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NewJeansハニもカバーした象徴的名曲“シーズン・イン・ザ・サン”

とはいえ勿論、このアルバムでのシンセサイザー/キーボードの活用はまだまだ少ないのだが、鍵盤楽器を効果的に取り入れ、メロウネスと疾走感を両立したナンバーは本作にも存在する。それが、本作の核であり、TUBE史全体をも象徴するナンバーのひとつ、“シーズン・イン・ザ・サン”だ。

作曲を手掛けたのは、当時洋楽志向のリスナーも満足させるロックサウンドを展開していた、後に稀代のソングライターとして名を馳せることになる織田哲郎。前述の通り、背水の陣で臨んでいたメンバーが幾度も書き直しを要求した末に完成したと言われる本曲は、TUBEのキャリアを救うのみならず、織田のヒットメイカーとしての第一歩ともなった。

サビの手前で前田の圧倒的歌唱を誇示するように演奏がピタッとブレイクし、16ビートの軽快かつセンチメンタルなメロディへと雪崩れ込む――そのダイナミックさと無駄のない洗練された演奏の組合せは、さながら昨今シティポップ文脈で一大ムーブメントを巻き起こした松原みき“真夜中のドア〜stay with me”にも通じるものがある。

“シーズン・イン・ザ・サン”は近年NewJeansハニのカバーで話題を集めたものの、TUBEという看板の圧倒的現役感・メジャー感も相まって、松原ほどの再評価の波は今のところ訪れていない。ただ、もし仮に彼らが90年代以降のセールス黄金期を迎えていなかったとしたら、本曲がよりヒップなものとして新たな角度から脚光を浴びた可能性は高いだろう(良かれ悪しかれ、〈リバイバル〉にはこうした側面は必ず付きまとう)。

なお、“シーズン・イン・ザ・サン”は、いまだに当時の12インチシングルでしか聴くことができないリミックス版(Special Remixed Seaside Version)が存在する。原曲にないアコースティックギターのフレーズの挿入、パーカッションの強調に加え、サビではなんと〈Stop〉のフレーズで楽曲が数秒ストップするギミックも盛り込まれた、私自身何度となくDJでプレイしたJ-POP史上最高峰のバレアリックダンスチューンだ。40年の時を越え、初のCD化・配信解禁を願ってやまない。

 

のちのビーイングサウンドの方程式やラテンテイストも含む重要作

ここまでの通り、本作は〈夏のTUBE〉というイメージを確立するきっかけとなり、現在まで続くスタイルの輪郭が初めて見え始めた作品と言える。最後に、その他の収録曲についても触れておきたい。

本作以前のアルバム収録曲で顕著だったサックスの使用は、タイトルチューンをはじめ本作でも随所で垣間見える。その代表格が、ハードな演奏が際立つ高速チューン“夏の住所はON THE BEACH”と、オールディーズ的な雰囲気が漂う“あの娘に急上昇”だ。前者はその疾走感も相まってブルース・スプリングスティーン以降のアリーナロック〜のちのビーイングサウンドの方程式を思わせ、後者は当時国内外で長らく続いていた50年代リバイバルや、メジャーシーンのボーイズバンドの手本のひとつだったチェッカーズを思わせる。こうした背景をつい探りたくなる2曲が、いずれも長戸大幸の作曲というのも面白いところだ。

また、グルーヴィなロックチューンである“Right On!”も要注目だ。過去のシングルに見られたファンカラティーナ的な要素を引き継ぐこの曲は、90年代に“あー夏休み”“さよならイエスタデイ”“ガラスのメモリーズ”“だって夏じゃない”といった大ヒットシングル群で隆盛を迎える、TUBEならではのラテン歌謡的な流れを断絶させなかったという点で隠れた重要曲に思える。他にも、タイトル曲のテイストを引き継ぐ軽快で爽やかな“Have a nice trip”は次年リリースの“SUMMER DREAM”も彷彿させる仕上がりで、まさに〈“シーズン・イン・ザ・サン”を擁するオリジナルアルバム〉である本作ならではのナンバーだろう。

『The Season In The Sun』は、完成された〈夏の王者〉としてのTUBEを提示した作品ではない。ルーツに根差したロック/ソウルの衝動、音楽産業の瀬戸際まで追い込まれた者たちの執念、後に時代を築く面々の才能の萌芽――それらが渾然一体となりリスナーに迫る、過渡期ならではの一瞬の煌めきが閉じ込められた魅力的なオリジナルアルバムである。