Page 3 / 4 1ページ目から読む

電子音楽の名門レーベル、ワープからリリースされた意義

――なるほど。

照沼「あと、今作もレーベルはワープですよね。前作の方が往年のワープにおけるIDMっぽい感じがしたかな。ただ、今作は別の意味でワープっぽいかも。エイフェックス・ツインで言えば『Drukqs』、スクエアプッシャーで言えば『Ultravisitor』に近いというか」

――電子音と生楽器の音が合わさった感じですね。

照沼「そうそう」

伏見「2000年代前半、マキシモ・パークみたいなバンドと急に契約を結んだ時のワープの感じはあるかもね」

照沼「前作は音やジャケット、タイトルが全部ワープというレーベルの文脈にハマっていて、日本人が好きそうだなって思いました。しかも、今作のアートワークは『Greatest Hits』の頃までのビョークのシングルとかを彷彿とさせる感じ。そして、ジャケがめっちゃフラットだからこそ音の立体感に驚かされたな」

 

レディオヘッドから田中フミヤまで、『Endlessness』から想起する多彩な音楽

――演奏や曲の具体的な部分についてはいかがでしょう?

伏見「1曲目は石橋英子さんの『ドライブ・マイ・カー』のサウンドトラックみたいなんだけど、感触や最終的な印象は全然違う。『ドライブ・マイ・カー』のサントラにはジム・オルークも参加しているし、シカゴ音響派っぽい演奏を感じるから」

照沼「僕は全体的にレディオヘッドの“Kid A”っぽいなって思った。特に3曲目」

伏見「なるほどね! レディオヘッドってイギリスを代表するバンドだけど、いかにもイギリス的な音楽性というわけではないし、それはナラに近いかも。

ロンドンジャズシーンの文脈だとヌバイア・ガルシアがまさに代表格だけど、ナラの音楽がロンドンジャズっぽいかというと違うわけで」

――ヌバイアやジェームス・モリソンのほかにココロコのシーラ・モーリスグレイ、エマ・ジーン・サックレイと演奏しているライル・バートンなど同地の精鋭が集結していますが、今のUKジャズっぽいかというとそうではないんですよね。

照沼「UKジャズっぽくないところが僕は好きかな(笑)。これ見よがし感がないというか」

伏見「暑苦しい感じはないよね(笑)。高電圧な演奏とか情報の凝縮感とかがサンズ・オブ・ケメットやブラック・ミディの特徴ですが、それらとはまったく違う音楽を奏でている。暑苦しい演奏もできるメンツでこの音楽をやっている、というのがまた面白いんだけど。

フローティング・ポインツとファラオ・サンダースの『Promises』が出たのもナラの前作と同時期だったけど、あれに近い感じはあるかな。ルーツは感じるんだけど、特定の国のイメージや帰属意識は感じないというか」

照沼「その感覚はチリのリカルド・ヴィラロボスと共通していると思う。前作が『Re: ECM』で、今作が“Fizheuer Zieheuer”とかのイメージ。田中フミヤの作品も思い出したな。カラフト名義のやつとか」

伏見「そう考えるとかなり日本っぽいかも」

照沼「日本人が大好きな音楽だと思うよ」

伏見「テリー・ライリーが今、日本に住んでいるわけだしね(笑)。今作は3曲目とかでヨナ抜きに近いメロディが聞こえてきて、そこにテリー・ライリー的なベンディングさせた音のソロが重なっていったところを聴いて、日本っぽいなって思った」

照沼「サウナでかかっていたら気持ちよさそう(笑)」

伏見「これを聴きながらロウリュの蒸気を浴びたら気持ちいいよね(笑)。

あと細かいことを言うと、4曲目で声が入ってきた時のシンセの音がディアハンターの『Halcyon Digest』の最後の曲“He Would Have Laughed”にめっちゃ似ていて懐かしくなった。亡くなった友達についての悲しい歌なんだけど(笑)」