レアなシングルCD
CD時代になってからはシングル盤の大半がルパン案件になるので、バージョン違いやカラオケなどを除けばほとんどの楽曲がサブスクで聴くことが可能です。以下では数少ない未サブスク化シングルを2枚紹介します。
ザ・キングトーンズ『DANCING SUMMER NIGHT / AND EVERYTHING IS YOU』(90年)

ただでさえ好きなキングトーンズ(愛称キントン)とコラボしている俺得としか言いようのないシングルで編曲を担当。 メインの“Dancing Summer Night”は中野兼志という方との共同名義で大野色は希薄。ただし曲の出来は抜群で、ベン・E・キング~ドリフターズあたりを彷彿とさせるソウル歌謡の傑作です。一方、カップリングの“And Everything Is You”は一聴して大野サウンドとわかる極上のメロウドゥーワップ歌謡。とくに間奏でのサックスとストリングスが華やかに舞い上がるアレンジには〈よっ、待ってました!〉と声を掛けたくなるほど。
どちらの曲も文句なしのクオリティーなのに、サブスクどころかキントンのアルバムにすら収録されずに埋もれてしまっているのが哀しすぎる。乞う再発。
サーカス『掛川市歌』(2006年)

平成17年の町村合併によって新たに生まれ変わった掛川市を記念して制作されたCD。同じ静岡県の熱海市出身ということで大野さんが作編曲を受け持っています。「小さな旅」系統の叙情的なメロディーが(掛川市民でもないのに)愛郷心をくすぐる美しい佳曲で、カラオケとインストバージョンも収録。
サーカスは“Mr.サマータイム”などでお馴染みの男女混声コーラスグループ。彼らは前年(2005年)にリリースされた大野雄二のセルフカバーアルバム『Made In Y.O.』にも参加しているほか、84年のシングル『スターダストの海/Yellow Bird 空へ』も両面が大野さんの作編曲で最高なんですが、話がズレるのでまた別の機会にでも。
ところでこのCDは一般流通はしていないものの、なんといまも掛川市役所企画政策課にて販売しているのです(市役所のHP参照)。でも近隣に住んでなきゃ無理じゃんと思うでしょうが、じつは郵送対応もしてくれます。定額小為替を購入するなどややハードルは高いですが、気になる方は問い合わせてみてください。
想定していた文字数をかなりオーバーしてしまいましたが、最初に定義した〈レアCD〉はこれでおおよそ紹介出来たはず。だいぶオタク的な記事になってしまった気もしますが、これに懲りずにそう遠くないうちにまた別のテーマで第2弾もお届けしたいと思っています。
PROFILE: 北爪啓之
72年生まれ。99年にタワーレコード入社、2020年に退社するまで洋楽バイヤーとして、主にリイシューやはじっこの方のロックを担当。2016年、渋谷店内にオープンしたショップインショップ〈パイドパイパーハウス〉の立ち上げ時から運営スタッフとして従事。またbounce誌ではレビュー執筆のほか、〈ロック!年の差なんて〉〈ろっくおん!〉などの長期連載に携わった。現在は地元の群馬と東京を行ったり来たりしつつ、音楽ライターとして活動している。NHKラジオ第一「ふんわり」木曜日の構成スタッフ。