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◆北野 創

鷺巣詩郎 アニソン録 プラス。 キング(2018)

多様性と画一化について考えさせられることの多い昨今、鷺巣詩郎のアニメ音楽仕事(+アルファ)を集めたこの4枚組に触れて、80年代のデジタル・サウンドからジャズ、クラシックをも包括するその音楽性に、歌謡曲の時代から続く日本のポップスの多様性を感じて感銘を受けた次第。というかbmr誌の連載を含め、彼の仕事がいかに自分の音楽人生に影響を与えたのか、改めて気付いた面が大きい。そして最新作となる「SSSS.GRIDMAN」の劇伴もやっぱり凄かった!

 

◆久保田泰平

ムッシュかまやつ ゴロワーズ(+1) ブリッジ(2018)

〈+1〉されての嬉しいリマスター。オリジナルが出た94年当時はこれでもかと聴いていた盤で、ゴロワーズの煙草も吸ってたぐらい影響されたのに、〈嬉しい〉って言ったわりには近頃そんなに聴くことがなく、ムッシュが亡くなられた時も偲んで真っ先に聴いた作品っていうわけじゃなかったのですが、この機会に久々聴いたら痺れました。で、これを作った時のムッシュの年齢に自分がかなり近付いている事実にも若干痺れて……。

 

◆桑原シロー

DAVID CROSBY Here If You Listen BMG Rights(2018)

ヴェテランだとボブ・ディランやヴァン・モリソンの活躍ぶりに目が奪われがちだけど、華麗なる復活を遂げてコンスタントに良作を発表している彼の存在も忘れちゃいけない。このところ協力体制にあるベッカ・スティーヴンスやスナーキー・パピーのマイケル・リーグらとガッチリ組んで制作した本作は、〈ジャジーなフォーク・アルバム〉の最高峰と言えるほど途轍もなく美しい名品だった。完璧なコーラスワークに多くのファンが往年のクロスビー・スティルス&ナッシュを連想したはず。

 

◆郡司和歌

D.A.N. Sonatine SSWB/BAYON PRODUCTION(2018)

〈フジロック〉出演をはじめ、UKでのライヴやアジア・ツアーなど、国内外を問わず幅広い活動が印象的だったD.A.N.の2018年。この2作目もドラムスとベースはよりタイトに重厚に、色香を添える歌声はより艶やかにロマンティックに、〈ジャパニーズ・ミニマル・メロウ〉と称される彼らのサウンドがさらに深化してスケール感を増し、まさに世界行きの意欲作だった。静かに燃え広がるメランコリックな音像にも心震えるばかり。おそらく2019年は海外のクラウドをもっと沸かせることになるだろう。

 

◆澤田大輔

COLORED MUSIC INDIVIDUAL BEAUTY ORGANIC/Solid(2018)

バレアリックやアンビエントの文脈で80年代のさまざまな国産音源の発掘が進むなか、藤本敦夫と橋本一子のユニットによるお蔵入りしていた83年作が音盤化。ハウス誕生前のシカゴ・ハウス“Heartbeat”の未発表版をはじめとするカテゴライズ不能のファンキーでエスノな楽曲が、オーパーツのような謎のフレッシュネスを湛えております。なお、同ユニットの初作『COLORED MUSIC』や橋本一子のソロ作も続々とリイシュー。まとめて刺激を受けまくりました。

 

◆柴田かずえ

YVES TUMOR Safe In The Hands Of Love Warp Records/Beat Records(2018)

私的インパクト大賞はこれ! 奇抜なヴィジュアルはもちろん、突然のワープ入りにも驚いたが、ショーン・ボウイがイヴ・トゥモア名義で発表したこのアルバムは、引き続き大人気だったブレインフィーダー好きの心もガッツリ掴むはずの刺激が満載。狂気の沙汰の咆哮も悪夢的なリズム展開やループも実は計算し尽くされていて、目眩を起こすほどの昂揚感/陶酔感があり。エレクトロもエモもゴスもゴチャ混ぜな衝撃作の誕生を目の当たりにした平成最後の冬なのでした。

 

◆ダイサク・ジョビン

DAVID BYRNE American Utopia Nonesuch/ワーナー(2018)

ボラ・デ・ニエヴェの編集盤『Una Biografia』と迷ったけどコチラで。不穏な世界情勢のなか、右向け右、左向け左で余計火に油を注ぐ(誰かさんの思うツボ)のではなく、〈いまの世界に我々は満足していない、では別の道があるんじゃないのか?〉と本作で冷静に問い掛けてくるこの人は、やっぱりパンクでクレヴァーで信頼できるな~と。このご時世に、〈陽気になれる理由〉という楽観主義に関してのレクチャーを開催したりするところも。

 

◆田山雄士

ArtTheaterGuild HAUGA ROCKBELL(2018)

〈#ひとつの時代が終わった〉なんていうしょうもないハッシュタグがあるけど、本当に変わりますね。音楽シーンも終焉を感じることは多め。テイラー・スウィフトみたいな毅然とした表現者、もっと日本からも出てきてほしい! 常識の呪縛に囚われず、ナチュラル&本気で楽しくやっている人がやっぱり好きです。そんななかArtTheaterGuildは飄々と抜群のオルタナ・センスを突き詰めていってくれそう。タイトルは〈ホウガ〉と読みます。山中さわお(the pillows)のプロデュース。

 

◆長澤香奈

Althea 白紙に返して the encouraging folk(2018)

10代のみが出場できる〈未確認フェスティバル〉で2016年のファイナリストに選ばれた3人組のタワレコ限定盤。鋭く畳み掛けるダイナミックな展開が気持ち良い表題曲と優しく切ない“Miami”、そして代表曲のアコースティック・ヴァージョンを収め、バンドの魅力を凝縮(ゆーへーの色気のある歌声も◎)。同フェスも4年目を迎え、初代王者のShout it Outの解散やKIDS'Aというバンドでセミファイナルまで残った崎山蒼志のブレイクなど、何かと話題の多い一年だった。