
再評価、そしてさらなる回帰へ?
コロナ禍を経ての2021年、彼女は、ブリンク182のドラマーでありプロデューサーとしても活躍を見せていたトラヴィス・バーカーが主宰するレーベル、DTAに移籍。トラヴィス自身とゴールドフィンガーのジョン・フェルドマン、アヴリルの新たな交際相手と報じられたシンガー・ソングライターのモッド・サンことデレク・スミスの三者が、バンドを兼ねて全面的にバックアップする形で、7作目『Love Sux』(2022年)を完成させる。ポップ・パンクのキーパーソンであるトラヴィスの関与が予告していたように、デビュー20周年の記念すべき年に登場した『Love Sux』では、マシン・ガン・ケリー(現MGK)やブリンク182のマーク・ホッパス、ブラックベアといったゲストを含めて、全編をポップ・パンク色で統一。ルーツ回帰の痛快なロックンロール・アルバムとなった。折しも音楽界ではポップ・パンクのリヴァイヴァルが起きており、ミート・ミー・アット・ジ・アルターら新世代のポップ・パンク勢、もしくは、オリヴィア・ロドリゴからヤングブラッドに至るポップ・パンクを愛して育った若手アーティストたちがアヴリルの及ぼした影響を語るなど、彼女が果たした役割の大きさを強調する声は、『Love Sux』のリリース、そして『Let Go』のアニヴァーサリー・リイシューを受けて、高まるばかり。そうした状況下で『Greatest Hits』を送り出すアヴリルは、オール・タイム・ロウやシンプル・プランを前座に従えて、ずばり〈Greatest Hits Tour〉と題されたツアーを現在敢行しており、これまた意外にも初めてとなる、〈グラストンベリー〉のステージにも立つ予定だ。
そしてこれに先立つ5月には、ナッシュヴィルで開催されたACMアワード(アカデミー・オブ・カントリー・ミュージックが主催するカントリー界の主要な音楽賞のひとつ)に姿を見せたアヴリル。この夜、最優秀新人男性アーティスト賞に輝いた気鋭のニューフェイス、ネイト・スミスのヒット曲“Bulletproof”に彼女がゲスト・ヴォーカルを添えるリミックス・ヴァージョンを、二人でお披露目した。
ほかにも最近では、2022年に同じくACMが主催した、カナダ出身のカントリー歌手、シャナイア・トウェインの功績を讃えるトリビュート・コンサートにも参加。実はアヴリルは14歳のときに、シャナイアが企画した歌のコンテストで優勝して彼女と共演して以来、ずっと交流を続け、ロールモデルにしてきたという経緯がある。シャナイアのアイコニックな衣装を意識したレパード・プリントのドレスを纏って、きりりとこぶしの効いたカントリー・ヴォーカルを堂々と披露したアヴリルを、「あなた、真剣な話、カントリーをやるべきだったのよ!」とシャナイアは賞賛。間違いなくカントリーの世界へと接近しており、さらにネイトとアヴリルが今回のコラボを機に他にも曲作りを行っているとも報じられている。そうした情報を踏まえると、ポップ・パンクの次はさらに音楽的ルーツを遡ってカントリーに立ち返るというシナリオも、十分に考えられるのではないだろうか? *新谷洋子