ジャズ・ピアニストでありながらメタル・ファンとしても知られる西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、3月26日に星海社より発売された新書『「メタルの基本」がこの100枚でわかる!』を取り上げます。ブラック・サバスからBABYMETALまで、選りすぐりの100作品からメタルの基本を理解するための本書。メタル・ファンの西山さんにはどのように映ったでしょうか……? *Mikiki編集部
4月です。この連載も4年目のスタートとなりました。今年度もMikikiの中でヘヴィメタル圧をかけていきたいと思っております。
さて、新年度ということで、新たな勉強を始める時期。Mikiki学校唯一のメタル授業を担当しているわたくしですが、新年度の教科書はこちらです。
メタルの新書ですよ、新書。
ジャズでは沢山ありましたが、メタルで新書はあまり記憶にありませんね。ブックカバーをかけてしまえばビジネス書を読んでいるように見え、通勤電車で読んでいても全く違和感なし。中には凶悪な音楽の紹介が載っているのに! メタル新規のあなたも、これでステルス・メタラーになれること間違いありません。始めましょう、メタルを!
近年のメタルのディスク・ガイドは、「デスメタルアフリカ 世界過激音楽1 暗黒大陸の暗黒音楽」、「デスメタルチャイナ 中国メタル大全」、「ブルータルデスメタルガイドブック 世界過激音楽3 世界一激しい音楽」、「プリミティヴ・ブラックメタル・ガイドブック」など、すでにメタルに詳しい人が読むための、専門的で外縁部を扱ったものが多く、これはこれで非常に充実しておりました。
しかし、これからメタルを聴く人が手に取りやすいかどうかといえば、ちょっと厳しいかもしれない。「ブルータルって何ですか!?」「何書いてるか読めないんですけど!?」という話ですよ。(※ブルータル・ロゴは本当に何書いてるか読めません)
ど真ん中・ど直球の、メタル入門ディスクガイドが、近年あまりなかったのですね。
一番最近では、2015年に「ヘドバン・スピンオフ ヘドバン的「メタルの基本」100枚」というムックが発売されていましたが、これがとても内容充実で楽しい入門書にも関わらず最近手に入らなくなっていました。
そんな今、新書『「メタルの基本」がこの100枚でわかる!』が3月に発売されたということで、とても喜ばしい事態! しかも同じ「ヘドバン」の監修ということで、もしかして元のムックの原稿を加筆修正している本なのかなと2冊を比較しながら見てみたら、文章も全て新しく書き下ろしです。この気合いがメタルですよ。メタルは使い回しなんてしない。
シルバーのブックカバーで一見クールに見えますが、開いて見ると、〈爆音! 轟音! 獄音!〉
獄音って何ですか!?
〈人類〉に〈ホモ・サピエンス〉とルビを打ち、〈奔流〉に〈バースト〉とルビを打つこのセンス……。本文は単調なモノクロページにも関わらず、序文だけでもフォントのサイズや種類、太字、斜体などの過剰な多さ。新書なのに何かどこかバランスがおかしい……? これは新書の皮を被っているけど、明らかに「ヘドバン」だ!
そもそも「ヘドバン」とは、2013年7月に創刊したメタル専門誌(ムック)ですが、A5版の非常に情報量の多い、というか過剰に過剰を重ねたようなムック本でして、私もメタルに戻るきっかけの一つになった本です。
現在Vol.29まで発行されていますが、私が読み出したのはVol.5あたりの時期で、Vol.8ではNHORHMのCDリリースに関してインタビューをしてもらい、ここ3年ほどはライターとして参加しています。本業はジャズ・ピアニストなのに、どうしてこうなった……。