季節の変わり目に響き渡る甘いリイシュー
bounce先月号のザップ~ロジャー特集に引き続き、今月のディスクガイド部分ではワーナーの〈80s Soul Classics Best Collection 1000〉シリーズで復刻された50タイトルのなかから今日的なトレンドの源泉として捉えやすいファンク色強めな作品をピックアップしています。
ただ、当然ながらそれ以外のタイトルにも聴くべきブツは数多あり……ってことで、まずは日本初CD化となるシルヴィア・セイント・ジェイムズの80年作『Magic』。元サイド・エフェクト歌姫のソロ・デビュー作で、レニー・ホワイトやEW&Fのラリー・ダンが歌唱のジャジーな持ち味を粋なサウンドで後見。ウェルドン・アーヴィンの提供曲もあります。
また、元サイド・エフェクト組では、B・ハワードの母親としてもお馴染み(?)ミキ・ハワードのアトランティック作品も3枚ラインナップ。交際していたジェラルド・リヴァートとのデュエット“Baby Be Mine”を含む『Love Confessions』(87年)や代表作となる『Miki Howard』(89年)もスタンダード感バリバリですが、ここでは日本初CD化となる86年のソロ・デビュー作『Come Share My Love』を推薦。ラメル・ヒュームズによるクワイエット・ストームな感触がオトナです。
なお、ジェラルド・リヴァート仕事はジェイムズ・イングラムの89年作『It's Real』にも収録。師匠クインシー・ジョーンズ人脈で固めたセルフ・プロデュース曲から、トム・ベル、テディ・ライリーまで裏方の多彩さは時代の変わり目を映し出したような感じでもあります。
さらに、著名グループからの独立作ということでは、シャラマー離脱後の初作となるハワード・ヒューイットの86年作『I Commit To Love』にも注目です。ジョージ・デュークらの采配でマイルドな歌声を展開しているほか、シャラマーで縁を結んだリオン・シルヴァーズ3世との共作ナンバーにも注目でしょう。
また、同じようにアトランティック・スターから独立したバーバラ・ウェザーズのソロ初作『Barbara Weathers』は、ティーズ一派やEW&Fのモーリス・ホワイトらが援護した、90年代ではなく90年産のアーバン女性シンガーらしい可憐なアダルト盤。このように、シーンがいわゆる〈90年代っぽさ〉を獲得する以前の90年代モノもどんどん復刻対象になってほしいもんですね。
それと同時期の女性シンガー作品なら、当時ドクター・ドレーの恋人だったミッシェレイの89年作『Michel'le』にも注目したいところ。ドレー製のヒップホップ・ビートに乗る変幻自在な歌唱も抜群ながら、クワイエット・ストーム調の曲で見せる実力はとんでもないもの。マイケル・ホルムズとのデュエット“If?”が強烈です。
そこから強引にデュエットで繋げるなら、ステイシー・ラティソウとジョニー・ギルが84年に残した『Perfect Combination』は必聴の一作。当時ティーン・アイドルだった両者ながら、初々しさ以上にソウルフルな早熟ぶりを楽しむべきデュエット名盤でしょう。
で、最後は同シリーズとは関係なく……アイザック・ヘイズの相棒として知られた名ソングライター、デヴィッド・ポーターの71年作をボートラ入りで初CD化した『...Into A Real Thing ...And More』もオススメしときます。この後にはムーヴメントのディスコ盤も初CD化されるようですし、エンタープライズ~HBS関連の作品はそろそろ紹介しどきかもしれませんね!