冬枯れていた景色がにわかに色彩を強めはじめ、新しい季節を予感させるある日の午後。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。おや、外の陽気とは裏腹に何やら騒がしい様子ですが……。

 

【今月のレポート盤】

THE POP GROUP For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder? Y/Freaks R US/ビクター(1980)

※試聴はこちら 

 

鮫洲 哲「姐御! どうか卒業しないでください!!」

杉田俊助「何でテツが号泣してるんだヨ、Ha! Ha! Ha!」

鮫洲「笑い事じゃないっすよ! そりゃ、ジョン先輩の卒業も寂しいっすけど、姐御がいなくなったら舎弟の俺は……うっぐ」

汐入まりあ「まだ数日あるでしょ! 私たちだってこれまで大好きな先輩方を見送ってきたんだし、ただ順番が回ってきただけだよ」

杉田「Uh-huh! それよりもこれで元気を出そうヨ!」

鮫洲「いまは音楽を聴く気分じゃ……おぉぉぉぉぉっ! ポップ・グループの80年作『For How Much Longer Do We Tlerate Mass Murder』! ついにリイシューされたんすか!?」

杉田「切り替え早っ!」

汐入「94年と96年に日本でのみ数量限定でCD化されて以降、ずっと廃盤状態だったし、中古市場でも高値が付いていたもんね。さらに今回はメンバー自身による最新リマスタリングが施されているのも嬉しいよね」

鮫洲「2010年に再結成してから、ずっと出る出るって噂され続け、3作目『We Are Time』や編集盤『Cabinet Of Curiosities』は登場したのに、なぜかこのセカンド・アルバムだけは見送られていましたからね」

杉田「去年リリースされた35年ぶりのアルバム『Citizen Zombi』もサプライズだったけど、正直ミーにとってはこっちのほうが待ち遠しかったヨ、Ha! Ha! Ha!」

汐入「うん、わかる。希少価値みたいな部分以上に、実際のクォリティーも物凄く高いし。79年のデビュー作『Y』で提示した、パンクとダブとファンクとフリージャズの融合を、より強力に推進させている感じ!」

鮫洲「アグレッシヴなのは変わらないんすけど、『Y』以上にサウンドの統制が取れているっつうか、リズム・セクションが強化されて明快なファンキー度がアップしていますよね、姐御!」

汐入「グループ解散後のメンバーたちの、リップ・リグ&パニックやマキシマム・ジョイ、そしてマーク・スチュワートのソロ作でのサウンドの片鱗が、すでにこのアルバムから窺えるよね」

杉田「『We Are Time』はデモやライヴ音源をまとめたものだから、これが事実上のラスト・アルバムだよネ! そのせいか、マーク・スチュワートのアジテーションも超ハイテンションで、何を言っているのかミーですらわからない瞬間があるヨ!」

汐入「政治的すぎる歌詞がリイシューの障壁になったのかな~」

鮫洲「というか、当時ってマークと他のメンバーの確執が大きくて、この後すぐ分裂状態になったじゃないっすか!? だから権利関係が複雑だったんでしょうね」

杉田「No! それだと全然おもしろくないヨ!! もっとロッ研っぽいアンサーはないの?」

汐入「実はこの難解な歌詞のなかに、未来の出来事が描かれていて、ノストラダムスのような予言音楽だからリイシューできなかったとか?」

鮫洲「実はマーク・スチュワートじゃなくてロッド・スチュワートがヴォーカルだったんで、より権利が複雑化していたとか?」

杉田「Exellent! バカだね、ロッ研って。よし、今日はミーがティーを煎れてあげるヨ!」

汐入「ジョン君の甘いミルクティーも、もうこれが飲み納めかな」

杉田「そうかもネ!」

汐入「あ、思い出した! そういえば新入生だったテツ君が初めてロッ研に来た時も、リップ・リグの話で盛り上がったよね!」

杉田「Wow! 懐かしいネ!! あの時はテツが知ったかぶってね……って、おいおい、テツのティアーズでティーが溢れちゃってるヨ、Ha! Ha! Ha!」

いよいよジョンとまりあも卒業を迎え、流石に少し寂しいですね。とはいえ、必ず代替わりしていくのが部活の宿命。2人とも本当にお疲れ様でした。 【つづく】

 

ポップ・グループ『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』と並べて聴きたい作品たち

SAVAGES Adore Life Matador/HOSTESS(2016)

ポップ・グループやギャング・オブ・フォーの最新作が高く評価され、On-Uのレア音源集が立て続けに登場し、そしてローンレディが……と、引き続きポスト・パンク人気は衰え知らずのなか、サヴェージズの活躍がそれに追い打ちをかけていますよね! どんどん暴力的になっていくアジテーションにマークも真っ青!? *汐入

 

THE POP GROUP Citizen Zombie Freaks R US/ビクター(2015)

怒れる若者たちも35年経ってイイ塩梅に歳を取ったわけで、正直、期待半分で聴いたみたら……これが相当イカシてたぜ! 初期の闇雲なアグレッシヴさは流石にないけど、ダンサブルなファンク・チューンが多く、つまりは2作目をとことん整合化したようなサウンドじゃねえか! *鮫洲

 

KAMASI WASHINGTON The Epic Brainfeeder/BEAT(2015)

アフリカンなリズムを真面目に追求したり、フリージャズに接近したり、ポップ・グループの楽曲は音楽的な語彙が豊富なのも魅力。で、それらが渾然一体としつつも比類のない鮮烈なサウンドとして聴こえてくる様子は、カマシのこのアルバムにも通じると思うのですが、どうでしょう。 *汐入

 

SLEAFORD MODS Key Markets Harbinger Sound/ディスクユニオン(2015)

再結成直後のポップ・グループと7インチのスプリット盤を発表して話題を呼んだノッティンガムの2人組。チープなエレクトロ・ビートを敷いた宅録風のヒップホップ・パンクが持ち味で、音的にはあんまり似てねえけど、強烈な反骨精神を込めたリリックはタメセン張ってるよな! *鮫洲

 

BLANCK MASS Dumb Flesh Sacred Bones(2015)

現行のブリストル・シーンでもっともエクスペリメンタルなノイズ・ロックを鳴らすデュオ、ファック・ボタンズの片割れが放ったソロ作だヨ! 本隊よりもさらにゴスくて、ビートを強調したクラブ仕様だネ! ポップ・グループ先輩の超攻撃派スピリットをきちんと受け継いでいる感じがSo Cool! *杉田

 

連絡ノート
部室に置かれたキャンパス・ノートを覗き見しちゃいましょう!

 汐入です。きっと最後の連絡ノートになるだろうけど、いつも通り最近のオススメ盤を書きますね!

HARMONIA De Luxe Brain/Pヴァイン(1975)

 まずはクラスターの2人にノイ!のミヒャエル・ローターを加えたユニット、ハルモニアの75年作『De Luxe』(Brain/Pヴァイン)。ゲストにグルグルのマニ・ノイマイヤー、プロデューサーに名匠のコニー・プランクを迎え、クラウトロックのプチ・オールスターズといった布陣で作られた本作は、楽園的で温かみのある電子ビートが気持ち良い、テクノやハウスを10年近く先取りしたような傑作です。

 

MICHAEL BLOOMFIELD Count Talent And The Originals Clouds/TK/Solid(1978)

 続いては、不世出の天才白人ブルース・ギタリスト、マイケル・ブルームフィールドが、なぜかTK傘下のレーベルに一枚だけ残した『Count Talent And The Originals』(Clouds/TK/Solid)。リリースは彼が亡くなる3年前の78年です。直球のブルース・ロックとファンキーでソウルフルなナンバーを織り交ぜた構成、そして豊かなフレージングが素晴らしく、スルーするには惜しい逸品!

 

BOBBY WHITLOCK Rock Your Sox Off Capricorn/ユニバーサル(1976)

 お次は、エリック・クラプトンと共にデレク&ザ・ドミノスを牽引したボビー・ホイットロックの76年作『Rock Your Sox Off』(Capricorn/ユニバーサル)。バンド本隊ではクラプトンが歌った人気曲“Why Does Love Got To Be So Sad?”のセルフ・カヴァーを収録しているのも注目ポイントで、スワンプ/サザン・ロック好きにはたまらない一枚ですよね。

 

MODERN ROMANCE Adventures In Clubland Atlantic/Cherry Pop/Solid(1981)

 そして、最後はとびきり明るい作品で締めましょうか。私の大好きなモダン・ロマンスの81年作『Adventures In Clubland』(Atlantic/Cherry Pop/Solid)。全編トロピカルでアッパーなファンカラティーナ名盤で、DJも御用達のダンス・クラシックスが満載です。この陽気なサウンドはいつ聴いてもウキウキしちゃいますよ。

 さて、いよいよ私も卒業です。あっという間だったけど、最高の4年間でした。ロッ研のみんな、本当にありがとう。大好きです! P.S. このノートは必ず続けてくださいね! *汐入まりあ