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ニューオーリンズR&Bと異なる夢幻的サウンドや5音階メロディー

アルバム『Southern Nights』の音楽も、基本的にはアランとザ・ミーターズが生み出してきたファンキーなニューオルリンズR&Bの延長戦上にある。コクのあるリズムとアランの温かみあるボーカル。ベースラインやキーボードのフレーズがキャッチーで、歌より先に曲のアイコンとなっていることが多いのも、アランのコンポーザーとしての特徴だ。“What Do You Want The Girl To Do”はそんなアランの作風を代表している。

だが、アルバム表題曲の“Southern Nights”だけは他の曲とまったく異なっていた。パーカッション以外はアラン一人の多重録音、フェンダー・ローズとアコースティックピアノ、そして、レズリースピーカーを通したアランのボーカルが夢幻的な空間を生み出している。メロディーはどこか東洋的な5音階が使われている。

実はアラン・トゥーサンが1988年に初来日した時、インタビューの機会を得た僕は彼に質問している。“Southern Nights”のあの5音階のメロディーはどのようにして生まれたのですか?と。するとアランは子供時代に船乗りだった叔父からもらったオルゴールのメロディーがもとになったと教えてくれた。オルゴールは韓国のものだったそうだ。

アランはそのオルゴールの東洋的な5音階のメロディーからイマジネーションを膨らませて、“Southern Nights”を書き上げた。歌詞には彼の子供時代の思い出――ルイジアナ奥地の親戚の家を訪ねた時に見上げた夜空――が描かれている。そこにはアランの平和への想いが滲み出ているようにも僕は感じる。

 

ジャンルを超えたクラシックの輝き

自身が書いた曲の中でも最も思い入れ深いのは“Southern Nights”であると、アランは語っていた。アランは膨大な数の曲を書き残したソングライターだが、こんなタイプの曲は他にない。ヴァン・ダイク・パークスとの会話の後で、何かが降りてきたのだろう。そして、この曲を中心に置くことで、アルバム『Southern Nights』はアランの自伝的な色あいも持つシンガーソングライター作品となった。

“What Do You Want The Girl To Do”も心優しいジェントルマンだったアランの人柄が現れた曲だ。数多いカバーを生んだのは、〈彼女は君を愛している。君は彼女のことをどうするつもりなんだい?〉と友人に問いかける歌詞の魅力も大きいだろう。

ニューオルリンズの音楽が好きな人ならば、アラン・トゥーサンの名前を知らないはずはない。だが、『Southern Nights』というアルバムはジャンルを超越したクラシックの輝きを持つ。とりわけ、表題曲は地域も時代も超えた特別な空間に聴くものを誘い込む。音楽の不思議さの結晶のような曲だ。50周年を機会に、もっと多くの人に聴かれて欲しいと思う。