現代版アシッドジャズが盛り上がる今、出来る事は何か?
その後アシッドジャズブームは沈静化し、ポップ/ソウル/ヒップホップのレジェンドとしてサヴァイヴした者、解散や活動休止してしまう者とその明暗が分かれてしまう。2000年代にフューチャージャズやブロークンビーツといった新たなジャンルが勃興し、ある意味アシッドジャズの後継的存在として脚光を浴びるが、2010年代にはそれらも霧散してしまう。
しかし、現在、トム・ミッシュのような現代版アシッドジャズとでも言うべき存在が人気を博し、ヌバイア・ガルシア、エズラ・コレクティヴといった南ロンドンのジャズが世界的に注目を集めているのは、あの頃の音楽を聴いて育った世代が、アーティストとして大成する時代が到来したと考える事もできる筈だ(実際にトム・ミッシュは1990年代の音楽を聴いて育ったと僕に打ち明けている)。
そして、あのガリアーノが27年ぶりに再始動し、ニューアルバムを引っ提げ各地のフェスでパフォーマンスを繰り広げている。この初夏にKyoto Jazz Massiveも30周年記念EPをデジタルリリースし、僕自身もヨーロッパでライブ活動を行っている。今は、作曲家兼バンドリーダー、バッキングボーカルとして……。
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ガリアーノとKyoto Jazz Massiveが奇しくも同じ時期に活動を活性化させているのは偶然ではないかもしれない。ガリアーノのリーダー、ロブ・ギャラガーも僕も、アシッドジャズがブームとして消費された後もずっと現場に居続けたからだ。そして、若い世代に刺激を受け、今、我々が出来る事は何か? 今のオーディエンスに提案出来る事は何か?を僕は考えている。ロブもきっとそうだろう。
去年、イギリスのフェス、〈We Out Here〉には、ヌバイア・ガルシアもエズラ・コレクティヴもガリアーノもKyoto Jazz Massiveも揃ってメインステージに登場。1970年代のジャズやソウルを基調にしながら現代的なリズムを取り入れ、ヴァージョンアップさせたアーティスト達が世代を超えて結集したのだ。
これは単なるリバイバルではない
30年経って自分が現役でやれている事も十分奇跡的だと思うが、若いアーティストと同じ舞台に立ち、親交を深められている事に感激した。1994年に生まれた音楽はまだ健在で、30年後に子供の年齢と言ってもおかしくないアーティスト達と競合しているのだ。
結局、1970年代、1990年代、2000年代、2020年代と時代は変われど、〈エモーショナル〉で、〈生〉で〈ソウルフル〉な音楽は聴き続けられているのだと思う。時代は回ると言うが、これは単なるリバイバルではない。過去に敬意を払いながらも、皆がスパイラル(螺旋的に)上昇している。決して1994年には戻ってはいない筈。ひょっとすると1994年と同じ座標にいるかもしれないが、一つ、いや、いくつか上の階層にいると信じたい。それこそ、子供達の世代と一緒に。
PROFILE: 沖野修也
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選曲家/作曲家/作詞家/執筆家/ラジオDJ。Kyoto Jazz Massive名義でリリースした“ECLIPSE”は、英国国営放送BBCラジオのZUBBチャートで3週連続No. 1の座を日本人として初めて射止めた。これまでDJ/アーティストとして世界40か国、140都市に招聘されただけでなく、CNNやBillboard等でも取り上げられた本当の意味で世界標準をクリアできる数少ない日本人音楽家の一人。音楽で空間の価値を変える〈サウンドブランディング〉の第一人者として映画館、ホテル、銀行、空港、レストラン、インテリアショップ等の音楽プロデュースも手掛けている。2009年にはインテンショナリーズが設計したユナイテッド・シネマ豊洲の音楽監修でグッドデザインを受賞。2015年、ジャズプロジェクトKyoto Jazz Sextetを始動させる。ファーストアルバムをブルーノートよりリリース。2016年1月にポップアップ専門の書店Jazzy Booksを設立。2017年6月、Kyoto Jazz Sextetのセカンドアルバム『UNITY』を発表。同年、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉のステージ〈FIELD OF HEAVEN〉に出演。2018年7月にDJとして名門〈モントルー・ジャズ・フェスティバル〉に出演を果たした。2019年に店内音楽の選曲を担当した代々木上原のレストランSioがミシュランの1つ星を獲得している。著書に「DJ選曲術」や「クラブ・ジャズ入門」、自伝「職業、DJ、25年」等がある。現在、有線放送内I-12チャンネルにて〈沖野修也 presents Music in The Room〉を監修中。WorldwideFM「WW Kyoto」(毎月第2月曜放送)のレギュラー。「GQ Japan」のオフィシャルブロガー。2020年12月23日に渋谷ストリーム1FにオープンしたThe Room COFFEE & BARのクリエイティブディレクターでもある。
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