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60年代中~後期にドンが制作した楽曲を、当時未発表だった音源も含めて収録したデトロイト・ソウル集。レヴィロット原盤となるダレル・バンクスやパーラメンツのポップな曲からはモータウンの影響も窺えるが、JJ・バーンズやスティーヴ・マンチャらのディープで荒々しい歌い手を重厚なサウンドで出迎えるセンスはドン・ディヴィスならでは。オージェイズやトニー・へスターのモダンな曲もドンらしい。 *林
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スタックス史上最大のヒットとされるパワフルな表題曲でレーベルの起死回生を印象づけ、全体を仕切ったドンにとっても主役にとっても一大ターニング・ポイントとなった金字塔。同系統のヒットでは“Take Care Of Your Homework”もアツい出来映えで、サム・クック直系シンガーならではのディープネスをパワフルな咆哮へと解放したのはドンの導きに違いない。 *出嶌
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ラベルの前身グループがアトランティックに残したシングル集で、アーシーな風情もある68年の“He's My Man”がドンの制作。ノーナ・ヘンドリックスとドンの共作したB面曲“Wonderful”と並んでデイル・ウォーレンをアレンジャーに起用した、60sデトロイト産らしい溌剌ナンバーだ。同布陣で録音した未発表曲も初蔵出し! *出嶌
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スタックス傘下のヴォルトで創作の自由を手に入れたドンは、ステイプルズ家の三女メイヴィスもプロデュース。これはソロ2作目で、出世作となったバラード“I Have Learned To Do Without You”やもうひとつのヒット“Endlessly”など、サザン・ソウルのフィーリングに重点を置きながら彼女のディープでハスキーなヴォーカルを見事に引き出している。 *林
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ジョニー・テイラーと並んでドンと抜群の相性を示したドラマティックスのヴォルト第1弾。直接のプロデュースはトニー・へスターだが、無骨にして甘美なサウンド・マナーはドンのセンスだろう。豪快で逞しいバリトンにロン・バンクスのファルセットが絡むラテン調のタイトル曲とズブ濡れバラード“In The Rain”が2大名演。テンプスのサイケ・ソウルにも対抗? *林
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ドラマティックスとの共演盤(74年)もあるデルズだが、その前後にもドンとタッグを組んでいた。このベストでは、豪快にしてスウィートなバラード“Give Your Baby A Standing Ovation”、モダンな“Closer”、雄大な“Bring Back The Love Of Yesterday”などがドンの仕事。制作を分け合ったチャールズ・ステップニーを食うような音の分厚さが凄い。 *林
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本編は無関係だが、この増補リイシュー盤ではドンのプロデュースしたシングル曲3つがボーナス収録! ドン御用達のノーマ・トニーが書いた“I'm So Glad I Can Love Again”(73年)はブルージーな歌に合う艶歌に。トニー・ヘスター作の“Nothing Can Stop Me”(75年)がデルズ版を踏襲したスウィートな味わいで特に素晴らしい。 *出嶌
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シャーリー・ブラウン“Woman To Woman”へのアンサー・ソング“From His Woman To You”はスタックスを離れたドンからの古巣への回答でもあったのでは?と思いたくなる、フィリーの歌姫によるブッダでの最終作。デトロイト録音ながらサザン・ソウル色が強く、作家にベティ・クラッチャーを招くなど、ブッダ版シャーリーを狙ったことは一目瞭然だ。 *林
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フィリーのヴォーカル・グループによるデトロイト録音の名盤。プロデュースはJBPことジミー・ビショップらで、ドンの役割は〈アソシエイト・プロデューサー〉となっているが、演奏陣やアレンジャーの采配は彼によるものだろう。重厚かつスウィートな楽曲群は、5人組という形態も含めて、まさにテンプテーションズやドラマティックスを意識したそれだ。 *林
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ジョニー・テイラー“Disco Lady”に続くドン制作の全米1位曲“You Don't Have To Be A Star(To Be In My Show)”を含む夫婦デュオの初作。フィフス・ディメンション時代のポップな持ち味を図太いグルーヴでデトロイト・ソウルに昇華させたような好盤で、定番ネタの“Nothing Can Stop Me”も収録。ビリーの渋声はまさにドン好み! *林
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スタックスを離れABCで第2の黄金期を迎えていた時代の好盤。絶頂期のドンがトニー・へスターやマイケル・ヘンダーソンと制作を分け合った本作では、ファンク・ブラザーズ~モータウンの残党がボトムを支え、R&BチャートでTOP10ヒットした語り入りの傑作スロウ“Be My Girl”“I Can't Get Over You”などがリッチな音色と色気溢れる端正なハーモニーで披露されている。 *林
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LJ・レイノルズ(ドラマティックス)の姉がイキイキと歌い上げる2作目。大半のプロデュースは弟のLJで、ドンの制作曲はポール・ライザーがアレンジを手掛けた“Guide Me Well”のみだが、これはドンがスタックスでカーラ・トーマスに提供した曲のカヴァー。カーラ版よりゴージャスなデトロイト・サウンドにドンの飛躍的な出世ぶりを見る思いだ。 *林
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全編が馴染みのマッスル・ショールズ録音だった前作に続くコロムビア第2弾では、ジョニー・テイラーに倣ってデトロイト録音メインに。むろんプロデュースはドンで、骨太でグルーヴィーなサウンドがボビーのビターな声と好相性を示す。キャンディ・ステイトンとのデュエットも話題となったが、ここはデヴィッド ・ラフィンとの男同士の競演“Trust Your Heart”に浸りたい。 *林
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元テンプテーションズ。モータウン時代にはドンと接点がなかったが、ボビー・ウーマックの別掲作に参加後、ワーナーでの2作でドンをプロデューサーに迎えた。本作はそのうちの2枚目で、メロウで洗練されたサウンドに乗って、女性シンガーとのデュエットも交えながらタフな歌声でエレガントに歌い上げる。紳士を気取った暴れん坊のアダルトな快作。 *林
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ドラマティックスを追う存在だったデトロイト出身の5人組にもドンは関与。彼の全面プロデュースとなる本作はデトロイトとシカゴで録音されたもので、トム・トム84のアレンジでドン流の図太いサウンドにキレ味を加え、颯爽としたスウィートなヴォーカル・ワークを輝かせる。ブレインストームの女性陣らが書いた“Settin' It Out”は快活なディスコ曲だ。 *林
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LJがドラマティックス脱退中に残したソロ作はドンにとって音楽キャリア末期の仕事のひとつとなった。これは81年のセルフ・タイトル作と翌年の『Travellin'』の2in1で、ロニー・マクネアの活躍する前者では勇ましい骨太ファンク“We Can Work It Out”がリック・ジェイムズ風でエモい。後者ではB面の5曲のみを担当し、円熟味を引き出すべく采配している。 *出嶌