
こちらはハイ時代の全シングルAB面をまとめた編集盤で、8つあるオリジナル・アルバム未収録曲も当然すべて楽しめる。盤石のハイ・サウンドが堪能できる初期ももちろん良いが、セルフ・プロデュース路線の洒落たファンク“Fonk You”や“That Wiggle”、唐突な“Stand By Me”カヴァー、ウィリー制作のミディアム佳曲“Main Squeeze”など、レーベル末期の試行錯誤も聴きどころ。 *出嶌

ハイ崩壊後に自身の主宰するシャマから『Brings Out The Blues In Me』(80年)を出し、それに続いたのがジェイムズ・コットン・バンドを従えてシカゴで録音した本作。野太いベースが強力な表題曲はラップ風の歌唱も披露したシル流儀の粘っこいディスコ・ファンクだ。ビル・ウィザーズの“Lovely Day”を連想させる快活な“Sweet Thing”、ハイ時代の再演となる“It Ain’t Easy”も。 *出嶌

シルヴェスター・ジョンソン名義の『Foxy Brown』(88年)以来となった、シカゴ・ブルースの老舗デルマークからの前線復帰作。ホッジス3兄弟とハワード・グライムスによるハイ・リズムを従え、“Take Me To The River”や“Watch What You Do To Me”などの再録も交えてソウルフルな歌とギターが冴え渡る円熟の名品。愛娘シリーナを前に出した“Dipped In The Water”も聴きもの。 *出嶌

地元愛を表現したデルマークでの2作目は、『Back In The Game』に続いてピート・ネイサンをプロデューサーに迎えた大らかなブルースを聴かせる。ギター・プレイも交えて代表曲をリメイクした“Diff’rent Strokes(B.E.T.)”、“Surrounded”(66年)の再演、自身がギターを教えたマジック・サムの“All Night Long”、サム・クック風の“Caribbean Beach”など多彩なレパートリーが楽しい。 *出嶌

シャマ音源集『Goodie Goodie Good Times』(79年)を出すなど古くからシルと縁深かった日本のPヴァインによる編集盤。本人提供の蔵出し音源が満載で、特にダニー・ハサウェイがアレンジした76年録音のグルーヴィーな3曲はまた違うシルの魅力を引き出している。15歳のシリーナがド迫力の歌唱を聴かせる93年録音の初デュエット“Theme Song”など、どの音源も貴重で興味深い。 *出嶌

MELODY & SYL JOHNSON’S OLD SOUL BAND 『The Rebirth Of Soul』 Twinight/Pヴァイン(2011)
シルの豪州ツアーに参加したオーストラリアの女性シンガーがシル率いるバンドと吹き込んだ新生トワイナイト発のアルバム。管弦を擁するバンドにはウィリー・ヘンダーソン(サックス)などシカゴの名手が集い、シルのほか、グウェン・マックレー、バーバラ・アクリン、タイロン・デイヴィスらの名曲を洒脱なサウンドと軽やかな歌で聴かせる。シルはギターに加えてハーモニカもプレイ。 *林

2012年に7インチ“The Makings Of You”を出した流れで、自身のバンドを従えたシルが全面プロデュースを手掛けた、愛娘のソウル・カヴァー集。シカゴ絡みの曲を中心に父のレパートリーからは“We Did It”と“Is It Because I’m Black”(2009年の既発音源)が披露されている。2014年の〈フジロック〉出演後には新作リリースの確定情報も出たシルだったが、これが最後の大仕事となった。 *出嶌