トレンドを即座に取り入れる吸収力と規格無視の仕様
まずはデザイナーでVJユニット・onnacodomoのメンバーでもある野口路加さん。グラフィックデザイン、映像ディレクション、そしてCDジャケットも手掛けるという野口さんに、同業者としての視点からもK-POPのCDデザインについて伺いましょう。そもそも、野口さんがK-POPにハマったきっかけから教えて下さい。
「最初は少女時代の”Gee”のMVからK-POPに興味を持ち、GD & TOP(BIGBANGの派生デュオ)で完全にハマりました。韓国の歌番組を毎週チェックして、YG、SM、JYPといった当時の人気レーベルをまんべんなく聴いてましたね。
2017年に、A.C.Eというグループにハマったんです。高速でハードなテクノサウンドに、ホットパンツ+拘束着でバキバキに踊る彼らのパフォーマンスが衝撃的でした。
ただ、彼らは大手事務所ではないので、情報を知るには、韓国語がわからないといけないんです。それで韓国語も勉強し始めたし、ライブのために渡韓をするようになりました。それから現在まで、K-POPからは常にフレッシュなときめきをもらっています」
A.C.Eというグループは知らなかったんですけど、確かにインパクトがありますね。衣装を含め「パタリロ!」に出てくる美少年のようで面白いですね! 次に、K-POPのCDで特に印象的だったアイテムを教えてください。
「G-DRAGONの『Heartbreaker』ですね。石膏のようなGDのデスマスクが、立体的に浮き上がっているパッケージで、インパクトがすごかったです。今まで買ったCDのパッケージ史上一番〈凸〉に飛び出していたと思います。

それとf(x)『Pink Tape』もですね。タイトル通り、ピンク色のビデオテープ風のパッケージになっています。アーティスト写真も、ブートVHSの白黒コピーを貼り付けたジャケットみたいで、適当さの演出が絶妙でかっこいい!

NewJeans『How Sweet』にも驚かされました。普通のサイズだと思って全種類購入したら、巨大なダンボールが届いて、中身は12インチレコード大のボックスで……家には置けなかったので、泣く泣く友人に配りました。ただ、全種類、コンセプトが異なるビジュアルで、ロゴなども違っていて楽しいデザインですね。1st EP『New Jeans』のときの、ハンドバッグにCDが入っている形態も好きでしたね」


ボックス系は物としての満足感はあるけど、収納スペースが悩ましいですよね。
「CDは規格外のものが多いので、本棚か収納箱に入れています。シーズングリーティングなどは、立派なお家のお歳暮くらいあるので、基本、諦めてます(笑)」
シーズングリーティングが文字通り〈お歳暮〉になるという。こういったK-POPのパッケージング、ディレクションのユニークさは、同じデザイン業界で働く立場として、どのように見ていますか?
「世界のトレンドをリアルタイムで取り入れる素直な吸収力と、新しいもの、多様なものを受け入れるパワーを感じます。日本だとまずフォーマットを揃えなければ流通できないというようなルールがあって、その中で選択するという作り方になると思うんですが、韓国にはそういうものはないのかな……?とびっくりしますね。
その分、アートディレクターの裁量が試されるとも思うので、ちゃんと能力が高い方が担当するようになるんだろうなぁ、などと妄想しています」
どういう会議でこれが通ったんだろう?と不思議になるものが多いですよね。野口さんのように同業者であれば、そういった〈現場〉が気になるのも頷けます。