アルゼンチン出身のゲルナーによるラヴェルの演奏は、腹の据わった芯のある低音を響せつつ、物憂げな空気を漂わせる表現が素晴らしい。ピアノソロの“高雅で感傷的なワルツ”を“ピアノ協奏曲”“左手のためのピアノ協奏曲”の間に挟み、最後に再びピアノソロの“亡き王女のためのパヴァーヌ”で深い余韻を残す構成も見事。協奏曲の指揮を務めた山田和樹は日本フィルで協奏曲シリーズを立ち上げるなど、ソリストの音楽性を俊敏に見抜き対応してさらに煽ることに秀でている。モンテカルロ・フィルを、時に木管とピアノを巧みに絡ませ、時に存分に鳴らしてゲルナーを輝かせている。