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アラン・トゥーサンの名仕事を一部紹介!

LABELLE Nightbirds Epic(1974)

ピンク×アギレラ×リル・キム×マイアのリメイク版も登場したNOLA娼婦の歌“Lady Marmalade”は、世界でもっとも聴かれているトゥーサンの裏方仕事だろう。これを筆頭に、ミーターズを従えてセカンドライン・ファンク的な作法でメインストリームに斬り込んだ本作は、NOLAに設立したばかりのシー・セイント・スタジオで録音。躍動するリズムとパティ・ラベルを中心としたアクの強い歌が刺激を放つ。75年の次作『Phoenix』もトゥーサンが制作。

 

CHOCOLATE MILK Action Speaks Louder Than Words RCA(1975)

ミーターズよろしくトゥーサンのお抱えバンドとして活躍し、ウィングスの75年作にも参加したホーン含む大所帯ファンク集団(結成地はメンフィス)のデビュー盤。エリックB&ラキムステッツァソニックが引用したモーグ使いの表題曲など、ルイジアナ仕込みのレイドバックしたグルーヴにソリッドなエッジが加わった粘着ファンクは、ミーターズの進化版といった喩えが相応しいか。スライPファンクをトゥーサン流に解釈したような曲もある。

 

ISIS Ain't No Backin' Up Now Buddah(1975)

古代エジプトにおける豊穣の女神から名を拝借した女だらけのファンク・ロック・バンド。10人編成となったこの2作目では半数近くをトゥーサンがプロデュースし、女ミーターズ的とでも言うべきアーシーなファンクを奔放に奏でている。“Eat The Root”のスワンプ・ロック感などはセカンドライン・ファンクを極めていた頃のトゥーサンらしさが全開だ。非NOLA産だが、“Come On, Come All”はブラス・コンストラクション一派のジェフ・レーンが制作。

 

WILLIAM D. SMITH A Good Feelin' Warner Bros.(1976)

ポップス系のセッションで活躍し、ソングライターとしても数々の名曲を書いたカナダ出身の黒人鍵盤奏者によるソロ・デビュー作。全編トゥーサンのプロデュースで、ミーターズのレオ・ノセンテリらの演奏で緩やかなファンクをマイルドに歌う内容は、まるで〈裏『Southern Nights』〉といった趣だ。ミリー・ジャクソンも歌ったバラード“I'll Be Rolling(With The Punches)”やグルーヴィーな“We All Wanna Boogie”など、トゥーサン作の5曲が秀逸。

 

LINDA LEWIS Woman Overboard Arista(1977)

70年代中期にフランキー・ミラーロバート・パーマーといった英国勢とも仕事をしていたトゥーサンは、LAに移住したUKの歌姫によるアリスタ第2弾作でも4曲をプロデュース。うち2曲は彼女の透き通ったキュート・ヴォイスが活かされた爽快な曲だが、冒頭のアーバン・メロウな“You Came”やディスコ調ファンク“Shining”では地声で歌わせることによってセクシーなジャケよろしく大人の魅力を引き出している。録音はNOLAのシー・セイント。

 

LEE DORSEY Yes We Can / Night People Raven(2005)

70年作と78年作の2in1。ポインター・シスターズも歌った“Yes We Can”を含む前者も名盤だが、過小評価気味の後者も、他流試合をこなしてきたトゥーサンがディスコやフュージョンのまろやかなグルーヴを採り入れてNOLAサウンドを一歩先に進めた意欲作として注目したい。トゥーサンらしいエレガントなタッチのピアノが冴える“Soul Mine”や洗練されたセカンドライン・ファンク“Night People”など好曲揃い。主役のトボケた歌の魅力も不変。

 

CHOCOLATE MILK We're All In This Together / Milky Way FTG(2010)

デビュー盤を別掲したファンク・バンドの4、5作目にあたる77年作と79年作の2in1。いずれもトゥーサンの制作で、NOLA録音となる前者は洗練を加えながらも原点回帰したような内容で、イマチュア“We Got It”などに引用された“Girl Callin'”にトゥーサンらしいレイドバックしたファンク感覚が滲む。LA録音となる後者はディスコ調のアップやAOR風のアーバン・ソウルなど、当時のEW&Fを思わせるクロスオーヴァーなアプローチが光る内容だ。

 

PATTI LABELLE Released Epic(1980)

トゥーサンとはラベル時代に顔合わせしていたパティだが、ソロ転向後、このエピックでの最終作でガッツリと組み直している。トゥーサン流のピアノをフィーチャーしたNOLAファンクの下地は残しつつもアプローチはモロにディスコで、シンセ・ドラムを使った“Give It Up(The Dawning Of Rejection)”やヴォコーダー使いの“Release(The Tension)”など、ラベル時代のエグさを80年代に持ってきた格好だ。南部風のエレガントなバラードもある。

 

RAMSEY LEWIS Routes Columbia(1980)

NOLAのピアニストであるトゥーサンがシカゴのフュージョン・ジャズ・ピアニストを手掛けるという組み合わせの妙を楽しみたい一枚。プロデュースしたのは4曲で、スタインウェイのグランド・ピアノでエレガントな音色を奏でる主役に対し、トゥーサンはモーグやオーバーハイムのシンセ、ヴォコーダーを使って新しい時代の空気を運び込む。特にトゥーサン作となる“Hell On Wheels”は80sモダンなNOLAファンクで痛快だ。レオ・ノセンテリも参加。

※連載〈IN THE SHADOW OF SOUL〉第89回の記事一覧はこちら