
ファツィオリのピアノと越智晃による調整のコンビネーション
――欲、と言えば西山さんのnoteを読んでたら、今回のレコーディングで、頑張って欲が出ちゃってる演奏を没にしました、って書いてらしたけど。
「一人でやるのに、よし頑張るぞ、っていう感じはすごく変だな、と思っちゃうんですよ。〈この曲はちゃんと弾きたいから頑張ろう、よし!〉と思ってやったやつは全部没になりました」
――じゃあ、全部でこの倍ぐらいは録音した?
「もうちょっと録ってます。でも、どの曲もあと一回ぐらいしか弾いてないです」
――楽器はファツィオリF156ですね。
「はい。できるだけ、このピアノで録りたいです」
――他のピアノと特に違う部分とか、好きな部分を教えていただけますか?
「ファツィオリ自体の音色の雑味のなさが嫌いな人も結構いると思うんですけど、私はその音色の雑味のなさプラスいつもお願いしている技術の越智晃さんの調整が好きだから、ファツィオリの音だけじゃなくて、技術さんとのコンビネーションが好きなんだと思います。もう素晴らしいんですよ。その人が調整したピアノを弾くと、本当に幸せな気分になれるから」
ジャズとの出会いから演奏家になるまで
――素晴らしい。ところで西山さんは、大学に入る前にジャズは聴いていたんですか?
「自分でちゃんと聴き出したのは、高校2年だったと思うんですけど、父親が聴いていたので、家でジャズは鳴ってました。ただ、父親が聴いていたのはマイルス・デイヴィスのいわゆるマラソン・セッションぐらいの時期の作品とかで、ピアノがフォーカスされるものが一つもなかったので、ピアノトリオっていうものは聴いたことなかったんです。
それで、最初に出会ったのが、チック・コリアの『Now He Sings, Now He Sobs』と、それからビル・エヴァンスの『Undercurrent』。もうそれでびっくりしたんですよ。めっちゃかっこいいなと思って」
――それでジャズピアニストになろうと?
「なろうと思ってなかったんですよ。成り行きでなんとなくやってたら今に至る、って感じです。
もともとクラシックをガチでやってたので。それが嫌になってやめて、メタルばっか聴いて勉強してて。それで、たまたまそのCD 2枚に出会ったから、またピアノが弾きたくなって。せっかく音大に入る勉強もずっとしてたし。
それで音大のジャズ科に入ってから、たまたま1年生の夏に、外でバンドやってる人たちの中の一人から〈ピアニストがいなくなったから〉って言われて、歌のギグに呼ばれたんです。〈君、弾けるやろ〉って言われて、でも何も弾けへんですよ(笑)。それで、20曲ぐらい歌伴をしないといけなくて、もう急いで覚えて。
イントロをどうやって出すかとかもわからないから、石井彰先生に連絡して、〈先生、こんなことになってしまったんですけど〉って言ってね。夏休みに入る前に、〈何か困ったらファックスしなさい〉と言っていただいて、実際にファックスしたら、〈こういうことに気をつけて〉みたいなことが書かれたすごい量のお返事をもらって、それは今も大事に持ってるんです。
で、その仕事ができたから、次の仕事も私に来たんです。そうやって芋づる式に学生のうちに外で演奏するようになって、っていう感じで今に至るだけですね。ジャズピアニストになろうとは思ってなかったんです。
あと、石井先生は、授業の時に〈これを聴けリスト〉をくれたんですよ。ジャズピアノで歴史的に有名な作品を列挙してある3枚ぐらいのプリントのリストです。それを順番に聴いたのは、今考えたらすごくありがたかったですね。最後がブラッド・メルドーのアルバムでした、それぐらいの時期でしたから」
――なるほど。そういうリストがちゃんとあるといいですよね。
「あれは本当に役に立ちました」