生活に寄り添う『Free Soul』『CITY MUSIC TOKYO』
こういった〈ヒット曲全部乗せ〉コンピは、いまも形を変えドン・キホーテ等の量販店のCD棚をピカピカの3DCGロゴとともに埋め尽くしていますが、もう少しマニアックな方向にシフトしましょう。まずは大定番、選曲家・プロデューサー橋本徹氏による『Free Soul』シリーズ。ソウルをキーワードとしながらも、ボサノバやロック、ファンク、フォークと多ジャンルを横断する選曲から浮かび上がる〈Free Soul〉的美学は、渋谷系ミュージシャン/ファンの頼もしい伴走者でありました。
生活空間の中での聴き心地のよさ、というリスナー感覚を前提としつつも、ジャンルの歴史や豊かな文脈を匂わせる絶妙なバランス感覚は、DJカルチャー以降のコンピレーションとして強力な存在感を放ち、平成元年(1989年)の第1作『Free Soul Impressions』から現在に至るまで通算120枚以上続くロングランシリーズです。
シティポップコンピの人気作『CITY MUSIC TOKYO』(2020年~)も挙げておきましょう。RYUSENKEI・クニモンド瀧口氏の選曲で、ブームとなっているシティポップの入口としてまたとない好チョイス。ライターの金澤寿和氏による『Light Mellow』シリーズも、AORや和フュージョンの再発以外にもテーマコンピを展開しており、シティ派は要チェック。
アシッドジャズ/レアグルーヴの精神が宿ったオムニバス
『Free Soul』も『Light Mellow』も源流を辿れば、イギリスにおけるアシッドジャズ~レアグルーヴの精神に行き着くでしょう。埋もれた音源の再発掘、あるいは当時とは違う新たな聴き方の提示を求めるこのムーブメントにとってコンピレーションアルバムは、その価値観をプレゼンする場として機能しました。『Acid Jazz And Other Illicit Grooves』(1988~1989年)、『Talkin’ Loud』シリーズ(1990~1993年)などなど、いずれもジャイルス・ピーターソンの手による名コンピです。

1992年設立のレーベル、ソウル・ジャズは、当初は単純に過去の名作をリイシューするレーベルだったものの、NYサルサの入門的コンピ『Nu Yorica!』(1996年)のヒットをきっかけに、数々の発掘系コンピレーションを企画します。異形のニューウェーブディスコをまとめた『New York Noise』(2003~2006年)。エヴァ初号機のシンクロ率ばりに『200%』『300%』とシリーズごとにパーセントが増していくレゲエコンピ『100% Dynamite!』(1998~2009年)。10代の黒歴史スレスレの英米のカルトなパンクを集めた『Punk 45』(2013年~)などなど、レア曲たっぷりの人気シリーズをいくつも輩出しています。
