ESSENTIALS
トム・ベルの名仕事を厳選してご紹介!

VARIOUS ARTISTS 『Ready Or Not - Thom Bell’s Philly Soul Arrangements & Productions 1965-1978』 Kent/Solid(2020)
セイント・エティエンヌのボブ・スタンレーがコンパイルしたベル仕事の名曲選。スタイリスティックスやスピナーズらの定番も交えた内容はレアさを狙ったものではないが、ギャンブルと共作したオーロンズ“I Can’t Take It”(63年)のような初期仕事から、作編曲したジェリー・バトラー“Moody Woman”(69年)、コニー・スティーヴンス“Tick-Tock”(70年)などがまとめて聴けるのは便利。 *出嶌

スタン・ワトソンが67年に設立したフィリー・グルーヴ発の3人組で、この初作からベルは制作や編曲などでバックアップ。誰もが口ずさみたくなる表題曲はベルとグループ双方にとっての出世作となった。同曲を含め甘々なファルセットで歌うウィリアム・ハートと共作したオリジナルのほかに、バート・バカラックやテディ・ランダッツォの曲を取り上げたのは先達に対するベルのオマージュだろう。 *林

THE DELFONICS 『The Delfonics』 Philly Groove(1970)
“Ready Or Not Here I Come”を含む2作目『Sound Of Sexy Soul』に続いてのサード・アルバムで、前2作同様にベルが全編で采配を振るい、ノスタルジックな風情を誘う屈指の名曲“Didn’t I (Blow Your Mind This Time)”を筆頭に揺るぎない相性の良さを響かせる。キャリア最高のR&Bチャート4位まで上昇した本作をもって、ベルは彼らのプロデュースを外れることに。 *出嶌

リンダ・クリードとのコンビで曲を書きはじめたベルの代表作にしてフィリー・スウィート・ソウルの金字塔。後にダイアナ・ロス&マーヴィン・ゲイ版でも有名になるエレキ・シタール使いの“You Are Everything”をはじめ、“Stop, Look, Listen (To Your Heart)”“Betcha By Golly, Wow”など、ラッセル・トンプキンスJrのファルセットを活かした甘美なソウル・ワールドが広がる。 *林

THE O’JAYS 『The Essential O’Jays』 Legacy(2008)
言わずと知れたPIRを代表するオハイオ出身の看板グループ。ベルも盟友ギャンブル&ハフをサポートして代表作『Back Stabbers』などでアレンジに参加し、70年代後半の諸作や『Let Me Touch You』(87年)では曲単位でのプロデュースも担当してきた。こちらのベスト盤では“Back Stabbers”や“992 Arguments”が彼の編曲、屈指のバラード“Brandy”がプロデュース曲だ。 *出嶌

JOHNNY MATHIS 『Life Is A Song Worth Singing:The Complete Thom Bell Sessions』 Real Gone(2015)
人気ポピュラー歌手がベルのもとで吹き込んだ『I’m Coming Home』(73年)と『Mathis Is...』(77年)を抱き合わせ、ベル関連の貴重音源を追加した編集盤。前者はリンダ・クリード、後者はリロイ・ベルとの共作が中心で、スタイリスティックスやスピナーズ、フィリス・ハイマンでお馴染みの曲も歌わせている。“Life Is A Song Worth Singing”は後にテディ・ペンダーグラスが歌う曲だ。 *林

デトロイトのグループがフィリップ・ウィンを加えてフィリー・ソウルの顔となった一枚。ベルがソングライターよりもプロデューサー/アレンジャーとしての腕を発揮した作品だが、2コードで乗り切る単調ながらグルーヴ感溢れる“I'll Be Around”、黒人社会問題に斬り込んだ“Ghetto Child”はリンダ・クリードとのコンビで書き、フィリーの名作家たちによる他曲と爽やかに競い合っている。 *林

NYの4人組によるデビュー作で、スピナーズを手掛けて勢いに乗っていたベルが主に制作と編曲を担当。ヒットした表題曲などスピナーズのマナーを受け継ぐポップ&マイルドなソウルで、“Quick, Fast, In A Hurry”はベル&クリード作だが、多くはジョセフB・ジェファーソンらが書いた曲だ。当時彼らのライブでは、シックの近作でベルを称えた若き日のナイル・ロジャースが演奏していた。 *林

“Break Up To Make Up”などのヒットを連発した『Round 2』を経ての3作目。ベルが彼らを全面プロデュースした最後の作品で、時代劇っぽい冒頭の“Only For The Children”や軽快なアップの表題曲など半数ほどをリンダ・クリードと共作している。ここが初出となる誠実なバラード“You Make Me Feel Brand New”は別ヴァージョンが翌年シングル化されて全米2位を記録することに。 *出嶌