Page 3 / 3 1ページ目から読む
KMIがデザインしたミームトーキョーのCD

デジタル領域で求められる立体感や実体感

――あらすじがそのままタイトルになっているアニメみたいな感じで、デザインにインフォメーションを埋め込む手法が求められている訳ですね。

松岡「MVや映像方面でも、その影響があるのかも知れませんね。今は一曲ごとに、リリックビデオなどの何らかの映像が作られるので、それに合わせてデザイナーさんが曲名の作字やロゴのデザインをしますし、グラフィックデザイナーさんがMVの領域でも仕事をされる傾向があるんじゃないでしょうか。昔はもっと、映像とグラフィックデザインが分けられてたのではないかと。それこそスケブリさんは、CDのデザインもMVのディレクションもやってますよね」

KMI「あと、今のトレンドとして、プニッとした感じはありそうですね。平面であっても立体感を模したデザインが流行っている気がします。iPhoneのUIなんかも、昔は写実的だったけど、一度フラットになって、今またちょっとガラスの質感が出たものになっていたり。グッズの発注でも、そういうご要望が増えている気がします。Illustratorの3D機能がすごく使いやすくなったという、技術面の理由もありそうですが」

――たしかに、ボンボンドロップシールとかも流行ってますしね。配信のみの曲のジャケットでも、シュリンクの光沢とか中古レコードの埃っぽさがレイヤードされたデザインもよくあるし、フィジカルっぽさは求められている気がします。

KMI「それで言うと、ミームトーキョーさんの『リバーズ・エンド』も、そうかも知れません。私がディレクションさせていただいたのですが、まず写真がありつつ、ストリートっぽさ、グラフィティっぽさが欲しい、というようなご依頼でした。なので、ポラロイドのフレームに、手書きのペン、ステッカーなどを配置しています」

松岡「配信シングルで、こういう実体感のあるデザインは面白いですね」

ミームトーキョーの2022年のシングル“リバーズ・エンド”のジャケット

 

CD特有の自由さや工夫の余地

――それも踏まえて、CD特有の魅力というものがあるとすれば何でしょうか?

KMI「やっぱり〈光る〉というところですかね。自分が過去にデザインしたCDの盤面はどれも、インクで全部覆うということはなくて、どこかしらにディスクそのものの光沢が露出するデザインにしているんです。それは無意識にやっていたんですが、子どもの頃に〈こんな虹色に光る円盤から音が出て、CDってすごい!〉と思ったことがあり、その頃の感覚が今もあるからかも知れません」

――カニエ・ウェストの『Yeezus』みたいな、ディスクであることを活かしたデザインは自分もテンション上がります。

松岡「本にも掲載している、ラッパーのJJJさんのアルバム『MAKTUB』は、レコードとCDでデザイン自体は同じなのですが、CDの方は凹凸感のあるエンボス紙になっているんです。デザインを手掛けたItsuko Kiraさんも〈CDの方が気に入っています〉と仰っていて、レコードとCDでデザインが微妙に違うことはよくありますけど、CDの方がよりこだわりがある、というのは面白いなと思いました。本の写真も、その質感がなるべく伝わるように、ズームで撮っているんです」

JJJ 『MAKTUB』 FL$Nation/AWDR/LR2(2023)

――デザイナーさんのこだわりを含めて、作品がモノとして残ってるということは、改めて素敵ですね。

松岡「弊社も書籍というモノを作る仕事に携わっている中で、やっぱりフィジカルの良さというのは常に意識していますし、CD特有の自由度の高さや工夫の余地はあるんじゃないかと思います」

KMI「こうして出来上がった本を見ていると〈素敵なデザインって、いっぱいあるんだな〉と思いました。自分が見ていたものは、ごく一部に過ぎなかったというか」

――名盤レコードジャケットの本なんかはよくありますけど、こういう現在進行形のデザインをまとめた本は、なかなか無いですよね。これまで自分の関心外にあったアーティストの作品も、パッケージや中身のデザインに目を向けるきっかけになります。年鑑みたいに、後から振り返って読んでも発見がありそうです。どうもありがとうございました。

(左から)Kotetsu Shoichiro、KMI、松岡 優

 


BOOK INFORMATION

BNN編集部 『あたらしい音楽のデザイン』 ビー・エヌ・エヌ新社(2025)

発売日:2025年11月27日(木)
ISBN:978-4-8025-1325-8
仕様:B5判/276ページ
編集:BNN編集部
カバーアート:丸井元子
デザイン:中山正成(APRIL FOOL Inc.)
定価:3,740円(税込)

CONTENTS
Part 1 Jacket Artwork / Package Design
Part 2 Promotional Design / Merchandise / MV

Interview 1 河島遼太郎
Interview 2 Ricks Ang(KITCHEN. LABEL)
Interview 3 益本タカオ
Interview 4 maxilla

 


PROFILE: KMI
グラフィックデザイナー。音楽をはじめとしたポップカルチャー分野を中心に、グッズ、CD・デジタルアートワーク、ロゴなどのデザインを手掛ける。イベント出展やオリジナルグッズの制作・販売といった自主制作活動も行い、近年はトークイベント出演など活動の場を広げている。
オフィシャルサイト:https://kimoiomik.net/
Instagram:https://www.instagram.com/ki_moi/

INFORMATION
トークイベント〈スーパーの販促シールナイト2〉アーカイブ配信中
出演:せきしろ/reina(lyrical school)/sayo(lyrical school)/KMI(グラフィックデザイナー)
配信チケット:通常チケット 1,500円/応援チケット 2,000円
アーカイブは2026年2月24日(火)23:59まで購入可、購入後14日間視聴可能
詳細:https://premier.twitcasting.tv/rockcafeloft/shopcart/413243

書籍「イメージから導く色のアイデア ロゴデザイン配色ブック」発売中
AYA graphics/カジデザイン/KMI/芝山綾乃/Panzoo 共著
発行:エムディエヌコーポレーション

AYA graphics, カジデザイン, KMI, 芝山綾乃, Panzoo 『イメージから導く色のアイデア ロゴデザイン配色ブック』 インプレス(2024)

PROFILE: BNN
2002年設立の出版社。デザインとテクノロジーの分野に主軸を置きながら、アート・クラフト・映像・ファッション・建築など、さまざまなジャンルに領域横断した書籍を刊行している。デザインの価値を世に伝え広めること、デザインする人を増やすこと、作る人を支援することを目指して本づくりを行う。
オフィシャルサイト:https://bnn.co.jp/

PROFILE: 松岡 優
BNN編集部に所属。立命館大学経営学部卒。学生時代はライブイベントの企画を行うなど音楽に明け暮れる日々を過ごす。アニメ制作会社での勤務を経て2018年にBNNへ入社。「あたらしい音楽のデザイン」のほか、担当書籍に「アニメ・ゲームのロゴデザイン」「スタジオジブリの撮影術」「アニメ音響の魔法」などがある。

PROFILE: Kotetsu Shoichiro

ミュージシャン(トラックメイカー/DJ)。90年生まれ、香川県出身。ダンスミュージック全般を手がけ、ラッパーやゲーム音楽、CMなどに楽曲提供の実績多数。2021年にはラッパー・T-STONEへの提供曲“Let’s Get Eat”がBillboard JAPANのTikTok Weekly Top 20で1位を獲得。また2022年にはtofubeatsのアルバム『REFLECTION』収録の“Vibration feat. Kotetsu Shoichiro”へラップで客演し話題を呼んだ。ライター/インタビュアーとしてはミュージック・マガジン、Quick Japan、CINRA、関西ソーカルなど数々の媒体に寄稿。ほか、さとうもか“Lukewarm”“Loop”をはじめ他アーティストのMVなど映像/アニメーションの編集も手がけるなどジャンル/形式に囚われない幅広いスタイルで活動をおこなっている。
オフィシャルサイト:https://kotetsu-shoichiro.com/
X:https://x.com/y0kotetsu
Instagram:https://www.instagram.com/y0kotetsu/
YouTube:https://www.youtube.com/@y0kotetsu