DISCOGRAPHIC THE SMITHS
スミスを知るための8枚
“What Difference Does It Make?”のヒットを前フリにしたファースト・アルバム。繊細でいて不遜にも響く歌声、諧謔や皮肉に満ちた内省的な詞世界、それを受け止める簡素な演奏のバランスはこの時点でもう絶妙だ。幕開けを飾る“Reel Around The Fountain”や“Still Ill”など、ジャングリーな文化系ギター・ポップの名盤。
THE SMITHS 『Hatful Of Hollow』 Rough Trade/Warner UK(1984)
勢いに乗じて初作に未収のシングル/カップリングやラジオ用のライヴ録音をまとめた編集盤ながら、全体の聴き心地は最高。憂鬱で瑞々しい最高峰“William, It Was Really Nothing”や“Heaven Knows I’m Miserable Now”、トレモロの轟くサイケな“How Soon Is Now?”などの宝石だらけ。ライヴ音源では初作の曲も熱い本性を露わにしている。
オリジナル作では唯一の全英1位に輝いたセカンド・アルバム。スティーヴン・ストリートをエンジニアに迎えてセルフ・プロデュースに挑み、外向きな詞世界も端正なサウンド・デザインも青臭さを拭って格段に成熟。ロカビリーから“Rusholme Ruffians”やファンキーな“Barbarism Begins At Home”までアレンジの幅も野心的に広がっている。
THE SMITHS 『The Queen Is Dead』 Rough Trade/Warner UK(1986)
最高傑作と名高い3作目。表題曲を筆頭に、マーなりの“Jumpin’ Jack Flash”だという“Bigmouth Strikes Again”、「(500)日のサマー」でもお馴染みの“There Is A Light That Never Goes Out”、ストリングスの優美な“The Boy With The Thorn In His Side”など、キャッチーな楽曲の連打が痛快。一方でレーベルへの不信を覗かせていたりも。
THE SMITHS 『The World Won’t Listen』 Rough Trade/Warner UK(1987)
『Hatful Of Hollow』と同じ位置付けの編集盤。モロにボラン流な“Panic”やポップな“Ask”といった前年のヒットから、85年の“Shakespeare’s Sister”までを幅広く収録。1か月後に登場した『Louder Than Bombs』と大半が重複するも、いくつかのヴァージョン違いやB面曲“Money Changes Everything”を聴けたりするのが悩ましい。
THE SMITHS 『Louder Than Bombs』 Rough Trade/Warner UK(1987)
レーベル主導でUSマーケット向けにコンパイルされたいわく付きの一枚で、中身は『The World Won’t Listen』ほぼ丸ごとに加え、『Hatful Of Hollow』収録曲などを大盛りにしたお得な内容ではある。“Panic”系のグリッターな親しみやすさを引き継いだ当時の最新シングル“Sheila Take A Bow”は(解散前の)最後のTOP10ヒットになった。
THE SMITHS 『Strangeways, Here We Come』 Rough Trade/Warner UK(1987)
スティーヴンが共同プロデューサーに昇格した4作目にして最終作。作り込みを極めながらブリティッシュ・ビートの伝統性に編入したような風情もあり、ロキシー・ミュージック風の退廃的な“Death Of A Disco Dancer”やボウイっぽい感傷が芝居がかった“Last Night I Dream That Somebody Loved Me”などから漂う終わりの匂いがたまらない。
86年10月のロンドン公演から14曲を抜粋した唯一の公式ライヴ盤。ワイルドに走るドラムスとスタジオ版よりワウワウ唸るギターが伸びやかな必殺の“The Queen Is Dead”、インストの“The Draize Train”などはクレイグ・ギャノンがリズム・ギターを担った5人時代ならではの快演だろう。エルヴィス曲を絡めたメドレーも聴きどころ。