梅雨空のリイシューに涙をまかせて
ごく一部の越境した作品だけ称揚される風潮がいよいよ本格的になる一方、レアリティーの追求も進む昨今。ブラコンとかディスコとかアーバンとかいう言葉の一側面だけが偏った認識を広げるほど、なぜかグレン・ジョーンズのような存在がなかったことにされるのは……とか思ったりすることが多いのです。別にええけど。
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ってところで、本文にも名の出てくるピーボ・ブライソン。過日の『Paradise』に続き、今度は82年の隠れ良品『Don’t Play With Fire』(Capitol/PTG)が世界初CD化です。後のディズニー主題歌の大ヒットから無害なバラードのイメージが固定されてしまった人ですが、鬼メロウな洒脱ミディアム“Give Me Your Love”など、MOR手前の気取ったムードが素晴らしいんです。ありえないジャケのセンスも含めて、こういうのがリアル80年代だと思いますわ。
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ブラコンの括りだとジェニー・バートンの85年作『Jenny Burton』(Atlantic/DIZZARE)も聴き逃せない出来で、端正なミディアム“Let’s Get Back To Love”などモーリス・スターの手によるスクエアな打ち込みと濃厚な歌唱の絡みがいい感じです。
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で、話はガラリと変わって……フィリー・スウィートの至宝、ブルー・マジックの77年作『Message From The Magic』(Atco/DIZZARE)がやっとCD化されたのもデカいトピックです。スキップ・スカボロー制作でEW&F人脈も招きつつ当時は不発に終わったというブツですが、いま聴けばEW&Fノリの快いミディアムから絶品のフィリー・ダンサーまで満載した極上盤としか言えません!
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フィリー系ではパティ・ラベルの78年作『Tasty』(Epic/BBR)も増量盤で復刻されました。ケバい妖しさの咲き乱れるディスコ・ヒット“Eyes In The Back Of My Head”など多彩な意匠が楽しめます。
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で、最後はキャロリン・フランクリンの最終作となった76年作『If You Want Me』(RCA/BBR)の世界初CD化をお知らせ! 姉アレサの“Ain’t No Way”や“Angel”などを書いた非凡なソングライターだけに自作メインの曲の良さはもちろん、歌い手としてのソウルフルかつ繊細な力量も堪能してほしいです。