継承される『Off The Wall』フィーリング
控えめに言っても、90年代以降のR&Bや、ボーイズ・バンドのようなアーバン・オリエンテッドなポップス全般はマイケルの強い影響下にあるわけで……フォロワーたちの作品や、サンプリング/カヴァーやオマージュといった折々のリサイクル例は定期的にまとめてきていることもあって、今回はそことの重複を避けつつ、より『Off The Wall』寄りなものを紹介しておく。bounceの過去記事はバックナンバーや〈tower.jp〉、こちらでも振り返っていただくとして、それ以上は書籍「新R&B教室 マイケル・ジャクソンでつながる ソウル/ブギー・ディスク・ガイド1995-2016」をチェックすればバッチリのはず!

マイケル本人に認められた天才児ながらもいろいろ遠回りしてしまったクリスだが、野心的なステージングも含めた歌と肉体の躍動という部分ではいまも後継者No.1と言えるだろう。本作のデラックス版に収録の“Fine China”(2013年のシングル)は曲調も含めてポスト・マイケル感を珍しくモロ出しした一曲だ。

それ以前のヒット“Because Of You”や“Nobody”では繊細な歌唱と麗しいメロディーメイクによって素直な敬愛を表現し、マイケル本人から曲作りの依頼もあったというニーヨ。マイケル逝去後の本作はトリビュートの意識で制作に臨んだそうで、直球の“Cause I Said So”のみならず随所で影響をさらけ出している

グループからの独立というシチュエーションにマイケルと自身を重ねたソロ・デビューの時点で、後継者としての風格を認められていた彼。長い空白を経て出した今作では、『Off The Wall』でのクインシーを意識したというティンバランドの采配の下、ロウな肉感と未来的な意匠が融合したスタイルを聴かせてくれる。
デ・ラ・ソウルのネタ使いに端を発し、90年代以降の『Off The Wall』の評価を盤石にしたのが幻想的な木漏れ日チューン“I Can't Help It”。その知的なメロウネスと螺旋の旋律はジャズ方面での解釈欲をそそるようで、グレッチェン・パーラトやテラス・マーティンらと同じく本作でも仄温かいカヴァーを堪能できる。

いわゆる〈ヒット・チャートもの〉のセンスの良いオマージュで聴かせるのが巧い彼も、究極の目標はもちろんマイケル。本作に収録されている“Treasure”は“Rock With You”への敬愛が爽やかに滲むヒットで、ブギー・リヴァイヴァルにも先鞭を付けた。

90年代にも数多く生まれたマイケル・フォロワーだが、そのなかでセックス・シンボル的な独自性を追求してワナビーの枠を飛び越えたのがこのアッシャーだ。アルバムはご無沙汰ながら、近年のパーカッシヴな“Good Kisser”に至るまでマイケル的な快感を備えた曲は多い。

生前のマイケルに寵愛され、3曲を書き贈っていたR・ケリー。『Love Letter』では“You Are Not Alone”を作者としてセルフ・カヴァーしていたが、この最新作に収録の“Keep Searchin'”では“The Lady In My Life”を借景して熱烈なアドリブでオマージュを捧げている。

ネプチューンズは殿下寄りの色合いが濃かったものの、ソロではマイケル作法の表出が多い? 古今のオマージュで形成されたこのヒット作では、ジャスティン・ティンバーレイクとの“Brand New”がリズムの奔流もろとも『Off The Wall』的!

西海岸フュージョンの大御所たちを招いたことで、必然的にマイケル感も強めになった作品。顔ぶれは『Bad』期を思わせる陣容ながら、ジョン・ロビンソンのドラムは『Off The Wall』作法。マイケル版の“Behind The Mask”とも聴き比べてほしいところだ。

生前のマイケルとも親交が深かったマライア。本作には“Off The Wall”を流麗に歌い込んだ“I'm That Chick”も収録されているが、楽曲の格を引き上げるヴォーカリゼーションに対しての美意識はマイケル譲り。紆余曲折を経て現在は彼のレーベルメイトでもある。

フェノメナルなスケール感という意味でもマイケルに近い域に達した彼女。ここで披露する“Lay Up Under Me”は作者のショーン・ギャレットが発表した曲のカヴァーとなり、“Off The Wall”を思わせる意匠で伸びやかに聴かせる。