知らなくてもいいTSGの秘宝たち

LLOYD PRICE 『Music-Music』 TSG/Pヴァイン(1976)

このたびTSG盤のジャケでリイシューが実現した本作は、もともとロイド自身が主宰するLPGからも別ジャケでリリースしていたレアな佳作。2005年にLPG盤で初CD化された際はメロウ・グルーヴ満載の好内容で話題にもなった一枚だ。ジャケの胡散臭さはあっても中身は同じ、爽やかな自作の表題曲やロマンティックな“Street Love”に宿る魅力はたぶん変わらない。

 

1619 BAD ASS BAND 『1619 Bad Ass Band』 TSG/Pヴァイン(1976)

ニュージャージーの5人組バンドが残した唯一のアルバム。ノーマン・ホイットフィールド風の“Step Out”を筆頭に雄々しい突貫ファンクが並ぶ一方、ソウルフルなスロウ“Rain (Always Finds Me Crying)”など女性ヴォーカル曲にはまた別の味わいがある。ブラウン・シュガーなるレーベルから出した73年のシングル音源もボーナス収録。

 

SPICE 『Let There Be Spice』 TSG/Pヴァイン(1976)

女性シンガーではなく……LPGにシングル“Everything Is You”(75年)も残す男性ヴォーカル・グループがリリースした唯一のアルバム。いわゆる甘茶なファルセットが煌めいた“Don’t Fight It”などスウィート系が充実する一方、洒脱な味のあるモダン・ソウル“The Last Time”や瑞々しくポップな“I’m So Glad To Say”などフリー・ソウル的な目線からも好曲揃いだ。

 

RICARDO MARRERO & THE GROUP 『A Taste』 TSG/Pヴァイン(1976)

60年代からNYのラテン音楽シーンで活躍した鍵盤奏者のリカルド・マレーロ率いるグループの初作……と、TSGでは珍しく身元の確かな一枚。人気のラテン・ファンク“Babalonia”や女声を配したメロウ・ソウル“And We’ll Make Love”のほか、サルサやジャズ目線でもいい感じで、最初にジャズマンが復刻したのも納得のレア・グルーヴ集だ。

 

CYNTHIA SCHLOSS 『Ready And Waiting』 TSG/Pヴァイン(1976)

ソフトな歌声が魅力的なジャマイカ出身の女性シンガーによるアルバムで、同年に別レーベルから出ていた作品の流用(?)だけに中身は素晴らしい。ウィンストン・ブレイクがプロデュース、コーラス陣にマーシャ・グリフィスやパム・ホールも名を連ねた甘いソウルが並び、レゲエ~ラヴァーズや軽快なディスコ風など多彩なアレンジがどれも心地良い好盤。

 

THE ULTIMATES 『You’re My Lady』 TSG/Pヴァイン(1976)

もちろん女性シンガーではなく……日本のソウル愛好家の間では昔から熱く支持され、たびたび復刻されてきたオハイオ産グループの唯一のアルバム。スウィートなムードの溢れるスロウ“Loving You Is Easy”を筆頭に内容はどれも最高だ。現行のリイシューではオリジナルLPの7曲に加えて前身にあたるエンチャンテッド・ファイヴ名義の楽曲などもボーナス収録。

 

THE TOPICS 『Giving Up』 TSG/Pヴァイン(1976)

60年代から活動するNYのヴォーカル・グループが上掲のアルティメッツと同じくブルース・クラークのプロデュースで残した佳曲集で、元は74年に別レーベルから出ていたものだそう。成り立ちはさておき、ストリート感のあるサイケ・ファンク“You’ve Got The Power”やドラマティックな“Giving Up”、女声リードの“God And You”などが混在する多彩さにも惹かれる。

 

ERIC DUNBAR 『Freeway』 TSG/Pヴァイン(1976)

ニューオーリンズ出身のピアニストが制作した唯一のアルバム。クラヴィネットがうねるオープニングのミッド・ファンク“Freeway”から出来のいい既聴感が遠慮なく押し寄せてくるが、ソフト&メロウな“You Must Be From Heaven”、ロッキッシュな展開から曲調を転換していく“Does Anybody Wanna Listen”などもあって飽きさせない。朴訥とした歌唱も味がある。

 

THE CORNER GANG 『Stone Out Of Your Mind』 TSG/Pヴァイン(1976)

謎めいたTSG作品の中でも正体不明な作品のひとつ。ジミー・マクグリフ『At The Organ』のジャケット素材を反転してジャケに使っているあたりもヤクザな成り立ちを想像させ、別名義グループの過去曲が含まれていたり、一定の水準を備えた楽曲たちの集まった経緯も気になるところだ。クレジットされた作家陣は別掲のエリック・ダンバー盤とも重なる。

 

REALITY 『Disco Party』 TSG/Pヴァイン(2021)

上掲のコーナー・シティ・ギャングと同じく実体がないプロジェクトと思しきリアリティ(という名前も皮肉な……)のアルバム。まるで躍動感のない適当なジャケがまず最高だが、疾駆する“Disco Party (Let’s Have A)”からポジティヴな“Welcome”、ソウル・トレイン感丸出しな“Clap & Hustle”など、適当な曲名の付けられたグルーヴィーなインストはどれも楽しすぎて困る。