやってたんですよ。それでカバーばっかりでCDを作るのもつまらないかな、っていう気持ちがきっかけで作り始めたところがあります」
――曲を作り始めた時に、ロールモデルというか、こんな曲にしたいとか、こういう人みたいな曲を作りたい、という考えはありました?
「最初はエンリコしかなかったので、このアルバムの中の14曲目“This I Promise You”とか、完全にその下敷きで作ってる、っていう感じですね」
――例えばクラシックとか、あるいはポップミュージックとか、小さい頃からいろいろ聴いていらっしゃると思うんですけど、そういうものから発想するというのは?
「なかったですね、あんまり。エンリコとビル・エヴァンス一直線だったから(笑)。まずそれを形にしたいということで、必死だったんです」
――曲を作るということを長い間やってると、ご自身の音楽的な何かが変わってくるんですか?
「ものすごく変わりますね。曲を作ることを自分の生徒にも勧めてるんですけど、それは作曲が時間をかけて音楽のことを考えるっていうこと、それに尽きるから。そういう音楽的な思考力みたいなものって、曲を作ることによってだいぶ培われると思うんですよ。
それはピアノの練習と一緒で、連続して書き続けていないとパッと作れなくなっちゃうんです。私はピアノを毎日練習するのと同じ感じで、毎月何曲か作る、みたいな形でずっとルーティンにしてたので、だから曲が多くなっているんですけど」
――今回、改めて昔の曲をやってみて、解釈が変わるとか、こういう曲だったのかって今になって思っている、なんていうこともありますか?
「いっぱいありましたね。特に自主制作のアルバムからの曲が2曲入ってるんですけど(“This I Promise You”“Blue Nowhere”)、稚拙だな、と思います。勢いだけで書いていて、何も考えてないな、って思いますね。
その後もう一回、和声法とかを勉強し直したので、そのあとに作った曲は20代の割にちゃんと頭を使って考えてるなっていう感じ。それを今、40代になって思っています(笑)」
――今、和声法の勉強をし直した、とおっしゃいましたけど、どういう先生なんですか?
「それがもうめちゃくちゃ面白くて。母校の音大のジャズ科のコントラバスの木村知之先生なんですけど、もともと作曲科の大学院まで出てて、古楽器の作曲もなさるし、ジャズベーシストとして以外にも、いろんな作曲活動をしている方なんですよ。
それで習ってみたら、パット・メセニーの曲の解説をしたかと思ったらバルトークの曲を解説したりとか、とにかく範囲が広くて、音楽することの根源的な楽しさみたいなものを総合的に教えていただいたレッスンでした」
――その先生にいろいろ教えてもらったことが、その後の曲作りに反映されていますか?
「反映されてますね。〈なるべく置きに行くな〉ということはよくおっしゃってました。例えば和声法のバス課題にしても、綺麗な正解を出すことは、まあ知識があればできるんですけど、それじゃつまらないから、自分が面白いと思えるものを作りましょうね、っていうことはよく言ってましたね」
――正解というか、綺麗なまとまった形は、後で聴いてみるとちょっと面白くないですか?
「そうですね。これぐらいでいいや、って感じに聞こえちゃうから」
作曲家・西山瞳の個性
――西山さんは一度書いた曲に手を入れたりはしないんですか?
「ないですね。私は一回書いたら書き直ししないんです、ほとんど。自分の曲の書き直しをする人は多いんですけど、やってるうちに〈やっぱりこっちがいいかな〉みたいなことは全然ないですね。もうフィックスしちゃってます」
――なるほど。作曲のことばかり聞いてしまいますが、西山さんの曲の楽譜って、いわゆるリードシートみたいな、メロディとコードネームが書いてあるんですか?
「そうです、私の譜面はリードシートです。和音の音符の玉を全部書くことはしません」
――ベースラインも……。
「書かないです。本当に〈決め〉みたいな箇所があれば書くけど、っていうぐらいで、なるべく共演者の自主性に任せたいから」
――西山さんの曲を続けて聴いてみると、すごく個性っていうか、西山さんらしさみたいな、共通するものが聞こえてきますよね。叙情性という言い方をすると安易かもしれませんが、落ち着きと共にちょっと寂しい感じとかがあると思うんだけど、そのあたりってご自分でも何かわかるな、っていうことはあるんですか?
「そうですね、あんまりそういう意識はしてないですけど、出ちゃうものはありますよね、きっとね。そういうふうなことを意識すると欲が出るから、あんまり意識しないけど、でも自分の聴きたいものを基本的に書いてるから、やっぱり出てくると思いますね」