各方面に時代を超えてそびえ立つマンハッタンズの名曲たち
キャリアにおける全盛期の長さに比例してカヴァーやサンプリング例も少なくないマンハッタンズではあるが、流石に全米No.1ヒットと言うべきか……カヴァーのスタンダードという意味では“Kiss And Say Goodbye”に人気が集中している。最近もブライアン・アダムスが〈自身がデビューする前の思い出の曲〉のひとつとしてカヴァーしていたものだ。他にもビリー・ジョー・ロイヤルやジョーン・オズボーンらが同曲を歌ってきているが、興味深いのはジョン・ホルトが77年に取り上げたのち、JC・ロッジやUB40といった流れでレゲエ方面でも好まれてきたこと。また、ジェラルド・アルストンもソロ転向後にセルフ・カヴァーしていて、やはり今も昔も必殺の一曲であることは間違いない。
同じヒット曲だと“Shining Star”をボーイズIIメンが直球で披露したこともある。さらに、“Just The Lonely Talking Again”なんかは現在だとホイットニー・ヒューストンのヴァージョンが著名かもしれない。
一方、ネタの早回しが流行った2000年代半ば以降、サンプリングしがいのある(?)スウィートさで愛されてきたのもマンハッタンズの特徴か。60年代の“Follow Your Heart”をスカイズー&トレイが“4 Bar Friday”で使っていたのも記憶に新しいが、基本は70年代コロムビアで築いた黄金期からの楽曲がネタ人気も高い傾向にある。“You'd Better Believe It”はソウル好きなゴーストフェイス・キラーの“Barbershop”にサンプリングされていたし、フレディ・ギブス&マッドリブが“Shame”でベタ使いした“Wish That You Were Mine”は、それ以前にファット・ジョーのスマッシュ・ヒット“All I Need”でもキャッチーな効果を発揮していた。同様にR&B方面のリサイクル例を探すと、白眉は“There's No Me Without You”を使ったシリーナ・ジョンソンの“Classic Love Song”か。“Then You Can Tell Me Goodbye”を用いたリーラ・ジェイムズ“Tell Me You Love Me”もソウルフルな良曲で、このへんは一聴をオススメする。