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そして本題。2022年9月2日、メガデスの最新作『The Sick, The Dying... And The Dead!』が発売されます。

MEGADETH 『The Sick, The Dying... And The Dead!』 Tradecraft/UMe(2022)

デイヴ・ムステインは前作『Dystopia』を2016年にリリースした後、2019年に咽頭癌を公表、治療が終わり、2020年1月にステージ復帰した映像も公開されていましたが、見事なカムバックのスタジオアルバムです。ブルース・ディッキンソンといい、デイヴ・ムステインといい、メタルのシンガーの喉はどうなっているのでしょうか……やはり鋼鉄でできているのでしょうね。

 

まずは、先行公開されている映画仕立てのMV(三部作)をぜひご覧下さい。

『The Sick, The Dying... And The Dead!』収録曲“We’ll Be Back”

これはアルバム最終12曲目、“We’ll Be Back”
問答無用の格好良いトラックなので、最後の曲ですが、ここから聴くのは大いにあり。単色だけど重層的、とてもよく考えられたバリエーションを持ったスラッシュ。サビで使われる鐘の音が非常に印象的です。

3曲目“Night Stalkers (feat. Ice-T)”は、このMV三部作の第二部。

『The Sick, The Dying... And The Dead!』収録曲“Night Stalkers (feat. Ice-T)”

ムステインの声が地獄の案内人のようで、若い時のソリッドでヒリヒリした歌声とはまた別の、熟練の厚みと凄みを感じます。
昔からメガデスは、音色に対するストイックさみたいなものを感じますが、それも健在。4曲目“Dogs Of Chernobyl”は、ミディアムテンポで、とてもドラマチックなサビ。メガデスは常に剃刀みたいに尖っているけれど、時々こういう美しい情念みたいなものが差し込まれる。これにぐっときちゃいます、このセンス。
そして、テンポアップした中間部のキコ・ルーレイロのギターソロがものすごく格好良い。誰や、ギターソロは飛ばす言うたんは!

『The Sick, The Dying... And The Dead!』収録曲“Dogs Of Chernobyl”

歌に呼応するように3回に分かれているギターソロで、その後でドラムパターンが変わっていく。これはこのアルバムの中で、非常にハイセンスな一曲だと思いました。

10曲目“Célebutante”、一聴すると普通の曲が始まったと思っても、途中で必ずひっくり返してくれるというか、展開を2つ3つ用意してくれている安心感。一度ハーフテンポに落として、また高速に戻って来る時には、反動でもっと高く飛ぶ。昔から、脳筋的に感じるテンポチェンジはあまりなくて、フィジカルに作用するものよりもエモーショナルな効果を優先し、緻密で計画的に練った感じに翻弄される。これが気持ち良いんですよ。

『The Sick, The Dying... And The Dead!』収録曲“Célebutante”

2015年から加入したギターのキコ・ルーレイロは、ジャズミュージシャンからも人気があります。バックボーンが豊かなんですよね。アングラの時はサンバのような曲も沢山やっていましたし、自分のプロジェクトのアルバムではフュージョン系の華やかなプレイを聴かせてくれていました。メガデスでも、一直線ではなく非常に柔軟な切り口で切り込んでくるプレイに、耳が奪われます。

 

今年リリースされたタワレコのHR/HMコンピレーションアルバム『DEFINITELY METAL - 80’s HR/HM EDITION』の紹介記事の中で、メガデスのアルバムについて〈しっかり考えた上でブチ切れる〉と書きましたが、音色、展開、ギターソロなど、全て〈しっかり考えた上〉というのが、メガデスに強く惹かれる部分なのだと思います。
(しっかり考えていないノリ一発の音楽も好きですが)

 


RELEASE INFORMATION
■MEGADETH

MEGADETH 『The Sick, The Dying... And The Dead!』 Tradecraft/UMe(2022)

リリース日:2022年9月2日(金)
品番:UICY-16085
価格:2,750円(税込)
日本盤のみSHM-CD仕様/ボーナストラック“Police Truck”追加収録!

TRACKLIST
1. The Sick, The Dying…And The Dead!
2. Life In Hell
3. Night Stalkers (feat. Ice-T)
4. Dogs Of Chernobyl
5. Sacrifice
6. Junkie
7. Psychopathy
8. Killing Time
9. Soldier On!
10. Célebutante
11. Mission To Mars
12. We’ll Be Back
13. Police Truck(デッド・ケネディーズのカバー) ※日本盤ボーナストラック

デイヴ・ムステイン(Dave Mustaine):リードギター&ボーカル
キコ・ルーレイロ(Kiko Loureiro): リードギター
ダーク・ヴェルビューレン(Dirk Verbeuren):ドラムス
ジェイムズ・ロメンゾ(James LoMenzo):ベース

 

LIVE INFORMATION
■西山瞳
2022年8月26日(金)東京・池袋 Apple Jump
開場/開演:19:00/19:30
出演:西山瞳トリオ 西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)
チャージ:3,500円

2022年9月2日(金)神奈川・横浜 上町63
開場/開演:18:30/19:00(1st)/20:30(2nd)
出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/池長一美(ドラムス)
チャージ:3,300円

2022年9月7日(水)兵庫・神戸 gallery zing
開場/開演:19:00/19:30
出演:西山瞳(ピアノ)
チャージ:3,300円

CD ”Hometown” 発売ライブ
2022年9月9日(金)奈良 ろくさろん
開演:19:00
出演:西山瞳(ピアノ)/鈴木孝紀(クラリネット)/光岡尚紀(ベース)
チャージ:3,000円

2022年9月16日(金)神奈川・茅ヶ崎 Storyville
開場/開演:18:00/19:00(1st)/20:00(2nd)
出演:西山瞳(ピアノ)/橋爪亮督(テナーサックス)
チャージ:3,300円
その他の情報はオフィシャルサイトをご覧ください。

 

RELEASE INFORMATION
■西山瞳
西山瞳トリオ、7年ぶりのスタジオアルバム『Calling』発売中!

西山瞳トリオ 『Calling』 MEANTONE(2021)

リリース日 :2021年9月15日
品番:MT-10

価格:2,970円(税込)
紙ジャケット仕様

TRACKLIST
1. Indication インディケーション(作曲:西山瞳)
2. Calling コーリング(作曲:西山瞳)
3. Reminiscence レミニセンス(作曲:西山瞳)
4. Lingering in the Flow リンガリング・イン・ザ・フロウ(作曲:西山瞳)
5. Etude エチュード(作曲:西山瞳)
6. Loudvik ルードヴィック(作曲:西山瞳)
7. Drowsy Spring ドロウジー・スプリング(作曲:西山瞳)
8. Folds of Paints フォールズ・オブ・ペインツ(作曲:西山瞳)

All Composition & Produce Hitomi Nishiyama

録音日:2021年3月30、31日 Studio Dede
録音/ミックス/マスタリング:吉川昭仁

■メンバー
西山瞳(ピアノ)
佐藤“ハチ”恭彦(ベース)
池長一美(ドラムス)

 


PROFILE: 西山瞳
79年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。