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ブラジルのルーツが自然に出てくるんだ

――ブラジルって、アングラやセパルトゥラのように国際的に活躍するメタルバンドもとても多いけど、普通にサンバのリズムを使っていたり、エルメート・パスコアールの引用をしていたり、ああいうことをするのはごく自然なことなんですか?

「パスコアールがやっていることは、結構オーガニックなことなのね。お祖父ちゃん達もやっていたかもしれない、色んな人から受け継がれる音楽なんだ。例えばバーにいたら、皆演奏する。パーカッションがなければ、マッチの箱で演奏するし、お皿とフォークでリズムを出すし、皆で音を出して、何でも楽器になる。だから、全体的にブラジル音楽をまとめたらパスコアールになっちゃうのね。あの世代、なんでも楽器にしちゃうのが普通。今は少し変わってるかもしれない。アメリカっぽいポップスも増えたから。

僕ももちろん、アングラもセパルトゥラも大好き! アングラは、サンパウロのロックシーンを代表する存在だね。アングラは世界規模のバンドになったんだけど、他のバンド、ドクター・シン(Dr. Sin)とか、コーザス(Korzus)、ドーサル・アトランティカ(Dorsal Atlântica)とかは、あんまりメジャーじゃないけど、サンパウロでは皆知ってて、流行ってた。ドクター・シンは私もファンだったよ。

アングラの“Nothing To Say”のリズムは、思いっきりブラジルのリズム。世界に向けて特別に意識して取り入れていたのではなくて、自分たちのルーツが普通に出てくるんだ。自分達のルーツは出したいんだよね」

――メタルを好きだったことで、今のプレイや考え方に影響はありますか?

「ファルコン(ギター)とエリ・リャオ(ボーカル)との新しいプロジェクト、Aza Rootsのために作った“ZABUMBANGER”という曲が今ちょうどあるんだけど、〈ZABUMBA〉はブラジルの打楽器、〈BANGER〉はヘッドバンガーのことなんだ。バイヨンのグルーヴでヘヴィメタルのフレーズを入れている曲なんだよ。こういう感じ。最後、こんなフレーズなの(と言って曲を聴かせてくれる)」

――メタルですね(笑)。

「うん、メタルでよく使うフレーズだね! ライブでもたまに、エンディングにレッド・ツェッペリンのフレーズを弾いたりするよ。サンバを演奏する時に、たまにタッピングもやってる。名古屋で演奏していたお店で、サンバの曲中でディストーションを使ったら、めっちゃ盛り上がった(笑)。それでお客さんが踊ってくれたり。例えばショーロもエレキギターで弾くと、凄くショーロが好きな人からは怒られるだろうけど、こんな感じで弾いたり(アルぺジオのようなフレーズをエレキギターで弾く)」

――メタルのギターソロみたい。

「(もう一度ショーロらしく弾く)本当はこういう曲なんですよ。ただ、弾き方をメタルにすると、こうなるの。それでもお客さんが、〈面白いね、ブラジル? サンバ? ロック?〉って面白がってくれるんだ」

――キコ・ルーレイロとかも、そういう感じで弾いてるんでしょうか?

「キコのプロジェクト、ニューラル・コードも、こんな感じでしょ。ショーロの曲だけどディストーションをかけてて。

元々ずっとこういうジャンルをミックスさせた音楽はやりたくて、名古屋の店で演奏している時から、そのイメージは強くなっていったんだよね」

――奏法とは別に、例えば考え方などで、メタルの影響って何かありますか?

「〈諦めない〉ってことかな。でも、そこまでないかな。メタルもブラジル音楽も、私の中では一緒だから。ヘヴィメタルの考え方、ショーロの考え方が、普通に一緒になって自然にミックスしているんだ。自然な流れで今があるんだよ」

 

サンバは裏で動くリズムがわかったら、ゆったりのって聴けるよ

――それでは、メタルファンにおすすめする、ブラジル音楽のアルバムを教えて下さい。

「まずは、ハファエル・ハベーロ。もう亡くなった方だけど、7弦ギターで、13歳からレコーディングしている。ジーニアスだね。彼が20代で出した、ショーロの年配の人とのデュオのアルバム(1991年作『Raphael Rabello & Dino 7 Cordas』)があって、私のお祖父ちゃんから〈このアルバムを聴きなさい〉って言われたんだ。それで音楽のイメージが変わったね。こんな弾き方をする人、あまりいなかったね。

ショーロの有名な曲が沢山入っていて、〈ギターの世界は凄いな、難しいな〉って思ったけど、集中してブラジル音楽に入れたアルバム。とてもテクニカルで、メタラーも聴いたら面白いと思う。

RAPHAEL RABELLO, DINO 7 CORDAS 『Raphael Rabello & Dino 7 Cordas』 Caju Music(1991)

2枚目は、シコ・ピニェイロ。彼は最近の人なんだけど、アメリカで活動してて、バークリー(音楽大学)も出ていて、コンテンポラリージャズとブラジル音楽をミックスしているんだ。全部のアルバムがおすすめだけど、このアルバム『There’s A Storm Inside』(2010年)がおすすめ。ジャズのスタンダードも入ってる。

彼はアコースティックギターもエレキも、どっちも凄い。バンドが入るとスペシャルなサウンドがする。本当に面白い音楽だね。他のアルバムも全部おすすめするけど、このアルバムが一番いいな。

CHICO PINHEIRO 『There’s A Storm Inside』 Sunnyside(2010)

3枚目は、ホーザ・パッソスという方で、今73歳かな。ジョアン・ジルベルトの弟子で、彼女のギターとボーカルはとても好きなんだ。アルバムは沢山あるけど、(ドリヴァル・)カイーミという作曲家の曲を歌うアルバム(2000年作『Rosa Passos Canta Caymmi』)があって、これが好き。このアルバム、アレンジが全部最高なの」

ROSA PASSOS 『Rosa Passos Canta Caymmi』 Lumiar Discos(2000)

――ブラジル音楽にあまり馴染みがない人に、〈こういう風に聴いたらいいよ〉とか、ありますか? リズムとか、結構難しいですよね。

「今挙げた3枚は、皆サンバをやってるんだけど、サンバの聴き方は、裏で動いている細かいリズムが少しわかったら、楽に聴ける。あんまり〈1、2、1、2〉って数えるんじゃなくて、サブディビジョン(音符の細分化)をなんとなく感じたら、あとはゆったりのったらいいよ」