
英米ガレージロックと日本情緒あふれる歌謡の融合
B面に裏返すと、今度は大野克夫氏のオルガンを一気に押し出した、オルガンガレージパンク的な曲が続く。
トロッグス的なコーラスや、間奏のギターソロとオルガンソロの応酬がスリリングな“ヘイ・ボーイ”や、アルバム中では異質な耽美でサイケデリックな“しずかに”。そこからこのアルバムの本質とも言える、勢いで突っ走るラストナンバー“ゴー・ゴー”。
ガレージパンク的な観点で語ると、A面はキンクス直系のパワーコードリフと独特なリズムのドラムがメインで、B面は同年代の、ミュージック・マシーンやミステリアンズのようなアメリカンサイケデリックガレージを思い出させるサウンドになっている。
それらの同世代の世界各国のバンドサウンドをミックスして、そこに阿久悠氏を筆頭に、日本の作家陣の日本情緒あふれるうたが乗っている。そのアンバランスにも思えるものが、ザ・スパイダースがプレイすると〈イカした音楽〉として、唯一無二の〈トーキョー・サウンド〉になっている。
イカした暴走ロックンロールバンドに負けてられない
ザ・スパイダースが持っていたのは、剥き出しの〈トーキョー〉のバンドマンとしてのセンスだ。
〈米英のロックに負けてないぞ〉と言わんばかりの島国根性と、知識に裏打ちされたセンスで、スマートに見せる美学。1966年、オトナたちが〈不良の音楽だ!〉と眉をひそめたのも納得の、いい意味でワルくてイカした空気が充満している。それまでにもエレキ歌謡的なサウンドは存在していたが、こんなにも〈バンド〉然としたグループはいなかったのではなかろうか。
常識も、BPMもない。60年前にすでにこんなにイカした暴走ロックンロールバンドがいるという事実、自分も負けてられない、はやくメチャクチャなライブをやって暴れたい、そんな気分になるアルバム『ザ・スパイダース・アルバムNo.1』 。一度聴いてみてほしい。
PROFILE: 釘屋 玄
暴動クラブのリードボーカリスト。2024年、アルバム『暴動クラブ』でインディーデビュー。現代のニューヨーク・ドールズを彷彿させるスタイルで一躍人気に。タワーレコードの新人賞〈タワレコメンアワード〉のアーティスト・オブ・ザ・イヤーに輝く。翌2025年、アルバム『暴動遊戯』でメジャーデビュー。新人としては異例の「bounce」の表紙を飾り、2年連続でCDショップ大賞に入賞。釘屋玄ソロでは〈FUJI ROCK FESTIVAL〉〈オハラ☆ブレイク〉〈朝霧JAM〉に出演し、大きなトピックとなった。2026年、新しく生まれ変わった暴動クラブは野生を取り戻し、激しいロックンロールで快進撃中。