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〈好きにやってええよ〉と発信

――ちなみに、『Dot』が発売されてからの反響はどんなものでしたか。

「ミュージシャンからは連絡をもらいましたね。ミュージシャン同士、完全に振り切った覚悟を作品から感じてもらえるから。同業者から反響があったのは嬉しかったです」

――前回、「CDを作れるのはもうこれで最後なんじゃないかなという意識も強くあって」と仰っていましたが、フィジカルというもの、アートワークやパッケージへのこだわりについて伺えますか。

「装丁はお金をかけてます(笑)。ダブル紙ジャケット仕様とか。プラケースなら半分の費用で作れたんですけど、ほとんどの人がサブスクで聴くから、買ってくれた人には手触りのいいものを持ってもらいたいんです。

あと、『Dot』は、モノクロのイメージだったのでああいうジャケットにして、結果的にレコード店で目立ったんですけど、愛想がないんですね(笑)。しかも全曲オリジナルだから、〈知ってる要素〉が限りなく無い。だから今回は、誰が何をやっているかがわかるジャケットにしたいと思いました。それで、自分のビジュアルを使うにあたって自分自身では判断できないことが経験則でわかっていたので、信頼するアートディレクターに入ってもらって、デザイナーと3人でやり取りしました」

――作品として美しくまとまっていても売り方が難しいですよね。

「そう。私はいま44歳で、上と下の間の世代なので、昔のやり方も知っているし、いまの若い人のこともわかる。例えば、〈メジャーデビューはダサい〉という考え方は昔はなかったけど、メジャーじゃないとできない仕事もあるし。ただ、私くらいの歳の人間は、〈好きにやってええよ〉という発信はできるんじゃないかなと」

――それでは、『Echo』のアーティスティックなアピールポイントと、広く届けるためのアピールポイントをお伺いさせてください。

「『Dot』よりは聴きやすいと思います。『Dot』の反応は〈すごい〉〈よくわからん〉という感じで、具体的な感想がなかったんです。それに比べれば、『Echo』はメロディもハーモニーもはっきりしてる。なので、コアなジャズファン以外にも届いたらいいなと思います」

 

新世代メタルバンドの自由さと広がり

――それでは、別の話題を。9月13日に〈政則十番勝負〉に出演されますね。日本のメタルファンにとって大きな存在である、伊藤政則さんとのイベントです(今回の取材は9月11日に行った)。

「最近復活させたNHORHMを始めたとき、〈最後に伊藤政則に辿り着くぞ!〉と言っていて、活動休止したときはそれが心残りになっていたから。ついに辿り着きました(笑)。

中学生くらいの頃、洋楽のCDを買ったらたいがいMASA ITOのライナーノーツが入っていましたから。伊藤政則さんの文体の影響が残っているのはありますね」

――政則さんに限らず、「BURRN!」系文体の影響ってあるじゃないですか。個人的に、あの独特の硬さや定型句からいかに離れるかを意識してきました。

「そういう意味で、『現代メタルガイドブック』に関わらせてもらったとき、清家咲乃さんの表現がすごくいいと思いました。でも彼女も『BURRN!』出身なのが面白いですね」

――西山さんはその中間の立ち位置で、音楽構造の面からも分析なさっているのが良いと思います。

「いえいえ。私はジャズピアニストとして呼ばれてもいるわけで、音楽ライターとは違う目線から喋ったり書いたりするのは意識しています。

ただ、〈こういう人が応援しているから素晴らしいんだ〉とお墨付きを欲しがるファンが、メタルには他のジャンルより多い印象がある。そことは距離を置いておきたい思いもあります。

例えばメタルコア系のバンドって、そういうところから解放されていていいなと思うんです。『Dot』も『Echo』も、私自身がメタルコアやインダストリアルメタルを聴けるようになったから作れたんですよ。そういうバンドの自由さへの憧れはありますね。(メタルが)広がって良かったと多います」

――本当にそうですよね。本日はありがとうございました。

「ありがとうございました」

 


RELEASE INFORMATION

西山瞳 『Echo』 MEANTONE(2024)

リリース日:2024年10月2日(水)
品番:MT-13
価格:3,190円(税込)

TRACKLIST(全曲 西山瞳作曲)
1. Echo エコー
2. West World ウエスト・ワールド
3. Ants アンツ
4. Arrakis アラキス
5. Raindrops レインドロップス
6. Cobalt Blue コバルト・ブルー
7. River リバー

■メンバー
西山瞳 ピアノ、作曲 Hitomi Nishiyama piano, compose
西嶋徹 ベース Toru Nishijima bass
則武諒 ドラムス Ryo Noritake drums
鈴木孝紀 クラリネット Takanori Suzuki clarinet (except 5)
橋爪亮督 テナーサクソフォン、フルート Ryosuke Hashizume tenor saxophone, flute (except 5)
maiko バイオリン maiko violin (except 5)

2023年7月12-14日 群馬県高崎市TAGO STUDIO TAKASAKIにて録音
録音・ミックス・マスタリング:松下真也(Piccolo Audio Works)
FAZIOLI F278使用 ピアノ技術:越智晃(Fazioli Japan Co., Ltd.)
写真:和田高広(ライトアンドプレイス湿板写真館)

 

LIVE INFORMATION
CDリリースライブ
2024年10月18日(金)神奈川・横浜 Jazz Spot DOLPHY
出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)

2024年11月12日(火)長野・松本 Storyhouse Café & Bar
出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)

2024年11月13日(水)愛知・名古屋 jazz inn LOVELY
出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)

2024年11月14日(木)大阪 Jazz Club GALLON
出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)

2024年11月17日(日)東京・渋谷 公園通りクラシックス
​出演:西山瞳(ピアノ)/西嶋徹(ベース)/則武諒(ドラムス)/鈴木孝紀(クラリネット)/橋爪亮督(テナーサックス/フルート)/maiko(バイオリン)

※各ライブの詳細は西山瞳のオフィシャルサイトにて後日発表

 


PROFILE: 西山 瞳
1979年生まれ。2005年、横濱ジャズプロムナードのジャズ・コンペティションにおいて自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデン録音の1stアルバム『Cubium』をアミューズよりリリースしデビュー。2007年に日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、以降2作のスウェーデン録音作品をリリース。2008年発表のアルバム『Parallax』はスイングジャーナル誌の日本ジャズ賞にノミネートされた。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で15,000曲のエントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。2011年発表の『Music In You』がCDジャーナル誌のベストディスクに選出され、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2015年にヘヴィメタルの名曲をカバーするユニット・NHORHMを始動させた。アルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』は発売前よりヘヴィメタルとジャズの両面で話題になり、ジャンルを超えたベストセラーとなった。シリーズの続編3作はいずれも高評価と好セールスを記録。以降、文筆活動も通じてジャズとヘヴィメタルを横断した活動を継続中。タワーレコード運営のサイト・Mikikiにて継続中の連載〈鋼鉄のジャズ女〉は同サイトで圧倒的な人気を誇る。全国のジャズフェスティバルやコンサートホール、ライブハウスなどで演奏。これまでに26作品のアルバムをリリースし、いずれもジャズチャートの上位にランクインを続け、文筆活動を通じたメディアでの活動も多い。オリジナル曲は高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。
オフィシャルサイト:https://hitominishiyama.net/

PROFILE: 西嶋 徹
5歳よりバイオリンを始め、高校の時にベースを始める。ジャズ、アルゼンチンタンゴを軸に幅広い音楽性で様々なジャンルのアーティストをサポート。これまでにJazztronik、パブロ・シーグレル、綾戸智恵、ウィリアムス浩子、小野リサ、カルメン・マキ、木住野佳子、小松亮太、葉加瀬太郎、長谷川きよしなどのレコーディングやコンサートに参加。2018年、ソロアルバム『Phenomenology』をリリース。2019年より弦楽カルテットを主宰。2021年、ギター・藤本一馬、ピアノ・栗林すみれ、ドラムス・福盛進也とのグループ・Remboatoでアルバム『星を漕ぐもの』リリース。

PROFILE: 則武 諒
名古屋出身。14歳の時にドラムに出会い、ヘヴィメタル、ハードロックなどから影響を受けるが次第にジャズや即興音楽に傾倒する。甲陽音楽学院、バークリー音楽大学(B.M. Summa Cum Laude)を経てニュージャージーのウィリアム・パターソン大学にて音楽修士号(M.M.)を取得。帰国後は名古屋を中心に活動したのち、2014年ごろに上京し活動の幅を広げる。間や質感を大切にした演奏を信条とし、様々なミュージシャンのライブ、レコーディングなどに参加している。

PROFILE: 鈴木孝紀
大阪音楽大学卒業後、クラシック奏者として室内楽やオーケストラなど様々なコンサートを経験。ジャズサキソフォン奏者である父と兄の影響を受けてジャズに傾倒し、現在多数のアーティストのCDに参加するほか、CMなどのテレビ音楽のほか様々なレコーディングワークも精力的に行う。自身のユニットである鈴木孝紀TRIOでアルバム3作をリリース。2017年、日本クラリネットフェスティバルにおいてソリストを務める。ウォームで芯のある音色とジャンルにとらわれない独自のスタイルで新たなクラリネット音楽を提案し展開している。

PROFILE: 橋爪亮督
岡山大学在学中、ボストン・バークリー音楽大学から奨学金を受けて渡米。1996年、同校のジャズ作曲科を卒業。2作のリーダー作をアメリカでリリースし、1997年に帰国。2006年、国内初となるリーダー作『WORDLESS』をリリース。全曲オリジナルによる自身のグループや管楽器に加えアナログシンセサイザーも自身で演奏する完全即興のプロジェクト・DARK MATTERなどを中心に、新宿PIT INNをはじめ首都圏ライブハウスなどで活動中。NHK FM「セッション2010」「セッション2019」に橋爪亮督グループで出演。

PROFILE: maiko
神戸市出身。京都市立芸術大学音楽学部卒業。ジャズバイオリニスト・寺井尚子に師事。2001年からの8年間で2,000回を超える圧倒的な数のライブパフォーマンスをおこない、独自のジャズスタイルを確立する。第19回浅草JAZZコンテストでベストプレイヤー賞、2001年横濱ジャズプロムナードのコンペティションで向井滋春賞を受賞。コンポーザーとしての才能も高く、歌心溢れるオリジナル曲は好評を博している。2015年より伴奏者のいない完全なソロバイオリンのライブにライフワークとして取り組んでいる。