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ESSENTIALS
プライドの名品たち

THE SYLVERS The Sylvers Pride/OCTAVE(1972)

タイミング的にジャクソン5~オズモンズ旋風を受ける形で登場した若き兄弟姉妹の初アルバム。メンバーのリオン3世が大半でペンをとり、ジェリー・バトラーとケグ・ジョンソンが制作、デイヴ・クロフォードとジェリー・ピータースがアレンジを手掛けた曲は歌も含めてキッズ感を売りにせず、大人びた哀感さえ漂わせる。“Wish That I Could Talk To You”と“Fool's Paradise”はプライド時代の代表曲。グラス・ハウス曲の瑞々しいカヴァーも良い。 *林

 

JERRY BUTLER,JERRY PETERS Melinda Pride/OCTAVE(1972)

邦題を「残酷欲情軍団」という映画のサントラ。初期インプレッションズでリードを担当したシカゴ・ソウルの大物ジェリー・バトラーが、後にEW&Fらも手掛ける鍵盤奏者/編曲家のジェリー・ピータースと組んで手掛けている。大半は後者による豊穣なインストで、艶やかなサックスの彩る“Melinda Title Theme”やシタールが幻惑的な“Melinda Latino”などは特に絶品だ。エレガントな意匠を纏ってまろやかに響くバトラーの歌唱曲もいい。 *出嶌

 

THE INCREDIBLE BONGO BAND Bongo Rock Pride/OCTAVE(1973)

マイケル・ヴァイナーとペリー・ボトキンJrの旗振りの下、招集されたジム・ゴードン(ドラムス)やキング・エリソン(パーカッション)、ディーン・パークス(ギター)らが熱演を繰り広げた初作。幕開けの“Let There Be Drums”から“Apache”“Bongolia”……と、まさに驚異的なボンゴがブレイクで暴れ回り、ファンキーなカッティング、グルーヴィーなオルガンなどが一体となってパーカッシヴに空間を彩る、最高のパーティー・インスト集だ。 *出嶌

 

BILLY BUTLER & INFINITY Hung Up On You Pride/OCTAVE(1973)

プライドではシルヴァーズやサントラ『Melinda』に関わったジェリー・バトラーを兄に持つビリーが、ヴォーカル・グループのインフィニティを従えて放ったアルバム。地元シカゴとメンフィスでの録音で、ファルセット・リードが炸裂するスウィート・ソウルで幕を開け、以降、甘く切ないバラードと活気漲るアップを繰り返しながらスリリングなハーモニーを繰り広げる。なお、メンバーのラリー・ウェイドはテリー・キャリアーの相棒でもあった。 *林

 

FOSTER SYLVERS Foster Sylvers Pride/OCTAVE(1973)

シルヴァーズ家の六男、フォスターのソロ・デビュー作。サンプリングの定番ネタである兄リオン3世作の“Misdemeanor”を筆頭にキッズ感丸出しで歌うフォスターがめざしたのは明らかに当時のマイケル・ジャクソンだが、やや背伸びして歌うあたりも愛らしい。制作はジェリー・ピータースとケグ・ジョンソン。ジェイムズ&ボビー・ピュリファイ、ミラクルズ、ポール&リンダ・マッカートニーなどの名曲カヴァーでは大人のハートも射抜く。 *林

 

THE SYLVERS The Sylvers II Pride/OCTAVE(1973)

シルヴァーズの2作目。引き続きケグ・ジョンソンと前作でアレンジを手掛けたジェリー・ピータースがプロデュースを担当し、リオン3世の作となる美しいスロウや勇壮なファンクなどを後期ジャクソン5的な青さと哀感を醸しながら歌っていく。女声リードの曲は後のローズ・ロイス的な趣も。エヴァリー・ブラザーズで有名な“Let It Be Me”をスウィートに歌い、ビートルズ“Yesterday”をアカペラで披露するなど、ハーモニーの粋も際立つ。 *林

 

OLLIE NIGHTINGALE Sweet Surrender Pride/OCTAVE(1973)

この70年代サザン・ソウル名盤もプライド発だった。オリー&ザ・ナイチンゲールズとしてスタックスから世俗デビューしたオリーがソロ転向して出したアルバム。メンフィスの名匠ジーン・ミラーの制作で、ハイやスタックス周辺の腕利きによる滋味豊かな演奏を受けてハイトーンに熱を込めて歌うオリーは、冒頭のフィリップ・ミッチェル作“Here I Am Again”から素晴らしい。ボビー・ウーマックやブルック・ベントン作の名曲カヴァーも上々だ。 *林

 

THE INCREDIBLE BONGO BAND The Return Of The Incredible Bongo Band Pride/OCTAVE(1974)

前作の演奏メンバーたちに加え、リンゴ・スターやニルソンらの参加も噂されてきたセカンド・アルバム。ギターや鍵盤、ホーンが主役となるロッキッシュな局面が多く、アタックの強い展開がなくなってスカッと突き抜ける痛快さが後退したぶん、いま聴くと奇妙なドラッギーさが味わいどころに思えてくる。モッタリした冒頭の“Kiburi”からどこかサイケな濁った空気も漂ってくるのがおもしろい。ワビサビ系の“Pipeline”なども不思議な感覚だ。 *出嶌

 

JIMMY SMITH Black Smith Pride/OCTAVE(1974)

ブルー・ノートやヴァーヴで活躍してきたオルガン・ジャズの名手が、プライドに唯一残した熱気溢れるジャズ・ファンク・アルバム。ジェリー・ピータースが共同プロデュースを担当し、インクレディブルなオルガン野郎の集中力を『Root Down!』(72年)にも比肩するダンサブルな開放感へと高めていてカッコ良し。MG'sやバリー・ホワイト、ティミー・トーマスのカヴァーのほか、ボンゴ・バンドも上掲作で演奏している“Pipeline”が聴きモノ。 *出嶌

 

THE SYLVERS The Sylvers III Pride/OCTAVE(1974)

プライドでの最終作となるサード。マイケル・ヴァイナーとペリー・ボトキンJr.のインクレディブル・ボンゴ・バンド一派のプロデュースということで冒頭の“I Aim To Please”から男臭いファンクをかまし、曲もリオン3世だけでなく兄弟や母親らがペンをとるなど前2作からの変化は明らかだ。メンバーの成長と共にアイドル性は薄まり、個々のキャラも明確に。が、ファンク~ディスコを勢い良く乗りこなす瑞々しさはシルヴァーズならではだろう。 *林

 

NEW CENSATION New Censation Pride/OCTAVE(1974)

ヴァン・マッコイによるヴォーカル・グループ仕事。白人と黒人からなる男女混成グループ唯一のアルバムで、主にシャウター系の男性とハイトーン系の女性がリードで歌う。“The Hustle”的な作法はまだ登場せず、実直なスロウ・バラードやフィリー風のダンサーを披露するあたりは同じマッコイ絡みのプレジデンツに近いか。テンプス的なファンク・ソウル“Come Down To Earth”は同じくマッコイ絡みのチョイス・フォーも歌うことになる。 *林

 

FOSTER SYLVERS Foster Sylvers Featuring Pat & Angie Sylvers Pride/OCTAVE(1974)

フォスターのソロ2作目だが、歳の近い姉2人(パトリシアとアンジー)の存在を明らかにした表題は年少組の結束を示すものだろう。前作同様ジェリーとケグが制作にあたり、HB・バーナムがアレンジに参加した本作は、スティーム、ソニー&シェール、プレスリー、マッコイズ、マーヴィン・ゲイなどの名曲を屈託のない表情で歌った企画性の強い一枚。ボビー・ブルーム“Montego Bay”はアッシャー“Good Kisser”での引用も記憶に新しい。 *林

 

VARIOUS ARTISTS kickin presents Pride 70s Groove: DJ's Choice 1972-1974 OCTAVE(2017)

黒田大介がDJ目線で選曲したコンピということで、“Apache”や“Misdemeanor”“Kiburi”といった定番ブレイクスが並び、結果的に純粋なレーベル・サンプラーとして楽しめる一枚。ウィリー・ヘンダーソンが72年に手掛けたヘティ・ロイドによる2曲のファンキー・ソウル、マイク・カーブ制作でジーン・ペイジが優雅なアレンジを施したレディ・リー“Simple Things”(72年)というシングル・オンリーの楽曲も聴けるのが嬉しい。 *出嶌