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第7位
Ash Ra Tempel『Ash Ra Tempel』(71年)

ASH RA TEMPEL 『Ash Ra Tempel』 Ohr(1971)

当時18歳のゲッチング少年と、のちに麻薬禍でバンドも人生もドロップアウトしちゃうヘルムート・エンケ(ベース)、そしてタンジェリン・ドリームを脱退して間もないクラウス・シュルツェ(ドラム)のアシッドトリオによる酩酊感たっぷりの即興演奏が収められたファーストアルバム。強烈にアグレッシブなヘヴィロックチューンと、インナートリップの深みへと向かう瞑想ナンバー(ただし後半でヒートアップ)の豪華2本立てですが、どちらも極端なエコー処理が施されて掴みどころのない、トロトロと沸騰する地獄の煮え湯のようなサイケ修羅の門。シンセ魔王のイメージが強いけれど、シュルツェのドラムもいい塩梅です。彼もゲッチングと同じ2022年に天へと召されました。

 

第6位
Ashra『Blackouts』(78年)

ASHRA, MANUEL GÖTTSCHING 『Blackouts』 Vergin(1978)

全編ゲッチングによる一人多重録音で、前作『New Age Of Earth』のギター+シンセ作法をさらにつきつめた快作ですが、ジャケット(B級ハードロックみたいなのが玉にキズ)に写るギブソンSGがシンセを凌ぐほど前面に出ているので、よりギターオリエンテッドな風情があります。“77 Slightly Delayed”はタイトル通りディレイで音を重ねる得意技が炸裂。どことなく楽園的な心地よさを醸す“Midnight On Mars”。リズミカルな“Shuttle Cock“は近年のライブでも披露されていた代表曲の一つでしょう。

 

第5位
The Cosmic Jokers『Galactic Supermarket』(74年)

THE COSMIC JOKERS 『Galactic Supermarket』 Kosmische Musik(1974)

ジャーマンロックシーンの顔役的プロデューサー、ロルフ=ウルリッヒ・カイザーのもと、アシュ・ラ、クラウス・シュルツェ、ヴァレンシュタインのメンバーらが集結して繰り広げられたのが、コスミッシェ・レーベルに残された一連のコズミックセッション物。そのシリーズ中でも最も華やかかつサウンドにまとまりがあるのが本作ではないかと思います。といっても当然ながら相当に純度の高いトリップミュージックで、シュルツェとゲッチングが演奏のイニシアティブを握っている感じ。〈宇宙の無法者〉という厨二病的なネーミングがちょっと微笑ましいです。

 

第4位
Manuel Göttsching『Dream & Desire』(91年)

MANUEL GÖTTSCHING 『Dream & Desire』 Musique Intemporelle(1991)

77年、ベルリンのRIASラジオに出演した際に演奏された発掘音源で、キャリア中でも最もアンビエント/ニューエイジ的な雰囲気を持った一枚。ディレイをかけたシーケンサーのリズムに浮遊感のあるギターが溶け込んでいく必殺パターンで、もちろんゲッチングの多重録音。テイストとしては前年リリースの『New Age Of Earth』に似ていますが、さらにテンダーで夢見心地な音世界が展開されています。とくに“Dream”のギターはいつにも増して饒舌で甘美なトーンを奏でて、ここではない桃源郷めいたどこかへと誘うのです。