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◆北野 創

VARIOUS ARTISTS 『神前暁 20th Anniversary Selected Works "DAWN"』 アニプレックス(2020)

サブスク主流の時代になり、ブツにならない音源が増えて寂しい限りですが(特にVTuber周り)、だからこそ質量共に充実した箱ものの需要が今後さらに高まるのではと思うこの頃。というか、プリンス『Sign 'O' The Times』の家宝級ボックス、KOTOKOの10枚組ゲーソン集、そして2000年代以降のアニメ音楽シーンを語るうえで欠かせない作曲家・神前暁の多岐に渡る業績をまとめた本作など、今年は手元に置いておきたくなる箱ものが目白押しだったので収納に困っています!

 

◆桑原シロー

A GIRL CALLED EDDY 『Been Around』 Elefant(2020)

閉じこもり生活をやり過ごすうえで有難かったのが、簡単に聴き飽きたりしない音盤の存在で、最高に重宝したのがエリン・モランのソロ・プロジェクトによる16年ぶりのセカンド・アルバムだった。ダスティ・スプリングフィールドみたいな歌声で歌われるレトロ・エレガンスなポップソングの数々は、空気を浄化する効果が著しく高い。バート・バカラックとの連名作でも泣かせてくれたダニエル・ダシアンのロマンティシズム溢れる音作りがまた絶品で。

 

◆郡司和歌

Chari Chari 『We hear the last decades dreaming』 Seeds And Ground(2020)

予期せぬ出来事が胸をざわつかせた2020年のなかで、予期せぬ奇跡とも言えるリリースだったのは井上薫の別名義による18年ぶりの新作。トロピカルで甘美なアンビエント・ハウスを軸に、民族音楽やバレアリックなどを昇華した秘境的密林サウンドは、ディープななかにもどこか優雅さが漂う、まさに彼のセンスと妙技がヒリヒリと冴え渡る傑作だった。異国の美しい情景を喚起させる音像も、閉塞的な生活を余儀なくされた日々の中に光を与えてくれた。

 

◆近藤真弥

K-PopといえばBLACKPINKとBTSが世界的人気を得ていますが、曲やコンセプトに限っていえば両グループよりも挑戦的かつおもしろい作品が多かった。そのなかでも特に惹かれたのは、イッジのセカンド・ミニ・アルバム。ベースメント・ジャックス“Jump N' Shout”が脳裏に浮かぶハウス・ソングの“Ting Ting Ting”、ソフィーが制作で参加した“24hrs”など、刺激的なサウンドの宝庫。

 

◆澤田大輔

YMO 『TECHNODON (Remastered 2020) 』 東芝EMI/ユニバーサル(1993)

リアルタイムでの世評は賛否両論で、メンバー自身も後年、あまりポジティヴには振り返っていなかったと記憶している作品……だからこそ、リリースから25年余を経て改めて向き合う意義があるリマスター再発盤。同時代のテクノを視野に入れながらも、アーバンな80sブラコンの変奏といった趣の“BE A SUPERMAN”のような曲が生まれてしまうあたりに、彼らならではのバンド・マジックが炸裂しまくっているし、2020年に聴くべきフレッシュネスが詰まっていると感じた次第です。

 

◆田山雄士

THE PINBALLS 『millions of oblivion』 コロムビア(2020)

みんないったいどんなシステムで感情をコントロールしてるんだと思うくらい、異常事態すぎた一年。この混沌において、どうすれば心を健やかに保てるか。何度も試行錯誤して、自分ならではの方法を編み出しました。ミュージシャンも苦しい状況下でどう考えて動いたかがきっと大切で、こういう逆境でこそ真価が見えた気がします。誰とも遊べないのでひとりでめっちゃカラオケ行ってたんですけど、THE PINBALLSの曲をでっかい声で歌ってだいぶ救われましたね。12月に出たばかりの新作アルバム、激アツだから聴いて!

 

◆藤堂てるいえ

フロア・キラーを多数搭載した2016年の『SKYGAZER』とは異なるアプローチに驚かされながらも、陰鬱とした自宅作業時に実によく聴いた5月リリースの配信作が11月にめでたくヴァイナル化されたということで、文句なしの選出。トラック名から匂い立つ風情や遊びごころを感じさせる音の運びに感嘆させられる内容はもとより、美麗なアートワークといい、10インチというサイズ感といい、しっかりと手で触れながら愛でたい逸品。

 

◆長澤香奈

Sexy Zone 『POP×STEP!?』 ポニーキャニオン(2020)

〈ポップ〉に焦点を当てた7枚目のアルバムには、LUCKY TAPESのKai TakahashiやONIGAWARAの竹内サティフォ、tofubeatsらが参加。90年代渋谷系を思わせる“恋のモード”、甘く爽やかな王道曲“Honey Honey”、グルーヴ感溢れるシティー・ポップ“タイムトラベル”ら、CHOKKAKUアレンジ曲のカッコよさにシビレます。ヴァラエティーに富んだ楽曲群をグループの色に染めるヴォーカルも見事で、終盤に登場する“麒麟の子”は曲も声もクールで最高。2020年はアイドルの存在に助けられた一年でした。