ドン・デイヴィスの転機は、いつもジョニー・テイラー(JT)がキッカケだった。いや、その逆も言えるだろう。それほどこのふたりは抜群の相性を示し、出す曲をヒットに結び付けてきた。
50年代からハイウェイ・QCズやソウル・スターラーズといった名門ゴスペル・グループで活動していたJT。サム・クックのサーにも在籍したが、ブレイクはスタックス入社後のこと。当初はブルース色が濃かったが、ドンと組んだ68年作『Who's Making Love』の表題となったファンキーなジャンプ・ナンバーが大ヒットし、これが双方にとっての転機となる。ジェイムズ・ブラウンのファンクに呼応しながらオーティス・レディングを継ぐようなスタイルをJTに仕向けたのはドンの手腕だ。この後もJTは、ブルージーで苦みばしった声を武器に、ヴァーサタイルにしてブラックネス溢れる曲をドンとの共同作業で送り出し、黒人コミュニティーにおけるアイコンとなっていく。73年作『Taylored In Silk』に収録の“I Believe In You(You Believe In Me)”は、そんな当時のJTを象徴する一曲と言っていい。
絶好調をキープしたままコロムビアに移籍し、ドンの企みでクロスオーヴァーを狙ったのが“Disco Lady”だった。〈ディスコ〉と言っても、いわゆるダンス・ナンバーではなく、Pファンク一派を起用した、まったりメロウな音でフロアの煌めきを伝えたこれは、JTの持ち味を損なわず従来のファンを満足させると同時に新しいファンも獲得(R&B/ポップ両チャートで全米1位)。これを収めた『Eargasm』(76年)にはデトロイト録音とマッスル・ショールズ録音の曲を含むが、ここでのモダンでディープな味わいは、極上なメロウ・フローター“Your Love Is Rated X”を含む次作『Rated Extraordinaire』(77年)にも受け継がれ、〈オーガズム〉や〈X指定〉を匂わせるこの2作でセックス・シンボルとしての地位も確立。77年には臆面なくディスコに挑んだサントラ『Disco 9000』も出し、これを滋養としてポスト・ディスコ時代のソウルを提示していく。79年の『She's Killing Me』や80年の『A New Day』あたりになるとドンがブラッド・シャピロらとプロデュースを分け合うようになるが、後のビヴァリー・グレン時代や晩年のマラコ時代に引き継がれていくブルージーにしてアーバンな持ち味は、ドンとの一連の共同作業がベースになっていることは間違いないはずだ。
▼このたびリイシューされたジョニー・テイラーの作品
左から、76年作『Eargasm』、77年作『Rated Extraordinaire』(Columbia/ソニー)
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▼ドン・デイヴィスが絡んだジョニー・テイラーの作品を一部紹介
左から、73年作『Taylored In Silk』(Stax)、79+80年作の2in1盤『She's Killing Me/A New Day』(Soulmusic)
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