COLUMN

ポスト・クラシカルの祖築いたマックス・リヒター、〈眠り〉がテーマの新作は8時間に及ぶヴァージョンも

 

(C)Wolfgang_Borrs

 

激動の世界に捧げるララバイ~単一の楽曲としてはレコーディング史上最長!

 ポスト・クラシカル(他に様々な呼称があるがここではそれで統一する)というタームがオーバーグラウンドにはならずとも、日本でも普及して久しい。

 ポスト・クラシカルという言葉が生まれる前より活動するマックス・リヒターは、英国王立音楽院でピアノと作曲を学び、ルチアーノ・ベリオに師事するというアカデミックな経歴を持ちながら、その後Piano Circusでの活動や、FatCat傘下の130701より発表されたソロ作などにおいて、現状のポスト・クラシカルの祖を築き、その後の世界中の動向に影響を与えて来た。現在はドイツ・グラモフォン(以下DG)より新作、過去作の復刻等を発表しており、この2つのレーベルからリリースがあるという点を見ても、ポスト・クラシカルの性質を体現しているアーティストと言える。

 DGでは例えばハウシュカヒラリー・ハーンのコラボなど、ポスト・クラシカルの動向を積極的に取り上げており、Recomposedシリーズではマックス・リヒターがヴィヴァルディの四季を再構築した作品もリリースしている。(ヒラリー・ハーンのアルバム『27の小品』にもマックス・リヒターの作品は取り上げられている。)

 今回DGより発表された新作は「眠り」をテーマとしており、別途デジタルでは8時間にも及ぶバージョンもリリースされる。この作品はサティの家具の音楽や、その発展昇華系であるイーノのアンビエントのコンテクストとは違い、リスナーは能動的に作品に対して傾聴する事を前提に作られている。

MAX RICHTER Sleep DG Deutsche Grammophon(2015)

MAX RICHTER Max Richter From Sleep DG Deutsche Grammophon(2015)

  エレクトロニクスによる深遠なアンビエント、弦楽器によるドローン、ピアノによる仄かな旋律など、彼が奏でて来た静謐な音像はこの作品でも多くを占めているが、これまでの作品には見られなかった実用や日常と芸術の狭間に横たわるかの様な立ち位置の本作は、130701からの初期作品がそうであった様に今後の大きな分岐点としてまた大きな影響を様々に及ぼしていくかもしれない。

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