まだまだある! 継承される『Off The Wall』フィーリング
その歩みが重なる部分はもちろん、ソロ・デビュー作を『D-ROCK with U』と題していたことにも先人への敬意を窺わせていた大知。カヴァーを披露したこともあるが、この最新作ではモダンなブギーのグルーヴに乗った表題曲に優美なマイケル感を漂わせている。
登場してきた頃はリトル・マイケルばりの〈歌うまキッズ〉な雰囲気もあったものの、成長してみればそこはまた独自の道。前作まではネタ使いなどで先人からの影響にも目配せしながら、逆境に追い込まれたところからチャレンジへ向かう姿勢も学んだのかも。
ミキ・ハワードとオーギー・ジョンソン(サイド・エフェクト)という、マイケルとも縁深い両親の血を引いた才能。この初作ではテディ・ライリーとも絡みつつ、ベンジャミン・ライトが弦をアレンジした“Dancefloor”では特に『Off The Wall』的な爽快感を見せた。
マイケルに対しての思い入れは、裏方時代に楽曲提供経験歴のある彼も譲らない。時流を捕まえてファレルと作り上げた本作には往年のスウィートなパーティー・ヴァイブで燃えてみせている。この後で公私共に大変なことになるわけだが……。
ドク・チータムの孫だというトランペット奏者のグルーヴィーなアルバム。ディー・ディー・ブリッジウォーターが歌ううちの1曲は自由に飛翔する“I Can't Help It”で、かつて彼女が取り上げたアフロ・ブルーな“It's The Falling In Love”も思い出される。
フランス産のカクテル・ディスコに乗せてイルファンが繊細な歌唱を聴かせた2010年のシングル“Baby I'm Yours”は、やや早かった『Off The Wall』期のマイケルへの粋なオマージュだった。Saori@destinyがその洒脱さを引用した“OFF THE WALL”も忘れ難い。
THE 1975 I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It Polydor(2016)
トーキング・ヘッズやマイブラと雑食でマイケルを愛するUK次代の大物バンド。このニュー・アルバムではプリンスら多様な先達の影響を織り交ぜながら、フォール・アウト・ボーイにも近いやり口でMJのカラーも忍ばせている。
シカゴ拠点/コロラド出身のシンガーによる、カーリ・シモンズやダズ・アイ・キュー、MdCLらの援護を受けたファースト・アルバム。ハウシーに披露する“I Can't Help It”の身のこなしは、ジャズとソウルのクロスオーヴァーを狙う『Off The Wall』感覚の賜物か。
先日のグラミー授賞式にて“She's Out Of My Life”をグレッグ・フィリンゲインズとパフォーマンスした彼。少年時代からマイケルに憧れてきたというだけあって、越境や折衷をあらかじめ内包した音楽性の中には確かな影響があるはず。今後の楽曲への投影にも期待だ。
歌唱面ではなく演奏面でのインスパイア源となることも多いのが『Off The Wall』の特徴。温かみのあるサニーなソウル/ファンク感を快活に解き放ったような本作は、昨今の日本のシーンにおける風潮をポップな機能性を備えた形で立体化したアルバムだろう。
掲載の機会がなかったのでこちらで紹介……『Thriller』前後に交流の深かったフレディ・マーキュリーとマイケルが試みたデュエット曲のうち、フレディのソロ版で出ていた“There Must Be More To Life Than This”がお目見え。“State Of Shock”も正規で出てほしい。