USインディを背負うダッドとして
――新作に話を戻すと、これまでどおりマットのパートナーであるカリン・ベッサーが作詞に参加しています。
木津「そこも含めて、家族ぐるみでマットを支えたアルバムですよね。以前、本人たちは〈ザ・ナショナルはいつまであるかわからない〉と言っていましたが、これだけの危機を乗り越えたのだから、これからも続いていくバンドだと思いました。
アーロンの活躍を見ていて、バラバラになってもおかしくないと思ったし、こういうタイミングで終わってしまうバンドはいるはず。メンバーが50代になって、派手ではないけど長く聴いてきたリスナーにもしっかり届く作品を作り上げたことが、ザ・ナショナルの魅力だと改めて思いました」
――チャートアクション的には以前ほど成功していませんが、リハビリ的な意味合いもあるだろうし、重要な作品だと思います。
岡村「パンデミック下で自分たちの原点や居場所を再発見して、ファンもそのことに気づいた、すごく大事なアルバムだと思います」
木津「あとはもう、とにかく来日してほしいですね(笑)」
――開催中のツアーのサポートアクトがいいんですよね。サッカー・マミー、ザ・ベス、バーティーズ・ストレンジ、ハンド・ハビッツというラインナップです。9月には主催フェス〈Homecoming〉も復活しますし。
岡村「バーティーズ・ストレンジはザ・ナショナル・ワナビーですから(笑)。ザ・ナショナルのメンバーも、そういう後輩たちを思いやって、ちゃんとフックアップしようとしていますね」
木津「そこはやっぱり、ウィルコの次を担うシーンのダッド的な存在ですからね。マーチの〈Sad Dads〉のパーカーが欲しかったのですが、円安で買えませんでした(笑)」
You asked for it...
— The National (@TheNational) October 13, 2022
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――〈New Order T-Shirt〉も笑えるマーチでしたね(笑)。

岡村「ニュー・オーダーのグッズとまちがって買う人がいそう(笑)。“New Order T-Shirt”も、日常的な感覚が素直に出たいい曲ですよね」
木津「ニュー・オーダーの音楽へのリスペクトと愛情がストレートに表れた、いい曲ですよね」
――8月にはマディソン・スクエア・ガーデンでパティ・スミス・バンド、U.S.ガールズと対バンします。
木津「パティ・スミス・バンドと! すごいですね。っていうか、U.S.ガールズ、見たいな~。僕がここ数年ずっと推しているのは、U.S.ガールズとリチャード・ドーソンです。それぞれカナダとUKのアーティストですが……」
新世代に受け継がれるUSインディ
――最近のUSインディについてはどうですか? ボーイジーニアスがアルバム『the record』を3月に出したことが話題ですが、私はウェンズデイがデッド・オーシャンズからリリースした新作『Rat Saw God』に感動しました。
木津「ウェンズデイはカントリーの要素が〈今〉って感じだし、これから盛り上がっていきそうですよね」
岡村「フー・ファイターズが新作を出しますし、本国では若い世代がスマッシング・パンプキンズを聴いているそうです。90年代デビュー組がしぶとく活動している傍ら、あまり注目はされないですけど、アニマル・コレクティヴのパンダ・ベア、グリズリー・ベアのクリストファー・ベアとダニエル・ロッセンも個別に活躍していて、2000年代にひとつの成果を上げたグループの現在もちゃんと評価したい感じです。
とはいえ、私自身、素直に夢中になるUSインディはどうしてもシンガーソングライター、ソロプロジェクトが中心になってしまう。ジョアンナ・スタンバーグのファット・ポッサムへの移籍第1弾アルバム『I’ve Got Me』も楽しみですし、フィービー・ブリジャーズのレーベルであるサッデスト・ファクトリーからデビュー作を出したクロードの新作『Supermodels』も控えていますね。テキサスのヘイデン・ペディゴやヤナ・ホーン、LAのコリー・ハンソンやジョアンナ・サミュエルズの新曲も良かったです。相対的にLAはずっとおもしろいですよね」
木津「僕は、ファイストのひさびさの新作『Multitudes』がよかったと思います。あれもパンデミックアルバムで、北米のインディアーティストはパンデミックを総括するタイミングなのでしょうね。
それと、アーケイド・ファイアが大変なことになってしまったので、ある意味、ザ・ナショナルが北米インディシーンの大きな部分を負わなければならなくなったようなところもある。それがのしかかってきたことは、ちょっと不幸だったかもしれません」
――アーケイド・ファイアのウィン・バトラーによる性加害問題が告発された件ですね。
岡村「ファイストは、アーケイド・ファイアのツアーから離脱しましたね。問題の真偽はまだわからないにしても、彼女の立場的にそうせざるをえなかったとは思います」
木津「アーケイド・ファイアの『Neon Bible』とザ・ナショナルの『Boxer』が同時期にリリースされた2007年は、北米インディシーンのターニングポイントだったと思うんです。それから15年経った今、ある意味でザ・ナショナルが重いものを負うことになってしまった」
岡村「例外的にバンド編成を保っていてメンバーも変わらず、悪い噂もトラブルもないままクリーンなイメージとクオリティを担保しているのは、奇跡的ですよね。あらゆる面でザ・ナショナルに続くバンドは、今もなかなか出てこない。ですが、ビッグ・シーフがそこに続きそうな感じはします。メンバー全員、仲がいいから結束力もありますし」
――フリート・フォクシーズはどうですか?
岡村「フリート・フォクシーズは、ロビンのソロプロジェクトみたいになっちゃいましたけど、その分カリスマ性が増してきました」
木津「一方、ファーザー・ジョン・ミスティはラナ・デル・レイ周りとつるみつつ、アメリカーナの複層的な解釈に挑んでいる。USインディは今、様々なものが点在していて、中核が存在しないのかもしれません。だから、日本に紹介するのが難しい(笑)」
岡村「アレックス・Gの来日公演がどう盛り上がるかが楽しみですね。コーチェラの配信で見たライブがすごくよかったので。彼の場合、歌詞を含めて紹介しないといけないのですが」
木津「飄々とした人ですからね。UKですが、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの来日公演は超満員で、ファンが育っているのを感じました。ロックを聴く若者が増えている印象です」
岡村「私も見に行きました。インディロックを聴く世代が交代しているのを感じますよね」
木津「BC,NRはアイザック・ウッドが脱退したことで心配していたのですが、6人になってからのほうが存在として好きかも。男女半々のメンバー構成で、支え合っている感じがおもしろい。さらに、その過程を見せていて、すごく愛おしいバンドになってきている。希望を感じます」
岡村「連帯感が表れていますからね。USではビッグ・シーフのブレイクが大きかったわけですが、近年はブライト・アイズ周辺で知られるオマハのレーベル、サドル・クリークから新しいバンドがどんどん送り出されていることに注目しています。元はと言えばビッグ・シーフも所属していましたし、近年だとメグ・ダフィーによるユニットのハンド・ハビッツもいいですよね。6月に出る新作『Sugar The Bruise』は、ファット・ポッサムからですが。
それに、マージやマタドール、ドラッグ・シティやスリル・ジョッキーといった、老舗のインディレーベルがブレずに活動を続けていて、ここに来て新しいアーティストをちゃんとフックアップしようとしている。それは、重要な動きだと思います」
木津「世代が変わっても、以前からの価値観が新しい形で受け継がれているんですよね」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2023年4月28日
■国内盤CD
品番:4AD0566CDJP
価格:2,640円(税込)
解説+歌詞対訳/ボーナストラック追加収録
■国内盤CD+Tシャツ
品番:4AD0592MRJP
価格:7,590円(税込)
■限定輸入盤LP(レッドヴァイナル)
品番:4AD0566LPE
価格:4,390円(税込)
■輸入盤LP(ブラックヴァイナル)
品番:4AD0566LP
価格:4,390円(税込)
TRACKLIST
1. Beautiful Head
2. Cold Girl Fever
3. The Perfect Song
4. American Mary
5. Son
6. Pay For Me
7. Bitters & Absolut
8. John’s Star
9. Watching You Well
10. Theory Of The Crows
11. 29 Years
12. Anna Freud

