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韓国R&Bとも共振する海外トレンドとJ-POP的大衆性の両立

ティンバランド~ザ・ネプチューンズ風のトラックが冴える“WANT ME, WANT ME”“ALARM”、リル・ジョン系の王道クランクR&B“My Darling”、今作から安室奈美恵と邂逅し、以降数々の名曲を生み出していくプロデューサーNao’ymtとのデュエット“Ups & Downs duet with Nao’ymt”……様々なスタイルを貪欲に吸収し、ラッパーや他のアーティストの声が重なっても、安室奈美恵のボーカルは一切埋もれることがない。シンプルかつ磨きのかけられたトラックの上で、しなやかで翳りのあるあの声が響く。

通好みな国外のトレンドと、ドメスティックな大衆性を両立させるという、まさに〈ヒップでありながらポップ〉という矛盾――メジャー資本によるヒップホップの取り込み、という構図は、NENEとちゃんみなのビーフを見ても明らかなように、常に軋轢がつきまとう――を、真正面からポップミュージックに昇華している。

また、今、改めてこのアルバム、この時期の安室奈美恵を聴いて個人的に感じることは、現在の韓国産R&Bとの親和性の高さだ。母国語と英語を織り交ぜたボーカル、リッチなプロダクション先行のディレクションなどの共通点を見いだしながら、比較して聴いてみるのも面白いのではないだろうか。

韓国における安室奈美恵の人気と影響力についてはMISAMO“NEW LOOK”の記事も参照。例えば、『Queen of Hip-Pop』の前年にリリースされたUtada『Exodus』なども含めて、アジア人によるR&Bという試みについて再考してみてもいいだろう。

サブスクから完全撤退し、MVもネットで気軽に観ることは出来ない(ファンメイドの気合いの入ったステージミックスなどはアップされている)安室奈美恵の作品だが、やはり日本の芸能史〜ポップミュージックにとって非常に重要な存在であることには変わりない。今、改めて聴く、あるいは初めて聴くなら、ベストアルバムでもいいが、オリジナルアルバムならば、この『Queen of Hip-Pop』が実はベストかも知れない。